2013年04月06日

フライト/FLIGHT



 デンゼル・ワシントン=奇跡的な腕を持つ勇気ある機長、のイメージぴったり。



 だからこそそのイメージを利用して、真実はそうではないと人間のダメ度を描く映画



でした。 もうファーストカットからけだるさ全開、「これ、R+15指定でしたか?」と確認



したくなる空気。



   彼は 英雄(ヒーロー)か 犯罪者か



 ウィップ・ウィトカー(デンゼル・ワシントン)はベテランパイロット。 社内での人望も



厚いが、激務からくるストレスやその他で彼はアルコールとコカインの依存症でもあって、



今日もそれを押し隠して何事もなくいつものようにフライトにつく。 その日は乱気流を伴う



悪天候だったが、彼の操縦技術で難なく乗り切ることができたように見えた。



 しかし、その後・・・。



 飛行機大パニックなのは序盤だけでした。 客席からは見えない、コクピットの中では



こんなことが行われているのか・・・と思いはするんだけど、すでに一般客が搭乗している



最中に機長が同じボーディングブリッジを通ってやって来て挨拶をして席に着いたりと、



「日本の国内線でそんなの見たことない!」という描写があるので(日本だと乗客が機内に



乗り込む頃にはすでに機長・副機長が定位置にスタンバイしており、コクピットへの扉には



鍵がかけられている)、どこまでアメリカ的に普通の基準内かわからない・・・それで、



ウィトカー機長の日常が遅刻すれすれであることを示しているのか。



 そう、すべてにおいてすれすれなのが、ウィトカー機長の日常。



 優秀であるが故になんとかできるという気持ちが災いし、自分がアルコール依存症で



あることを認められない人物はそれを認めることができるのか。 そういう話でした。



   なんとか操縦不能機体を不時着させる

    腕はたいしたものですが・・・能力と倫理観は常識的にどちらが重要視されるのか。



 そういう意味でも、とてもキリスト教的な話だな・・・という感じが(本編では神の話は



そんなに大きく出てはこないですが)。



 それ故、デンゼル・ワシントンほぼ出ずっぱり。 一人で映画を引っ張った、という意味で



主演男優賞候補は納得(しかもイヤな男なのに、そいつが中心の物語を見せるんだから)。



 とはいえ、脇の配役にも手ぬかりはなし。 かつての機長仲間で、現在は引退して機長



組合の理事を務めるチャーリー・アンダーソン(ブルース・グリーンウッド)がかっこいい!



ウィトカーの腕を知っているからこそ、事実を知っても最後まで彼を擁護する立場を貫く



姿勢は“義の人”って感じ!(まぁ、客観的に見たら“事実を隠蔽した人”になっちゃうん



だけど)。 ウィトカーの専属弁護士ヒュー・ラングにはドン・チードルだし、事故で入院した



人々と同じ病院に運ばれてた薬物中毒の患者ニコールは「どこかで見たことがあるよ〜」



としばし悩みましたがケリー・ライリーでしたよ!(ガイ・リッチーの『シャーロック・ホームズ』



シリーズのワトソン夫人)。 あまりに今回は幸薄い感が強くてさ。



 映画は全体的にシリアス展開なのですが、ウィトカーにヤクを調達する謎の買人が



ジョン・グッドマンで、彼が登場すると場の空気がガラッと変わる(というか、笑いの渦です)。



実は全般的に音楽も軽快なものを選んでいるな、ということに彼のおかげで気づいたりも



するのですが。 誰か、ジョン・グッドマンの最近の充実ぶりについてもっと評価してあげて!



 それにしても、大量のアルコール摂取で酩酊 ← 適量(?)のコカイン吸引で意識が



戻る、ってありなのかな・・・その場しのぎ対応で、あとから絶大な負担がかかりそう。



 ウィトカーの苦悩中心で話が進むのでラング弁護士の描かれ方は最小限なのですが、



彼の葛藤もまたものすごかったのではないかと想像。



   航空会社に雇われるような弁護士だから

    清廉潔白と旨とするような青くさい男ではないが・・・それでも人命のかかった

    職業ですからね、パイロットは。



 そしてもう一つの主役ともいえるのが<アルコール依存症>。 そもそも依存症という



ものがとんでもないと、教育用に使うつもりですかというくらい容赦なく描かれています。



それこそ自分一人の意志の力ではどうにもならないものだと。 そのことを、誰もが知る



べきだということですかね(実際、自分がどっちの側に回るなんて誰にもわからない)。



 クライマックスの聴聞会で、質問をするのはうるさ型と名高いエレン・ブロック。



   これまたどう考えても知ってる人なんだけど?、

    とじっと見ると、メリッサ・レオなんです〜。 なんか若くなってる? オスカー獲ると

    そういう環境も変わるのか〜、と心の中で絶叫。



 でも彼女もかっこよかったです(淡々としつつ事実に迫り、真っ赤なスーツを着てるけど



感情的な存在ではない)。 今後はインテリ政治家とか政府の高官なんかの役もやって



ください!



 この聴聞会でウィトカーは何を話すのか、というのが実際の映画の見どころで・・・航空



パニック映画風の予告編は実は本質から外れてはいるのですが、お客を呼ぶためには



仕方がないのか。 そこに至るまでのウィトカーの自分を見つめ直す日々が中心で、



だから病院で目覚めた彼が動けるようになって、非常階段でこっそり喫煙しようとしたら



そんな人が他に二人いて(うちの一人がニコールですが)、末期がん患者のもう一人との



三人の会話が、この映画のとても重要な部分を担っていたのだと気づいたり。



 命のすれすれを覗いたものでなければわからないことがあり、それをどう活かすのは



その人次第。 そして覗いたことがない者にはその気持ちには本当には近づけない。



勿論、覗かないですんだ方が人生は平和であると思うけど。



 道を踏み外してしまった者たちにも再生する権利はある、ということなんだろうけど・・・



それくらい依存症の人たちって多いのか、とも思わされ・・・複雑な気分である。



 上手くて高潔なイメージのある役者って、ある時期から進んで汚れ役をやりたがるよ



なぁ、やはりそこにはイメージを裏切るよろこび・役としてのやりがいなんかがあるんだろう



けど・・・たまには普通にかっこいい役もしてほしいなぁ、と思うのは我儘なんでしょうか。


posted by かしこん at 20:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする