2013年03月20日

世界にひとつのプレイブック/SILVER LININGS PLAYBOOK



 デヴィッド・O・ラッセル監督は躁鬱病(それも躁のほうが多め?なほう)とか双極性



障害とか、そういう人に惹かれるんだろうか。 『ザ・ファイター』のおにいさんもそんな



感じの人だったし、てなことをふと思う。



 かつて学校の歴史の教師だったパット(ブラッドリー・クーパー)は妻の浮気現場を



目撃し、ぶち切れてその相手に大怪我を負わせてしまったが精神病院に入院して



治療することを条件に刑罰は免れる。 しかし仕事を失い、妻のニッキは接近禁止令を



とる始末。 が、パットは自分が心を入れ替えれば・生まれ変わったことがわかれば妻は



帰って来てくれると信じる大変イタイ男である。 彼のことを考えた母親(ジャッキー・



ウィーヴァー)が裁判所の許可をとり、めでたく退院の運びとなったものの、パットの



行動は無茶苦茶で、話が通じそうでありながら誰の忠告も受け入れない。



   少しイカれたきみが、なぜか希望の光。



 ここまでで、ブラッドリー・クーパーは『ハング・オーバー』のときのような<かなりの



お調子者男>のイメージを一切削ぎ落として<神経質で自分の現状を受け入れられない、



ちょっとはずれ気味の人>にしっかりなっている。 実は芝居に真摯な人なんだね、と



これまた勝手な解釈なんですが、そんな役者としての彼に好印象。 売れないと困るけど



役のイメージが固定されたら覆すのが大変、役選びって重要だね!(勿論、結果が出せた



上でのことですが)、としみじみする。



 ジョギングするときは必ず黒いゴミ袋を切ったやつをかぶったり・・・パット独自のこだわり



なんでしょうが、それが妙に似合っているように、“どこかイタいのだが妙に笑える、そんな



匙加減が多分絶妙。 あたしが見た日は英語圏のお客さんらしき人が結構いたのですが、



すごく笑いが早かった(あ、そこで笑うんだ、となんとなく納得したあたし)。



   おかあさん、ステキ。

    後部座席にいるのはパットの入院仲間(懐かしの、クリス・タッカー)。



 エンドロールで名前を見て、びっくりしましたよ、クリス・タッカー。 マシンガントークじゃ



なかったせいもあるし・・・結構演技派なんだね!(失礼な話)。 そして母親のジャッキー・



ウィ―ヴァーは『アニマル・キングダム』のときとは全然違う「息子を思い、おまけにダメな



旦那を気遣う肝っ玉母さん」的キャラで、でもやっぱり声はかわいらしいのだった。



 なんか憧れるわ、こんな人。



   結構似た者父子だと思う。



 ノミ屋が仕事と言えるんですか!、な呑んだくれ&やさぐれ気味の父(ロバート・デ・



ニーロ)もダメな人ではあるんだけど、妻や息子に向ける思いは熱くて・・・夜中に発作を



起こして暴れるパットをどうにか冷静にさせようという姿には父親としての威厳と責任が



ありましたよ(それが長続きしないところが人生ってやつですよね)。



 パットは何故そんなにもニッキにこだわるのかが理解できなかったんだけど、彼女が



戻ってくれば元通りの生活が戻ってくる(彼女の裏切りも自分のブチギレもなかったことに



なる)だろうという願望と執着なんだとわかると、袋小路に入りっぱなしのパットがとても



気の毒に(ま、それは病気のせいなんですが)。



   デートであると認めたくない男と、

               しっかりデートを意識した女。



 パットの友人夫妻から夕食の招待を受け、奥さんの妹ティファニー(ジェニファー・



ローレンス)と引き合わされる。 彼女も警察官である夫を事故で亡くしたショックから



立ち直れずにセラピー通いという共通点があるからか、ジョギングするパットと時間を



合わせて一緒に走るようになる。 これは映画の内容に関係ないのだが、パットは薬を



拒否して規則正しい生活と運動で自分を治そうとするし、ティファニーもジョギングと



ダンスをしている。 アメリカではメンタルの病には運動療法が効果的とされているの



だろうかと思ってしまった。



 そんなわけで(?)、物語はどこかスポ根的流れに入りつつも典型的なラブコメ路線も



押さえ、いつも不機嫌な表情の下に立ち直りたい野望を秘めているティファニーの強さに、



「気持ちの切り替えはいざとなったら男性より女性の方が早い」というよく聞く話を感じたり。



 ジェニファー・ローレンスが20代後半くらいの人に見えてどっきりです(でも肌の美しさは



ごまかせないですけどね)。 『ウィンターズ・ボーン』から1・2年でこんなに違うんですか?、



と思うとそれだけで賞に匹敵するような(成長、という言葉だけでは説明できません)。



 面白かったし微笑ましかったし、二人の未来が明るいものであってほしいと願わずには



いられないけど、それを<共感度No.1>と紹介されてしまうと・・・今の世の中どんだけ



病んでんの?、という気持ちにもなってちょっと悲しい(自分も含めて)。



 普通じゃないから面白い、ぐらいの感じで受け止めたい。



 しかしキャスティングは見事だし、会話も洒落てるし、とてもにくめない映画である。


posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする