2013年12月09日

悪の法則/THE COUNSELOR



 豪華キャストにスタイリッシュ風な予告を何度見せられようとも、所詮脚本はコーマック・



マッカーシーである(あの『ノーカントリー』の原作者で、しかも初めて書いたオリジナル



映画脚本)。 絶対ダークな話に決まってるよな、と覚悟を持って臨んだのだけれど、



ここまでダークを通り越して恐ろしいとは思わなかった・・・。 本編が始まる前に「一部の



スペイン語には制作者の意図を汲んで字幕を付けていません」的なテロップが出るのにも、



もうすでに嫌な予感全開。



   もはやキャッチコピーすらもありません。



 アメリカ、メキシコ国境にほど近い町で“カウンセラー”と呼ばれている弁護士(マイケル・



ファスベンダー)は、美しく気立てのよい理想的な恋人ローラ(ペネロペ・クルス)の存在に



盛り上がり、彼女との結婚生活のためにはもっと金が必要だと考えていた。



 彼はクライアントのひとりである実業家のライナー(ハビエル・バルデム)の申し出を受ける



ことを決意、裏社会のブローカーであるウェストリー(ブラッド・ピット)の紹介を受け、メキシコ



麻薬カルテル絡みの新しいビジネスをすることに。 たった一回。 それは彼に巨額の利益を



与えるはずだったが・・・人生の歯車はもう狂い始めていた、という話。



 意外にも、前半はほとんど会話劇。



 しかもその会話には深い意味があるようなないような、哲学的であるようなないような。



なるほど、これがオールスターキャストの理由か(喋っている人たちに華がないと、言葉の



波を受け止められる客は限られてきてしまう。 あたしはこれだけのキャストを前にしても、



途中で意識を失いそうになった。 序盤は台詞の意味のわからなさにぶっ飛んでいたのだ



けれど、それがずっと続くと驚きがなくなる・・・)。



 いちばん印象に残っているのは、ライナーの恋人を演じるキャメロン・ディアスのある台詞。



 「真実に温度はないわ」



 ・・・どういうこと!、である。



   アイメイクの力の入れ具合に、

            「コメディ演技はしないわよ」という彼女の覚悟がうかがえるようだ。



 カウンセラーは悪い人間ではない。 ちょっと贅沢したい、恋人にいいかっこ見せたい、



きっかけはそれだけのごく普通の人間である。 なのに選択を間違えてしまったことで引き



返せない泥沼にどんどん落ち込んでいく・・・という過程をずっと見せられるので「しんどい」



とか「ダーク」どころの騒ぎではない。 しかも彼には折々に手助けしてくれそうな人物が



現れるのであるが、その人物たちはまったく役に立たないアドバイスだけして去っていく



(「もう手遅れだ」とか「引き返す道はもう過ぎてしまったよ」とか)。 なんなんだよ!、と



理不尽さだけが残される。



   ブラッド・ピットの役に立たなさときたら、

      『バーン・アフター・リーディング』以上。 気取っているだけに余計腹が立つ。



 そしてメキシコ麻薬カルテルの方々の言っていることが全然わからない(ときに聞き覚えの



ある単語が出てくるが、それは事前にアメリカ人たちがその単語について「こういうもの



らしい」と語っているからだ。 でも意味がわかっても全然うれしくない言葉なんだけど)。



 『悪の法則』という邦題がついているが、実は悪にはそもそも法則がない、会話の通じない



相手が悪意を持っていれば尚更こちらの予想通りになんか物事は進まない、だから死ぬ



必要がないように感じる人たちまでもがバンバン死んでいくのである。 こんな恐ろしい話は



あるか!、という感じだが・・・メキシコの恐ろしさは『ボーダータウン』という映画でも前に



見せられたので、やっぱり、という感は否めない。



 ま、悪いことはするもんじゃない、という話ではあるのだが・・・自分で選択した人ならば



まだしも、巻き込まれただけの人にはいい迷惑。 悪というのは理屈もなにも通じない、



災害よりもタチが悪い、普通の人には太刀打ちできないどうしようもないものだという



絶望感。 そう、2時間越えるこの映画では延々と絶望を手を変え品を変え見せられるのだ。



 げっそりである。 よくこんな映画が大々的に公開されたな・・・しかも興行成績トップ10に



何週も入っていられるな〜、と<オールスターキャスト>の威力に驚く。 内容的にはミニ



シアター系なのに(そしてそこそこ埋まっていた客席だったが、上映後の観客はほとんど



無言で帰っていった)。



 予告に騙されたお客さんたちは、この映画をどう受け止めているのだろう。



 ただあの台詞回しは結構クセになるかも・・・戯曲が出版されているので、図書館に予約



してみた(買って手元に置くのはなんかいやだった)。



 でもあたしにとっては、『グランド・イリュージョン』のほうがずっとオールスターキャスト



なんだけどな。


posted by かしこん at 06:34| Comment(4) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする