2013年05月03日

天使の分け前/THE ANGELS' SHARE



 ケン・ローチ監督の新作登場。 下層階級の人々を描き、しかも「スコットランド版『フル・



モンティ』」と呼ばれているのであれば見ないわけにはいかず(『フル・モンティ』が好きな



もので)。



 リアルに裁判所のシーンからスタート。 軽犯罪・トホホ系な犯罪に対して刑務所に送る



代わりに社会奉仕活動を命じられた登場人物それぞれが、様々な活動を通じて仲良く



なり、立ち直りの道を模索する・・・というような映画ではない、残念ながら。



   かけがえのない出会いと

                スコッチウイスキーがもたらす“人生の大逆転”!



 子供の頃からすぐにキレる性格のロビー(ポール・ブラニガン)は、親の代から仲が



悪いというやつらとまた喧嘩して、警察沙汰に。 が、近々恋人が出産予定だということで



社会奉仕活動組に回される。 古い家の内部塗装・墓地の清掃などなどの奉仕活動の



合間に、指導者となったハリー(ジョン・ヘンショウ)と親しくなったロビーは、ハリーが



愛するウイスキーに興味を持つようになる。 しかも彼にはテイスティングのセンスがある



こともわかり、ウイスキーの奥深さにどんどん惹かれていくのだが・・・という話。



   ハリーへの信頼の証が、ロビーのこの表情。

    父親もしくは父親代わりのような存在がいるかいないかというだけで、人生に大きな

    影響が出るよなぁ(それは母親も同様だろうし、代わりの存在は一生じゃなくとも、

    ある一時期だけで十分だったりもするし。 でもいるかいないかでは大違い)。



 普通なら、テイスティングコンクールみたいなのに出て優勝して、自分に才能があることに



よろこびを覚えて仕事を見つけて、家族をつくってめでたしめでたし・・・みたいな感じに



なりそうなんですが、そうならないのがケン・ローチ。 ハリーからウイスキーの本を借りて



勉強するロビーをバカにする社会奉仕活動仲間たち(中にはハリーが好意で連れて行って



くれたウイスキー醸造所にて万引きを働くやつもいる)。 そして、かつてロビーが起こした



前科の内容が詳細にわかってくるにつれ、一筋縄では絶対いかない社会構造・階級分化



めいたものに慄然とする(まぁ、既にその頃には観客はロビーに対して同情的な気持ちを



抱いてしまっているのだけれど)。



 だから、目標があって、努力する者にのみ未来は開ける、という実にシビアな話でした。



 とはいえ、結果的にロビーの足を引っ張りながらも協力するおバカたちに魅力がない



わけではなく(あー、『明日へのチケット』でもフーリガンなバカやってた人たちだよ、と



にやり)、社会の底辺で行き場がないと感じている人たちに“やる気”を起こさせるって



ほんとに簡単ではない、ということをしみじみ。



   地元ウイスキー愛好会、結成!



 タイトルの<天使の分け前>とは、樽に貯蔵したウィスキーが年に2%ずつ蒸発して



減っていくことから、味をよくしてくれるかわりに天使が味見をしているのだ、というスコット



ランドのことわざみたいなもの?(子供の頃、ウイスキーのCMで聞いたことがあるなぁ)



 これ以外のタイトルが思いつかないほどしっくりです!



 たとえば・・・富裕層の年収の2%が最下層の人々の教育や就労支援に回ったら格差



社会は多少改善できるんじゃないの、とか、いつもより2%努力してみたら何かが変わるん



じゃないの、みたいな。 はっきりと映画は声高に言ってはいないけど、観客としては



いろんな要素をその2%から感じ取ることができます。



 純粋にいい話を期待してしまうと、「結局犯罪がらみじゃないか」みたいな非難が聞こえて



きそう(あたしもちょっとそう思ったけど)。 でもそこまでしなければ這い上がれない、という



彼らの事情を考えると適当なモラルや道徳で簡単には語れないな、とも思ってしまう。



おバカな理由で彼らも多少の痛手は被るし、でもハリーへの思いやりが最後まで行動の



原動力になっているし、トータルでよしとしようぜ!



 ケン・ローチ作品としては本国で最高のヒットだそうですが、これを見てそうやって憂さ



晴らしをしたい人たちが多いのかなぁ、と思うとさみしくなっちゃいますが、あえてこれを



笑い飛ばそう!、という強さだと信じたい。 実際、笑える映画です。



 主役のポール・ブラニガンはオーディションで抜擢されたほとんど演技経験ない人だった



そうですが(しかもロビーみたいな生活環境だったとか)、今では別な監督との次回作も



決まり俳優業に進んでいるらしい。 それ自体もサクセスストーリーだよね! 自分の



出来る範囲で若者に職を、チャンスを与えるケン・ローチが、かっこいいのだ。


posted by かしこん at 06:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする