2013年08月03日

さよなら渓谷

 どうしよう、吉田修一原作のとはあんまり合わない気がするんだけど、『まほろ駅前多田便利軒』は面白かったから大森立嗣監督の新作だとなれば気になる。 というわけで観てみよう。
 舞台は緑豊かな渓谷がある、ある地域。 少し前に幼児殺害事件が発生し、母親が容疑者ではないかとマスコミは大勢つめかけている。 その隣の家には尾崎俊介(大西信満)とかなこ(真木よう子)夫妻が住んでおり、その母親とも交流があった。 この二人に何かを感じ取った週刊誌の記者、渡辺(大森南朋)は事件と並行して調査を進めていくと、意外な事実につきあたり・・・という話。

  さよなら渓谷P.jpg 15年前の“罪”が、再びふたりを引き寄せる
     愛か、罪か。 「悪人」吉田修一が放つ、男と女、極限のラブストーリー

 これが愛と言われても・・・当事者同士が傷つけ合うのは勝手だけど、他人を巻き込まない方法はないのか、と思ったり。 あと、実際に起こった事件にインスパイアされるのは構わないが、あまりにも露骨過ぎやしないかと。 特定の事件を思い出させないような工夫をしてください!(しかもその事件そのものを描くのではなく、話のとっかかりにしか使っていないので余計に無神経に感じてしまう)。 純文系の人は犯罪を題材にするならもっと考えてほしい、と吉田修一原作の映画を見ると結果的にいつも思ってしまうよ・・・。

  さよなら渓谷3.jpg 事件を追う二人の記者
 ストーリーにははまれないので映画的な盛り上がりに期待してみた。 大森南朋はがんばっていた! かつては大学ラグビーの主力選手だったが、怪我のせいで実業団ではやっていけなくなりそこの仕事も失って、現在は不本意な週刊誌の仕事に甘んじている、という状態を台詞で説明するのではなくだるだるになったその肉体で見る側にわからせてしまう説得力。 このヌードはすごい。 ここだけで助演男優賞に値するかも(ちなみに、女優は脱ぐと「体当たり演技」などと評価されるのに、男優はあまり評価されないの気がするのは何故なのか。 ビルドアップされた肉体を見せつけるよりは、だるだるな身体をつくってさらすほうが大変だと思う)。
 そんな実直な体育会系・渡辺記者目線があったから、アブノーマルな二人の関係にフォーカスしすぎることもなかったのかな。 二人が抱える意外な真実、というやつも比較的早い段階でわかってしまうのですけど、逆に渡辺さんが気づくの遅くてハラハラしてしまう。 むしろ鈴木杏演じる女性記者が有能すぎて、その情報いったいどこから?!、と疑問に思わないこともなかったが。

  さよなら渓谷2.jpg あ、やっぱりつり橋なんだ、と思った。
 つい『ゆれる』を思い出してしまう・・・真木よう子は影がある役が似合うんだけれど、その影を跳ね返して生きる強さもあるイメージ。 だから、かなこのように過去にずっとからめとられている女性なのはなんだか不思議な気がした(だからいちいち彼女のすることが怖かった)。 もしこの映画が「肉体でその人を語らせる」という主義なのならば、かなこはきれいすぎだし・・・そこはちょっとアンバランス。 むしろ多くを語らないが表情が語る尾崎を思うと、渡辺の裸体ばかりが印象に残ることの方がバランス悪いのか。
 とりあえず、罪を罪と感じない、悪びれない人たちのほうが世の中生きやすい、ということかなぁ。 とてもかなしい・・・。
 エンディング主題歌をなんと真木よう子が歌っていた!
 歌が下手とかではないんだけど、その歌(作詞作曲は椎名林檎)がかなこさんというキャラクターと合わない感じが・・・でもかなこさんが歌っているように感じてしまうので、ラストシーンとの整合性がないというか・・・えーっ、どっちなの? あたしはそうなると思ったけど実は違うの?、と大混乱。
 “愛”を理解するにはあたしはまだまだ修行が足りないらしい。

ラベル:映画館 日本映画
posted by かしこん at 21:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする