2013年03月07日

死せる獣 殺人捜査課シモンスン/ロデ&セーアン・ハマ



 ハヤカワのポケミスって読みにくいから苦手だったのですが、しばらく前に装丁が



変わってからずいぶんとっつきやすくなってきた。 あたしが成長したのであろうか、



でもポケミスの昔のラインナップを見て「これ読みたい!」というのがあまりない・・・



(文庫になっているものもあるからか)、シリーズの傾向も最近変わってきたというか、



広がってきたのかもしれません。



   これも話題のデンマークミステリであります。



 ある小学校の体育館で、男性が5人無残な姿で吊るされているのが発見される。



 遺体の損傷が激しいため身元の特定が難航する中、被害者たちは小児性愛者だから



罰せられたのだという噂が広まり、性犯罪者への厳罰を求める世論が膨れ上がり犯人



擁護につながっていく。 警察は四面楚歌の中、犯人を追及していく・・・という話。



 デンマークもご多分にもれず性犯罪者への処罰がゆるめの国らしい(作中では一般人が



「アメリカを見習え!」とデモを起こしたりしています)。 日本では厳罰化の流れになって



きたけどまだまだだし(個人的には最高刑は死刑でいいんじゃないですかと思ってますが)。



 なんというか・・・性犯罪者、特に小児性愛者に対する風当たりの強さ(といえばまだまだ



穏やかに聞こえますが)は世界共通ですか? もうリンチもOKですか?、という感じ。



 気持ちはわかるんですけど・・・仮にも法治国家を名乗る以上は裁判で決めましょうよ、



という考えではあります(その裁判をもうちょっと何とかしようよ、ということで)。 ただ



ミステリとしては<同情されない被害者第一位>ではありますな。



 殺人捜査課のリーダー・シモンスンと個性豊かすぎる部下たちの様子と犯人側の様子が



交互に描かれるので「誰が犯人か・フーダニット」的なスリルはありませんが、さすが



ヨーロッパ、個人主義が徹底してるよ!、というのがシモンスンとその部下たちの会話から



わかり、「日本ではちょっと考えにくいな・・・」というところも多々。 それが外国の作品を



読む面白さであるし、日本では考えられないけどだからって日本が正しいわけじゃないん



だよな(向こうが正しいというわけでもないけど)、と考えさせてくれる面白さ。



 少なくとも明らかに非のある部下が上司に叱責されて、「一方的に非難されるのはいい



気持ちではないです」みたいなことを言ってしまう・言えてしまう空気ってすごい。



 事件そのものよりも上司と部下たちの関係性の方が面白かったかも。



 これもシリーズ作品なので順次翻訳されるのかもしれませんが、フランス語版からの



日本語訳なんですよね・・・デンマーク語から直で訳せる人を育てることも北欧ミステリ



ブームをブームで終わらせないために必要だと思うなぁ。



 “死せる獣”とは誰のことなのか、それを考えるとまた趣深い。


posted by かしこん at 05:21| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする