思えば、リンカーン・ライムとの付き合いも長い。
シリーズ一作目である『ボーン・コレクター』を読んだのは映画を見に行く前のことだから
1999年。 映画はそれなりの出来ではあったけど、原作を先に読んでおいてよかったよ、
という気持ちに。 その後、シリーズをずっと読んでいるわけですが、そのくせリンカーン・
ライムのあたしの脳内イメージはデンゼル・ワシントンだという不思議(でも何故かアメリア・
サックスはアンジェリーナ・ジョリーではない)。 だから何作目かでリンカーン・ライムが
黒人ではない的な描写に出くわしてひっくり返ったことがある。 先入観はおそろしい
(それでもやっぱりデンゼル・ワシントンのイメージで今も読んでしまう。 最近の彼ではなく、
映画のときのちょっと若い感じで)。
さて、シリーズ9作目に当たる今回の敵(というか凶器?)は電気。

送電システムの急激な異常により、電力がひとつの変電所に集中。 爆発的な放電が
発生した結果、アークフラッシュが路線バスを襲う。 が、これは事故ではなく、電力網を
あやつる犯人によるデモンストレーションだった。 犯人はニューヨーク市への送電を予告
なしに50%削減することを要求し、のまなければ更なる犠牲を出すと言ってくるが・・・。
犯人の名前が割れるのが早すぎないですか!、と思えば勿論ちゃんと意味があるわけで、
流れがわかっているのにハラハラしてしまいますよ!
今回は久し振りにFBI覆面捜査官のフレッド・デルレイにスポットが当たり、彼のバック
グラウンドがこんなに語られるのなんて初めてでは!、とうれしくなる(もう、シリーズものの
レギュラーメンバーには長く続いている海外ドラマばりの親しみを感じる)。
そして電気の専門家としてゲスト登場のチャーリー・サマーズがすごくいいキャラで!
あと電話でしか出てこないけど、メキシコ連邦警察副長官であるロドルフォ・ルナがやたら
かっこいい! 結構人は死ぬし、ウォッチメイカーの追跡はまだまだ続いているので展開が
容赦なく、そういう部分で読者としては気持ちを盛り上げるしかなく。
また、犯人の手記らしきものに「電気が今の半分でも十分人間たちがやっていけると
わかれば、こんなに苦しむ人は出なくてすんだ」的記述があり・・・グサグサ刺さった。
そうですよね、あの節電意識で猛暑を乗り切っていたことを思えば、フクイチは継続運転
しなくてよかったですよね・・・そうすれば3.11のときはとっくに動いてなかったですよね
・・・なんかすみません。 再生エネルギーの話とか、環境テロとか絡んでくる部分もいちいち
日本に置き換え可能なところが切ないわけで(本筋とは微妙に関係がないところですが)。
『CSI:科学捜査班』への悪口(?)が今回も出てきたり、エンタメ系の時事ネタ(?)が
毎回織り込まれているのは楽しく、お約束です。 その反面、ウォッチメイカーの件は反則
ではないかとも思ってみたり(でも、それを言ってしまってはディーヴァーは常に反則である
ことになる)。
エピローグでは今後のリンカーン・ライムに大きな変化が起こりそうな予兆!
シリーズの展開も変わりそう。 でもまたそれは、もう少し先の楽しみである。
さ、そのうちキャサリン・ダンスシリーズの新作も読もう!