全然シネ・リーブル神戸に行けない・・・見ようと思っていた作品が次々終わってしまった
・・・気分は大変ブルーです。 上映時間の壁、パルシネマとWOWOWに期待をかけよう。
そして時間の都合で、「それほど見たい気持ちが強いわけではないが、まぁ見てもいい
かなぁ」程度の作品が見られてしまう悲しさ。 2月・8月は飲食店を中心にお客さんが
入らない時期だと聞いたことはあるが、映画館もそれなのか、レイトショーの時間が早く
なっている・・・109シネマズHATだけがそれを無視なので、あたしの足はそちらに向き
がちです。

<トラと漂流した227日>という副題と、ほぼ海の上のシーンだけの予告編から、
遭難して助けられるだけの話だと思っていました。 しかし、タイトル<パイの人生>と
いうように、生まれてから大人になった今までのパイ‐パイ・パテルについて描かれる。
それがわかっていたら、もうちょっと見たい気持ちが強くなっていたのかもしれないのに!
(それまではCGだけの映画かと思っていました)

『スラムドッグ$ミリオネア』に出てた人だよ! 結構好きな俳優さんです。
カナダのあるカフェで新作の小説を破り捨てた作家(レイフ・スポール)の姿をたまたま
ある人物が見て、「ならばわしの甥に話を聞きに行け。 奇跡の物語が聞けるぞ」とパイの
家を紹介したらしい。 初対面である二人はそのおじさんのことについて盛り上がり、一緒に
食事をし、“パイの物語”について話し合う。
小説的な、非常にオーソドックスな幕開けである。 多分、「すぐ遭難!」って思っていた
人は肩透かしを食らうほど海に出るまでが実は長い(本編の30%ほど)。 でもあたしは
それが心地よかったです。 <物語>に入るまでに必要な手続きというか、勿論その部分も
物語なんだけど、まぁ、程よい前振りでした。
で、そんな前段で語られるのは宗教であり信仰であったり(信じる・信じない含めて)。
そこを説教くさいと考えてしまうと鬱陶しい内容になりそうですが、あたしはほどほど楽しめ
ました。 あたしには特定の宗教感がないからなのか、他人のは興味深く思えるんです。
で、ついに家族はインドを離れることに。 経営する動物園の土地はインド政府のもの
だけれど、動物たちは家族の財産。 北米に売ってそのお金で一族は再出発をもくろむ
わけですが、マリアナ海溝上で大嵐に遭い、船は転覆。 からくも一人救命ボートに乗り
移ったそのとき16歳のパイ(スラージ・シャルマ)は、シマウマ・オランウータンなどを
海から助け上げるが、そのボートにはハイエナと、“リチャード・パーカー”という名の
ベンガルトラがすでにいて・・・という話。

このベンガルトラが、まあCGなんですけど予告で感じたよりもCGすぎなくてよかった
です。 多少は知っている動物なだけに、適度なリアルさ、ほしいですよね。
で、困ったことに沈没した輸送船、日本船籍なのです(ティムトム号?とかって名前なん
だけど・・・日本船なら“○○丸”なんじゃないの?、と思うあたしは古いのか?)。 でも
<大海に放り出されたら>みたいな漂流マニュアルが細かく書かれてある小冊子は
いかにも日本的でした(後半、救助されたパイの元に日本人の調査員がやってくるが、
この役者さんが明らかに日本人じゃないのが悲しかった・・・)。 全体として、日本と
フランス人に対して厳しい表現があったような気がするのはあたしだけ?

特に天気のいい夜、星空がそのまま海面に映り込み、宇宙=海になるところは宗教感
うんぬんを飛び越える場面。 少年パイはイスラム教・キリスト教・ヒンドゥー教をそれぞれ
信じていて(というかひとつの宗教に決められず)、心の中には常に様々な葛藤があるの
だが、海という底知れぬ圧倒的な生命の宝庫を前に、ひとりの人間が考えることなど
ほんのちっぽけなものだと(そもそも、漂流してる段階でその個人の命もまたちっぽけな
ものですと)感じずにはいられない。
で、漂流中の回想はファンタジー要素たっぷりで進むわけなんですが・・・ふと、何かが
おかしい、と何かがあたしの頭の中をよぎる。 宗教・信仰がテーマかと思いきや、実は
実存主義じゃないですか!、とびっくりした。
生きるって、残酷ですね。 それでも生きるって、強さですね。
予告編と全然違う話でよかったなぁ!