2013年05月28日

図書館に返すぞ!、の勢い

幕が上がる/平田オリザ
 舞台は北関東のある県。 公立高校に通う演劇部の少女たちが、三年生が引退して次は自分たちが三年生になるんだな、というところから話が始まる。 語り手の<私>は部長になり、演出もすることになる。 部長として、というよりも演出家として演劇と関わった一年間の物語。 だから「若き演出家の心得」的な内容でもある。

  幕が上がる.jpg 帯に「行こうよ、全国!」とありますが、高校演劇の大会には複雑な事情がありまして・・・。
 あたしもかつては演劇部に所属していたのですが、申し訳ないけど平田オリザの所謂“静かな演劇”には特に感銘を受けていない・・・(というか、見るきっかけがなかった?)ので、著者に対してあたしがいい印象を持っていないせいもあるのでしょうが、ちょっとした一文にカチンと来たりして。 それは<私>がまだ高校三年の女の子だから気づいてなくても仕方ないことだと思えばいいのか、それとも著者が結構いいお年の男だと知っているからそう思ってしまうのか、ちょっと判断がつかなかった。 たとえば、部員の一人が母子家庭で、彼女の母親のつくったサンドイッチを分けてもらった<私>が、
  たかがサンドイッチでも、作る人が違うとこんなにもおいしい。 でも、こんなに料理の上手いお母さんが、どうして一人なんだろうって、ちょっと思う。
 と地の文に書かれてあると・・・いらっとします。 いいじゃん、別に!
 いらっとする点は他にも何箇所かありましたが、まぁ本筋とはちょっとずれたところなので。 でも、大学演劇サークルの女王と呼ばれていた人が新任教師として入ってきたり、地域のライバル校からエース級の女優が転校してきたりと、「そんな運のいいことが次々起こるなんてずるいぞ!」ともっと地方にいたあたしはそこでもいらっとします。 でもいらっとしながらも、あの頃のことを記憶から掘り起こされてうっすら涙・・・。
 演劇部経験に近いものを持っていない人には伝わるのかな、この感じ。
 ちなみに高校演劇の地区大会・県大会・ブロック大会は秋。 全国大会は翌年の夏。
 だからブロック大会を突破して全国大会進出を決めても、三年生は出場できない。 同じキャストで再演できないから演劇部は配役から演出まですべて練り直さねばならない(場合によってはブロック大会のときよりレベルが下がることがままある)。 それでほんとに全国大会ってことでいいのか、とかなり前から問題になっているのだけれど、この悪しき慣習は変わっていないようだ・・・。
 あたしたちは地区大会を突破したことがほとんどない高校だった。 県大会に出られる枠は2つ、そのうちの1つは私立の常連校で毎年決まっていた。 残りの一枠を、他の学校で争う形になっていて、だからあたしたちのときは<地区大会突破!>がとにかく目標だった。 そして幸運にも、二年生のとき県大会に出られた。 でもなにしろ経験不足だったから、自滅したところがあった。
 予選通過したときのうれしさと、県大会で勝てなかった悔しさは、今もあたしの中にしっかり残っていることが、これを読んで確認できました。

目撃者 死角と錯覚の谷間/中町信
 プロローグとエピローグで、視点のマジックを披露して読者を納得させる中町作品、これもその流れでした。

  中町信目撃者.jpg 表紙の人の顔が怖いよ・・・。
 二人の幼い命が奪われた一瞬のひき逃げ事故。 和南城夫妻の妻・千絵の妹である香織がたまたま事故の瞬間を目撃、自分以外にも目撃者はいたというが30歳前後だというその男性は姿をくらましてしまう。 後日、白骨温泉に旅行に出かけた香織は同じツアーにその男性がいることに気づくが、地震による落石で命を落とす。 妹は事故ではない、殺されたのだと確信している千絵は暴走気味で事件に乗り込んでいく・・・という話。
 『錯誤のブレーキ』のときにもご夫妻のどちらかの親戚の方が亡くなられていましたが・・・<警察に歓迎される素人探偵>だけど親類縁者を次々なくすってのはどうなんでしょう。前もそうだったけど千絵さん押しが強すぎ。 ちょっと疑惑があれば直接本人に向かって「あなたが犯人なんじゃないですか」と平気で言う・・・しかも疑われた人は次から次へと殺されて(そのペースも速くてびっくりだ)、千絵さんは疑ったことを謝る必要がない。
 うーん、ちょっとこの人とはお近づきになりたくない感じだ・・・。
 その分、夫の健さんが温厚な人柄でフォローをするけれど・・・。
 いろんな意味で、後味が悪い。

posted by かしこん at 06:44| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする