2013年04月08日

クラウド アトラス/CLOUD ATLAS



 ウォシャウスキー姉弟&トム・ティクバ監督による172分の一大叙事詩。



 もうそれだけで期待しないことがあるだろうか。 「難解だ」という感想も漏れ聞こえて



いたので気合を入れて鑑賞すれば、あれ、結構普通の話だったよ・・・。



 というか、こういう話、なんか知ってる気がする・・・『火の鳥』だよ!、とラストシーンで



気づくありさま。 あぁ、だからキライじゃないんだね、こういう話、と納得。



   私たちはなぜ生き、なぜ人を愛するのか



 19世紀から24世紀の間から6つの時代の特定の人々をピックアップして<“ひと”と



“ひと”との“つながり”>を織りあげてみせるこの映画、いくらでもドラマティックにしようと



思えばできるのにあえてそうしなかったみたいな印象が(それでも心に残るエピソードは



あるのですが)。 個人レベルでは人生を変える大きな出来事であっても他人から見たら



大したことないように、時代を隔てると余計にドラマティックさは失われるのかもしれない。



 もしくは神の視点で見れば、個々人の出来事などささいなこと。



 そういうことなのかな?



   トム・ハンクスは扮装をすればするほど

   <トム・ハンクス>である。 こういう風に地味にしているのがいちばんナチュラル。



 描かれている時期と場所は、1849年の南太平洋上の島とそこを行き来する船の上。



1936年のスコットランド。 1973年のサンフランシスコ。 2012年のイングランド。



2144年のネオ・ソウル。 2321年のかつてハワイだったらしき島。 それぞれの時代で



登場人物たちが生きる姿をはじめはランダムに、次第にシチュエーションを絞ってつないで



いくので「今の、どの時代?」と混乱することなくわかりやすく入っていける。 同じ俳優が



時代によって違う役になっているけれど、同じ人だと仮に気づかなくても大勢に影響は



ないし、わかった方がいい場合はしっかりヒントがある。 ヒューゴ・ウィービングやヒュー・



グラント、ジム・ブロードベントみたいに声に特徴のある役者を揃えたのはそのせいなの



かな〜、と思いましたよ、あたしは(メイクでわからなくても声を聴けばわかる、的な)。



   で、明らかに顔がわかるときは

                       あまり台詞がなかったり。



 予告で言うほど“業”<カルマ>や“輪廻転生”についてもあまり深く突っ込んではおらず、



「たとえ志半ばに死すとも、来世でかなえられるかも」みたいな<やんわりとした希望>で



おさまっているところが宗教感薄くてよかったです。 でも本質的なところでかなり仏教ぽい



のに、未来でも信じられている宗教は一神教ぽかったり、東洋人からすると少々ちぐはぐな



面もなきにしもあらず。



   ネオ・ソウルは『マトリックス』的未来感。



 でもネオ・ソウルの割には障子に桜とか日本ぽいものが。 おまけに朝鮮半島は統一



された模様ですが、独裁国家でしたよ・・・何、この皮肉、とややうけました。 そしてジム・



スタージェスがネオ・ソウルの住人として出てくるんですが、西洋人の顔立ちを東洋人に



メイクするとこんな無表情ロボット顔になるのか!、とびっくりしたよ。



 個人的には1936年のスコットランドのエピソードが好きでした。 というか、ジェームズ・



ダーシーってこんなにハンサムだった?!、と目から鱗のよろこび。 おまけに相手はベン・



ウィショーだし、彼が演じる作曲家志望がつくるのがピアノ曲<クラウドアトラス六重奏>で、



のちに1973年に数枚しか残っていないそのレコードをハル・ベリーが聴く、といった小物



つながりもあります。



 それこそ『2001年宇宙の旅』ばりの大作感・「人類とはなにか」という哲学的命題をつき



つけてくるわけでもなく、気づくか気づかないか程度のつながりだけどそれは確かにあって、



ひとは一人で生きているのではないんですよ、という、描かれているのはとてもシンプルで



ささやかな応援歌だったりするわけで、それをこれだけ手間かけてやるんだからすごいよね



・・・と感嘆。



 どれだけ世代が変わろうとも、人間はやっぱり愚かで目先の利益にとらわれてしまって



いつでも大失敗してしまうんだろうけど、それでも自分だけのためではなくて誰かのために



役に立とうと考える人もいて、たとえ滅びる日がいつか来ようとも、その日まで人間は



誇りを持って生きていこうよ、みたいなメッセージ、かなぁ。



 結構ひどい話やら、逆に愉快すぎるエピソードもあったのですが、トータルとして残るのは



希望なのでした。 見たあとにこんなに穏やかで優しい気持ちになれるのは久し振りかも。


posted by かしこん at 06:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする