2013年12月17日

キャプテン・フィリップス/CAPTAIN PHILLIPS



 なんとなく、見なくても予告だけで話はわかってるよなぁ、という感じがしたのだが、CMで



試写を見たらしき人たちが次々「感動しました!」と言っているのを見て、「そんなはずは



ないだろう(だって、監督はポール・グリーングラスだよ!)」と感じた自分の勘を確かめて



みたくて。 実際、“感動”というキーワードはなんか違ってたと思う・・・そう宣伝しないと



売れないと思われている世の中なんでしょうか。



   「生きて還る――」 勇気だけが彼の希望となった。

  2009年、ソマリア沖。 20人の乗組員を救うために海賊の人質となった船長の4日間。



 冒頭から映像のタッチがもうドキュメンタリー。 次の航海に出るリチャード・フィリップス



(トム・ハンクス)は妻に送られて空港へ。 そこでの会話で「現在はすっかりサバイバルの



時代だ。 自分の頃は真面目にやっていれば当たり前に船長になれたけど、子供たちは



仕事が見つかるかどうかわからない。 まったく、何が起こるかわからない時代になった」



みたいなことを言ってしまうベタ加減にびっくりする。 実話ベースだから実際のご夫婦が



こういう会話をたまたましていたのなら仕方ないが、あえて創作した会話ならあざとすぎ



ではないですか? しかし映画はあと、ほとんど海の上でだけ展開するので・・・この事件が



どうアメリカで報道されてどんな騒ぎになっていたのかは映像として出てこないので、ここは



妥協点なのかもしれない。



 コンテナ船であるマークス・アラバマ号はアメリカ船籍だが民間会社なので武器は持って



いない。 そのかわり船の全周囲に向けて放水できるホースを備えており、それが唯一の



武器か。 出港前に全体を点検したり、船が出てからも予告なしで訓練を実施するなど、



フィリップス船長は危機管理を考えている有能な船長であることがわかる。 でもこの放水



ホースって、日本の海上保安庁の船がつけられるものと原理は同じだよね・・・マークス・



アラバマ号の船員の方々は武器がないことにご立腹(?)でしたが、民間船がつけている



ものしかつけられない海上保安庁の立場って・・・、とあたしは悲しくなってしまった。



   イヤな予感が的中し、海賊がやってくる。



 ソマリアの海賊側にも事情があるということは語られるのですが、だからって「あいつを



撃ち殺せ!」って言いながら銃をぶっ放すのはダメだろ。 海賊側のリーダー格・ムセは



賢い男だが、寄せ集めの人員で海賊をやらされているのでチームワークがなってないし、



すぐに「殺せ!」っていうバカがいるのも困りもの。 自分たちが襲った船がアメリカ船と



知って喜ぶ・・・いや、下手にアメリカ人を殺そうものならアメリカ海軍総攻撃の口実を自ら



与えることになるって気づいてる? 知恵と船員一丸の協力でどうにか海賊から逃れようと



するキャプテンの判断と、見込みが甘すぎる海賊側の両方の描写に大変ハラハラしました。



   結局、乗りこまれてコクピットは占拠されるけど・・・。



 絶望的な状況の中で、「この船をよく知っているのは我々の方だから」と士気をくじかない



キャプテンはかっこいいね! でもそう思ったのは映画を観終わってから思い返したときで、



見ている最中は緊張感にこちらもびくびくしていた気がする。 もともとは漁師だったのに、



外国の大型船が魚をごっそり獲っていくから自分たちが魚を獲れなくなった、漁師として



食っていけないというソマリアの方々もつらいが、でも誘拐や海賊がビジネスになってしまう



ようでは国としてまずいだろ!、と海賊行為を指示する“将軍”とやらに怒りが爆発。



 ソマリア人にとっては“リッチの代表”とも思えるアメリカも実際はそんな余裕はなくなって



きているわけで、それでも俺たちよりはましだろうとでもいうか、なんでしょう、この間違った



グローバル化が世界をよりややこしくしているのでは・・・。 あぁ、なんか『シリアナ』のときと



変わってない、もしくはもっとひどくなっているんだなぁ、と実感。



 アメリカ海軍だけでなくネイビーシールズまで投入され、全権限が渡された人物は『ザ・



ユニット 米軍特殊部隊』
の人で、この前は『パシフィック・リム』にも出てたじゃん!、と



笑ってしまった。 軍人顔なのかしら。 ともかくも、ここまでやるのがアメリカよねぇ。 軍が



動いたと知って「自分も含めて全員死ぬかも」と覚悟したキャプテンは、正しいアメリカ人の



姿なんだろうか。



   一応、交渉もします。



 賢そうなムセも、正確な国際情勢というかトップがどう出るかによって自分はあっさりと



お払い箱にされる可能性があるということは意識しなかったんだろうか。 うーむ、知識と



いうか教育というか、そういうのがやはり大事というか、遠回りに思えてイライラするけれど、



それしか世の中を変える道はないのであろうかと思わされた。



 実は、フィリップス船長役はトム・ハンクスではなくてもよかったのではないか、結構誰でも



そこそこ演じられたのではないかと見ながら思っていたのだけれど、ラスト約10分の、放心



状態・茫然自失のリアルさには度肝を抜かれた(全編リアルさの追求だったというのに!)。



あぁ、この部分の演技のためのトム・ハンクスだったのか、この部分のための本編だった



のか、と思ってしまうほど。



 あたしも、放心状態を疑似体験。 だから感動どころじゃないよ!



 やはりこの映画、限りなくドキュメンタリーを目指していたのね。


posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする