2013年12月07日

清須会議



 どうせしばらくやっているからまだいいだろう、という油断があたしの今年の失敗(見に



行くはずだった映画がいつの間にか終わっていた)かもしれない・・・と今更ながらに反省。



こいつもどうせ、と思っていたこの映画を見ておくことにした。 それでなくとも12月は



毎週のように大作が公開されるのだからな!



   誰だ! 最後に笑うのは!



 本能寺の変ののち、織田家の家臣たちは後継者と領地配分を決めるために集まって



会合を開くことに。 それが“清須会議”である。



 あたしは歴史好きを自任しているわけではないが、高校のとき日本史をとってたし、



チャンバラ時代劇は結構好きだ。 時代小説というジャンルは進んで読まないけれど、



思い返してみたら「これは時代小説かも」と思えるものはある(『人形佐七捕物帳』



時代小説でいいですか?)。 だから歴史にまったく興味がない人(そんな人もときには



いるからびっくりだよな)よりは、多少知識があるはず・・・ということで特に予習はして



いかなかったが、なんとかなった。 しかしナレーションもテロップもこの映画には一切



ないので、自信のない方はさらっとおさらいしておいた方がいいかも。



 でんでん扮する織田家の実務を務める家臣(それがのちに前田玄以であるとわかる)が、



会議が行われるであろう広間で絵巻物を勢いよく広げ、そこに描かれている建物にクローズ



アップして火矢が射かけられる・・・だからそこは本能寺だ、と視覚でわかるのは面白い



(しかし説明テロップはないのでほんとに何も知らない人はまったくわからないだろうが、



これを見に来る人なら本能寺の変くらい当然知ってますよね、ということなのであろう)。



 ただ、その絵巻物の絵が大変しょぼい・・・桃山文化的な豪奢さまでは要求しないけど、



美術館に飾られているぐらいのレベルは期待したよ。 でも絵が素晴らしければ実際に



建物のカットに切り替わったとき、そのセットのしょぼさが目立ってしまうので同じような



感じにしたのかもしれないが。



   何人絡もうとも、結局は秀吉と勝家との対決である。



 織田家の家臣のうち、有力な者たちは宿老と呼ばれた。 そのときの宿老は筆頭家老でも



ある柴田勝家(役所広司)・羽柴秀吉(大泉洋)・丹羽長秀(小日向文世)・滝川一益(阿南



健二)だったが、滝川が清須城に現れず、人数合わせのために池田恒興(佐藤浩市)を



急遽抜擢、4人で誰を織田家の後継者にするか話し合いつつ裏でそれぞれが根回しを



していく・・・という話。



 大泉さんは『わが家の歴史』で三谷幸喜に、場が煮詰まると彼を投入してとんでもない



ことをやらせ、話のつじつまを合わせるために都合よく使われてしまった印象があったので、



「今回もそうなのだろうか、もしくは罪滅ぼしに素晴らしい役にしてくれるのだろうか」と若干



不安があったが、全体として素晴らしい感じに! 大泉さん、助演男優賞では!、という



くらい。 しかしあたしは丹羽さまが好きだったよ・・・。 ほぼ全編仏頂面か真顔のみなのだ



けれど、そこからにじみ出る彼の人間性と苦悩が理解できて。 一切笑いを取らない(情け



ないところがない)小日向さん、かっこいい!



 役所広司がうまいのはわかってるからあえて何も言うことはないが、重厚さだけではなく



軽さを伴う役はやっぱり素敵ですねぇ、と思うしかない(役柄的には全然違うんだけど



『三匹が斬る』なんかを思い出しちゃいます)。 そして「保身がいちばん大事!」みたいな



役なのにさらっと笑わせてイヤミがない佐藤浩市も素晴らしい。



   織田家のみなさまは特徴的な鼻が遺伝。

       三男の信孝(坂東巳之助)と次男の信雄(妻夫木聡)



 まぁ、オールスターキャストなのでみなさんそれぞれ見せ場はあり、でも群像劇なので



同じ重心で見たいと思ったらいささか物足りない面はあるものの、映画では仕方がない



(それこそNHK大河ドラマで一年かけるしかない)。 監督のこだわりがあるだけに、



それでも描かれた方だったんじゃないだろうか。



 歴史として伝わる事実を、観客はもう知っている。 清須会議でいちばん得したのは誰



なのかわかっている。 それでも最後までこの映画を見てしまうのは、彼らが間違いなく



その時代を生きていたから、彼らは未来のことなど知らないからであろう。



 時代劇(チャンバラに限らず、現在よりも過去を描くもの)の面白さと切なさは、そこに



あるのでは。 見る側は彼らの未来を知っている。 気持ちよく別れた彼らのその行方を。



 だから映画も秀吉の快哉では終わらない。 ふと不穏な何かを感じ取る柴田勝家の



表情を追い、すっきりとした青空を映しながらも戦支度をする人々の声が遠くから聞こえて



くる。 彼らのその後だけでなく、現代まで続く<争い>を暗示するかのように。



 あぁ、せつない。


posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする