2013年05月30日

舟を編む

 石井裕也監督初のメジャー作品ということで、注目(というか、ちょっと「大丈夫?」の気持ちあり)。 原作は未読です。
 出版社・玄武書房に営業マンとして勤務する馬締光也(松田龍平)は大学の言語学科卒業・下宿先には本がいっぱいという生活をしながら営業マン、明らかに向いてない。 実際、営業部でももてあまされていたが、人が足りなくなる辞書編集部では彼をマークし、彼の言葉に対するこだわりと感性を見込んで社内ヘッドハンティング。 なんとか辞書編集部に配属され、新しい辞書<大渡海>の編纂に携わることになる。 そんな彼を中心とした、辞書(第一版)が完成するまでの15年という歳月の定点観測。

  舟を編むP.jpg マジメって、面白い。
    一生の仕事。愛する人たち。そして言葉。大切にする。全力で。

 辞書編集部には、上司だが近々妻の看病のために職場を離れる荒木(小林薫)、一見ただのチャラ男だが現代語には強い先輩・西岡(オダギリジョー)、感情をはっきりとは出さないが地道に仕事をさせるとすごく有能な派遣の佐々木さん(伊佐山ひろ子)、辞書監修の松本先生(加藤剛)とそれぞれにはっきりした個性の持ち主ばかりがいて少数精鋭(?)の趣。 他人とのコミュニケーション能力にも問題のある馬締はおろおろしながらも、次第にそこが自分の居場所であることを強烈に感じるようになっていく、という成長物語も噛んでおります。

  舟を編む3.jpg フルメンバーでの編集方針会議。
 なにがうれしいって、小林薫やオダギリジョーをこうやって「普段よくやる役とはちょっと違う役で使う」というのを見せてもらえたこと。 こういう小林薫を、オダギリジョーを、見たかったんだよ!、と思わせる何かがこの映画にはあり、それだけでうれしい気持ちになる。 ただ、馬締くんが一目惚れする下宿屋の女主人タケさん(渡辺美佐子)の孫娘・林香具矢の役である宮崎あおいはいつもながらのイメージでしたけどね。
 そして、なにより<用例採集>。 これ、是非流行らせよう! <用例採集メモ帳>とかお洒落なテキスタイルやらかわいいイラスト入りで出ていたら買ってしまうかもしれん。言葉と、その定義を自分で考えて書くやつです。
 よく考えたらこの映画は長いのですが(133分)、特にこれといった盛り上がりはないんですよね。 <言葉>や<文字>について考え、それを中心に物語は進んでいくのに、時間の経過を表すのにテロップを使わないところとか好きです(でもうっかりするとどれくらいたっているのか一瞬わからなくなって、次のヒントで気づいたり)。
 「辞書とは、言葉の海を渡る舟」がコンセプトの<大渡海>は、「今、生きている言葉」もできるだけ取り入れましょうという姿勢。 だから松本先生がファストフード店で女子高生の会話を盗み聞きして<チョベリバ>を用例採集する姿は、「これって観客へのサービスですか?」と思ってしまった。 何事にも真剣に、真面目に取り組むからこそその姿から生まれる笑いって、なんだかすがすがしいです。

  舟を編む5.jpg 伊佐山ひろ子さんには助演女優賞、小林薫&オダギリジョーには助演男優賞を!
 締め切りが近くなって追い込みのかかる辞書編集部は、日本語専攻の大学生のバイトさんたちも多数出入りし、泊まり込みしたり洗濯物を干したり、ほどんど大学の研究室かサークルの合宿所のようになってくるのがどうも懐かしさを連れてくる。 そういうところって文系理系関係なく、現場に近いことに取り組む研究室に共通のものだよね!、とうれしくなる。
 そう、見ていてなんとなくうれしくなってくる映画なのだ(協力:三省堂、とあってそれもさもありなんなのだ。 馬締くんの部屋の大量の本も、雑多に積んでいるように見せつつしっかり整理されていたりして。 スタッフ、本好きで固めたのか?)。
 <言葉>を大切に扱う姿勢そのものに、ちょっと胸を打たれてみたり。
 だからこそ、タイトルも『舟を編む』だし、最後まで辞書編集で行ってほしかったなぁ(第一版が出たら、次は第二版のための改訂作業が待っている)。 あのラストシーンでは、馬締くんの人生のほうに比重が置かれ過ぎてしまう感じがしたから。
 とはいえ、今年の日本映画の賞レースに絡む映画を見つけましたよ。
 よかったね、石井監督!

ラベル:日本映画 映画館
posted by かしこん at 06:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする