2013年03月25日

横道世之介



 なんとなくこの時期、沖田修一監督の新作を見るような季節まわりになってる?(去年の



『キツツキと雨』も2月ぐらいだったような)。 というわけで吉田修一原作に微妙な感じを



持ちつつ、「きたろうさん出てるしなぁ」と思って見に行くのであった。



 最初の風景を定点カメラで長く映して、「あ、80年代なんだね!」と説明なしに観客に



気づかせる仕組みですが、これってある一定の年齢以上の人にしか効かない技では・・・



(リアルに80年代を知らない人には「あぁ、昔だ」でいいのか)。 とはいえあたしも、それが



80年代前半なのか後半なのかはわからず・・・のちにかなり後半だとわかることになります。



   出会えたことが、うれしくて、可笑しくて、そして、寂しい――。



 予告がすでに過去を回想する感じになっていたので、<回想としての大学時代・そして



挟み込まれる現在>という形には違和感はなかったですが・・・沖田修一監督独特の“間”が



前半は光っていて楽しかったです。



   東京に出てきてすぐの彼は、隙だらけのぼんやりくん。



 法政大学に入学するために長崎から上京してきた横道世之介(高良健吾)は、東京に



あるすべてのものが物珍しく映ってしまうことに困惑とよろこびを感じる。 謎のご近所さん、



入学式で知り合った押しの強い同級生の倉持(池松壮亮)、学食でお金を借りた人だと



間違ったのがきっかけで友達になる加藤(綾野剛) など、積極的に友達になる気は特に



なかったのにみないつの間にか世之介を友人と認めている。 穏やかでお人よし、気の



いい世之介は、いつしかお嬢様の祥子さん(吉高由里子)からかなり好かれてしまうことに。



   男の人って特に、大事な話を

              どうでもいい場所でしてしまうってこと、あるよね。



 そんな青春群像劇です。



 多分、バブル期に大学生だった人たちには「あるある」描写が多いのでしょうが、あたしは



そのあとの世代なので(しかも地方の大学だったし)、法政大学のサークル勧誘のお祭り



騒ぎには目が点になりました。 さすが私立のマンモス校! それは知らないことなので



よくわからないですが、それ以外の細かいことで「?」と思うところがあり・・・以前、シティ



ボーイズのフィルムノワールで沖田監督の作品に大竹さんが「時代考証が全然なって



ないんだよ!」、と怒鳴りつけ、「いや、短編だから予算がないんだよ」ときたろうさんが



とりなしていたけれど、映画の規模が大きくなって予算が増えても変わらないということは、



もともとそういう細かいことには気を遣わないタイプなんではないか・・・という気持ちに



なりました(そこはいい悪いではなく監督の個性だと思うし、気になる客が増えるようで



あればそういうところに気をつけてくれるスタッフがいればいいだけのこと)。 あたしは気に



なるほうなので(松葉杖のつき方が逆!、とか)、細かく目を光らせるスタッフを入れて



ください。 ちなみにきたろうさんは世之介の父親役でしたが、長崎弁が適当っぽかった



です(ほんとに適当なのか、ちゃんとやってても適当っぽく見せるのがきたろうさんなので



よくわからない)。



   加藤くんがいかにもスタイリッシュ風

     大学生なのも面白いんだけど、少女マンガを読みなれた身には、彼の背景は

     ちょっととってつけた感がなきにしもあらず。



 大きな物語の流れのない、青春群像劇なのでここに強いキャラがいないとダレかねない



のですが、世之介の母として余貴美子さんがまたおいしいところを要所要所で持っていく。



池松君、スーツ着ると老けるなぁ、とか、うわっ、ムロツヨシ出てきた!、といちいちキャス



ティングが個人的にツボだったのであたしは面白かったんですが、多分そうではない人は



飽きるかも・・・(原作にかなり忠実につくっている気がするが、いかんせん省略せざるを



得ないポイントが多そうなので、原作も後から読んでみようかと思いました)。



 うっかりほのぼの路線で、あたしはもう『レ・ミゼラブル』より心打たれてしまったんですが



・・・16年後の世之介にかかわるある出来事が現実の出来事をそのまま引っ張ってきて



おり(多分そこは原作通りだと思うのですが)、このニュースを聞いたことがある人は絶対



忘れないような事件をフィクションのメインキャラクターの人生に関わる出来事として扱う



のはどうなの、と一気に気持ちが引いてしまいました・・・(だから吉田修一って苦手



なのよ)。 あぁ、そこだけは別な出来事にしてほしかったよ・・・そうすれば、もっと素直に



感動できたのに。



 高良健吾はチンピラキャラよりも、こういうぼんやりくんが似合うんじゃないでしょうか。



 彼も脇で光る役者さんだと思いますが、つかみどころのない男としての主役は合って



いる感じ。 吉高由里子の世間知らずな(でも厳格に育てられた)お嬢様ぶりは大変に



かわいらしく、テレビドラマではよくやらされてる舌足らず的な喋り方も一切なくて、二人が



お互いへの気持ちを確認し合う場面では恥ずかしいからカーテンに隠れるというありえない



動作にも違和感がないというか、祥子ちゃんならそうだよね、と納得できるものが。



   お似合いのふたりだからこそ・・・

                  映画では描かれていない時間のことが気になります。



 「誰の心の中にも世之介がいる」ともコピーにありましたが・・・あたしの大学時代には



いないです。 あえて探すなら、小学校の頃、穏やかな人柄で歌がうまかった正二郎くん。



卒業前に転校してしまって、その後も会っていないし今どうしているかわからないけれど



(そして向こうがあたしのことを覚えているかどうかもわからないけれど)、彼はあたしの



トータルとしてダメだった小学校時代にあったわずかな美しさの結晶みたいな存在に今は



なってます。 いつも思い出すわけじゃないけれど、何かきっかけがあれば。



 と、正二郎くんのことを久し振りに思い出したので・・・そういうノスタルジーを引き出す



映画であることは間違いないですね。 160分と、ちょっと長いですけども。


posted by かしこん at 03:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする