2013年08月14日

終戦のエンペラー/EMPEROR



 <短い夏休みで何本の映画を見られるか>耐久マラソン、一本目は日米合作の



こちらです(とはいえ資本はハリウッドなので、<外国映画>に分類)。



   戦いの果てに、わかりあえるのか――



 1945年8月30日。 GHQ、つまり連合国軍最高司令官総司令部の司令官ダグラス・



マッカーサー元帥(トミー・リー・ジョーンズ)が軍用機で日本に上陸。 マッカーサーは



部下の内で随一の“知日派”であるボナー・フェラーズ准将(マシュー・フォックス)に、



<太平洋戦争>における戦争責任者を探し出せという命令を下す(それは暗に、天皇に



戦争責任をかぶせられるかということ)。 勿論、調査は極秘で、期限はたったの10日間。



フェラーズは部下を使い、天皇を中心とした30名ほどの側近をリストアップ、順に面会して



話を聞くことにするが、フェラーズにも理解できない日本人の思考・思想が立ちはだかり・・・



という話。



 がっつりと実話を扱っておりますが、その手法はまさに<ハードボイルド的探偵小説>の



趣。 関係者に会い、新しい事実を知り、また別の人に会って・・・の繰り返しでおぼろげ



ながら全体像に近づく、みたいな。 だからこれは戦争後の進駐軍の実録モノというより、



歴史ミステリと思った方がよろしいかと。



   出番は少ないがえらくかっこよく描かれるマッカーサー。



 でも、これまでのような<アメリカ映画が描く日本>と違って、かなり近いところまで踏み



込んで描いてくれている感じがする(時代考証などの多少の誤りはあれど、許容範囲だ)。



 トミー・リー・ジョーンズ、マシュー・フォックス(『LOST』のジャックです!)といったキャス



ティングも日本で人気のある人を選んでいる気遣い。 そして日本でも一線で活躍している



俳優を出す心遣い。 逆にアメリカ本国ではさっぱりヒットしなさそうですが(予測)、だから



こそ日本でヒットしていただきたいものです。



 フェラーズが会う日本人たちの中でも、なんとなく歴史上の人物としてはいまいち卑怯者と



いったイメージがなくはない(あたしだけか?)の近衛文麿(中村雅俊)が、当時の日本の



立場を英語で堂々と言い切った場面には、なんだか溜飲が下がる思いでしたよ。



   出番はここだけなんですけど、かっこよかった。

   でもフェラーズは靴を履いたまま座布団に正座、という姿勢はつらかったであろう。



 英語といえば、鹿島大将役の西田敏行が結構完璧です。 確かご本人は英語は話せない



と聞いたことがありますが・・・台詞を音としてとらえて再現できる能力に長けている、という



ことなんでしょう(方言も自然に再現できるってことと一緒か。 関西の人は『探偵ナイト



スクープ』のせいもあるけど西田さんは関西の出身だと信じている人も多いからな)。



 英語が話せることが世界に通じるってことじゃないぞ! やはり役者としての技量がものを



いう、ということがわかってうれしい。



 英語は話さないけど木戸幸一(伊武雅刀)もいい味出ていた。 なにより天皇の侍従役の



夏八木勲さんはすごかった! ほんとにこういう人がいそう! 不敬にあたってはならん、と



いう意識が骨の髄まで染み込んでいるというか、ここまでされる天皇ってどんな存在?、と



フェラーズに否応なく考えさせる存在でした。 この映画、いつ撮影されたんだろう。 全然



不調を感じさせない演じっぷりでした。



 探偵の調査は地味に続き、彼が日本のことを知るきっかけとなった女性との恋愛話などの



回想もはさみますが、実はその90分くらいはただの前振り。 天皇の登場が、この映画の



いちばんのスペクタクル!



 天皇を目の当たりにすることによってずっと理解できなかった日本人にとっての“信奉”と



いうものを理解する・・・フェラーズも、そしてマッカーサーも。



 この一瞬のためにこの映画はつくられ、トミー・リー・ジョーンズも片岡孝太郎もここぞ!、



という演技を見せる。 そんな気にさせられました〜。 逆に日本ではこういう映画、つくれ



ないんだろうな、とも思わされ。



 細かな差異を言えばきりがないけれど(大きいところでは東条英機を登場させるなら広田



弘毅にも言及すべきでは?、など)、それでもアメリカ側が自らを占領軍と認めつつ占領して



いると思わせないようにしなければ、と言わせたり、それなりに対等の立場を意識しようとして



いる点が、「あぁ、時間がたったんだな」というか、私怨を交えず歴史に向かい合おうとする



機運が出来上がってきたってことなんだろうな、とはるかに戦後ずっとあとの生まれの



あたしですが、感無量でございました。



 でも、歴史やミステリに興味のない人にはただの退屈な映画なのだろうか・・・あまり観客が



入っていなかったのが残念でした(たまたまあたしが見た回のせいだと思わせてくれ!)。


posted by かしこん at 06:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする