2012年12月30日

最終目的地/THE CITY OF YOUR FINAL DESTINATION



 シネ・リーブル神戸での上映だったのですが、実は予告を見た記憶がない。



 てっきり来年公開かなぁと思っていたら12月15日から公開スタートで、しかも



朝一回! マジか!、と「休日は一人の用では出かけない」というルールを破ることに。



 だって、真田広之がアンソニー・ホプキンスと共演だよ?! しかも<長年連れ添った



パートナー>役だよ?(チラシより)、見ないわけにはいかないでしょう!



   あきらめた愛、忘れてしまった愛、だけどここで最後の愛を見つける



 『ゴンドラ』という世界的ベストセラー一冊だけ発表してあとは沈黙を守って死んだ作家



ユルス・グントの伝記を執筆したいコロラド大学の教員オマー(オマー・メトワリー)だが、



グントの遺族から公認許可を断られてしまう。 勿論、非公認で書くこともできるのだが、



公認をとることがコロラド大学との取り決めにある(つまり公認のもとにグントの伝記を



執筆できなければ、大学の職を失う)。 同居する恋人のディアドラにたきつけられ、



オマーはウルグアイのユルス・グント邸に直接交渉に行くことに。 その屋敷には



ユルスの妻キャロライン(ローラ・リニー)の他にユルスの愛人アーデン(シャルロット・



ゲンズブール)とその娘、ユルスの兄アダム(アンソニー・ホプキンス)とそのパートナー・



ピート(真田広之)が住んでいて・・・、という話。



 『ゴンドラ』の書影にあるユルスの写真はアンソニー・ホプキンスの若き日なので、



最初はてっきり双子設定とか、死んだふりをしているが実はアダムがユルスなのでは、



と勘繰ってしまいましたがそんな仕掛けはなく、まっとうな文芸大作でした。 さすが



ジェームズ・アイボリーの名にふさわしいというか。



   ナチュラルな陰影感。



 ウルグアイという異郷の地を舞台にしているということもあるけれど、なにしろ屋敷に住まう



メンバーが濃い。 一応オマーくんが主役なのでしょうが、まわりがすごすぎて狂言回しに



終わっている感じ(いや、それでいいのかも)。



 まずは期待の真田広之ですが、いい! 英語の台詞にも違和感がなく、長く使っている



人みたいだし、なにより存在がキュートだ。 15歳でアダムに拾われた設定でしたが、



40歳となった今でもその頃の面影でみんなに見られているんだろうな、とか、本人も



意識せずともそういう感じが残っているのかやたら少年ぽかったり。 そしてまさかの



ヌードあり! 腰から脚の線が美しくて心の中でどよめきました。 日本の映画なら



こんなシーン見られないよな・・・と、これだけでも見た価値あり感!



   アンソニー・ホプキンスに対等に渡り合ってるし♪



 そしてあたしの大好きなローラ・リニーはまたしても「気が強くて素直になれない、



プライドの高い女」という感じの役ですが、その内側に脆いものを抱えているというベタな



感じまでも美しく、毅然としていて見惚れます。



 シャルロット・ゲンズブールが「23歳なの」というのにはぶっ飛びますが(というか、



劇中の登場人物の年齢設定が俳優に比べて若めなのは生活の疲れなどをちゃんと



出すため? あえて現実離れな設定にするため?)、愛人という立場なれど無邪気で



純粋なところがユルスの死後もみんなと一緒に暮らしちゃってる理由なんだろうなとか、



いちいち説得力があったりして。 アンソニー・ホプキンスは当然の安定感です。



 それにしても、これだけの人たちをひきつけ、死後も足止めさせるユルスとはいったい



何者なのか? オマーは彼のことを調べるはずなのに、周囲の人間関係に巻き込まれる



ような形で自分の足元を見失う(いや、もともと彼もまた泥沼に片足を突っ込んでいると



いう状態なのは冒頭の出来事で暗示されているのですが)。



 いないからこそその人物の存在が大きすぎるのか。



 大きな枷がはずれたあとに、勇気をもって一歩進める、それが<最終目的地>への



スタートなのかも。



   だからこそキャロラインはユルスの残したものを

         ・・・燃やすのか燃やせないのか。



 『ファイナル・ディスティネーション』と口に出せばつい理不尽ホラー映画が浮かんで



しまうのですが、<死>を意識しない最終目的地がある、ということを教わるわけです。



文芸大作っていうと退屈そうだったり意味不明描写が多い感じがしますが、この映画は



まったくそんなことはなかった。 キャストが自分好みって、すごく重要。



 エンドロールで2008年映画と・・・そういえばずいぶん前に「真田広之、アンソニー・



ホプキンスと共演」みたいな記事を読んだことがあるような・・・文芸物は公開が遅れること



多々ですが、真田広之が出演という日本で宣伝できるものがあるじゃないか! 映画の



内容がダメというならまだわかるが、こんなにいい雰囲気なのに、その上、豪華キャスト



なのに。 なんとなく理不尽な気持ちで映画館をあとにした。


posted by かしこん at 23:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

砂漠でサーモン・フィッシング/SALMON FISHING IN THE YEM



 原題は“SALMON FISHING IN THE YEMEN”、原作本は『イエメンで鮭釣りを』



だったのですが、イエメンでは客が呼べないと思ったのであろうか。 でもこの映画の



軽やかさは、『鮭釣り』よりも『サーモン・フィッシング』のほうが似合う。



 そんな感じのなんとも大人のファンタジーラブコメでした。



 ダメダメなユアン・マクレガーが見られたのもよかった!。



   イエメンに鮭を泳がせろ!? ありえない国家プロジェクト始動!

    サエない水産学者に振りかかった無理難題。 それは信じる力を取り戻す旅。



 「イエメンでサーモン・フィッシングがしたい」というシャイフ(アムール・ワケド)の希望を



かなえるために、イギリス国内の代理人であるハリエット(エミリー・ブラント)は鮭の



専門家である水産学者のジョーンズ博士(ユアン・マクレガー)に接触する。 そんなのは



無茶な話、と一顧だにしないジョーンズだが、アフガンに対する英国の関与問題から



国民の目をそらせたい英国政府は「アラブでちょっといい話はないか」とシェイフの



プランに乗る。 予算無制限・何してもよし、となった<イエメン鮭釣り計画>に不承不承



取り掛かるジョーンズだが、金持ちの道楽だと思っていたシェイフの心の底からの



情熱を知り、そして困難な計画故やり遂げたくなるという科学者としての本能が刺激され



・・・という話。



   やる気のないプレゼンは絵にも表れる。



 あらすじだけで十分にテイストがわかり、その先も想像がつくのではありますが、そこは



監督がラッセ・ハルストレムだけに、手堅くまとめるだけでなくプラスアルファがあるのです。



 妻の尻に敷かれ、仕事への情熱がルーティンワークの退屈さに乗っ取られそうなダメ



学者、という初期設定から、出てきたばかりのユアン・マクレガーはほんとにカッコ悪いと



いうか精彩のない感じなのであるが、研究に真摯に向かい合うようになってくると次第に



輝きを増す! それでも私生活においてはなかなか判断を下せないというダメぶりを



引きずっていて、<ダメ男の似合うユアン>健在です。



 それに比べたらエイミー・ブラントはちょっと類型的な役ではあるけれど・・・十分に



チャーミング。 恋愛方面の彼女の悩みはそれなりに観客の共感を得るものであった



かと(まぁ、そんなよくできた話があるか!、とつっこまれたらそれまでですが)。



 が、なにより物語を引き締めるのがアムール・ワケドさん演じるシェイフ・ムハンマドの



存在! 彼の一言一言がなんか染みるのです。 上に立つものはこうあらねば、の見本



みたいな人で、だからこそ孤独も深いのだろうな、という。 自国人には言えないだろう



ことをジョーンズ博士には言う、みたいなことされたら、そりゃジョーンズ博士もがんばっ



ちゃいますよね!



   二人を繋ぐのはともに<釣り人>であること。



 と、そんな基本的にいい人ばかりで物語が進むわけではなく、かき回す存在として一人



悪目立ちするのが英国政府広報担当のパトリシア(クリスティン・スコット・トーマス)。



政府のプラスイメージになりそうなことなら何でもやるし、役に立たないと判断したら



容赦なく切るその姿はビジネス的には正しいのかもしれないけど人としてはどうよ!、の



これまた見本。 でもクリスティン・スコット・トーマスはやたら楽しそうに演じているのだ、



周囲の迷惑返り見ずに振舞ってみたい願望というのも誰の中にもあるのだろうか。



 不可能を可能にする地道なプロジェクト、恋愛、政治風刺、人間関係、陰謀、再生と



様々な題材を取り込みながらコメディ路線を進み、シリアスを挟みつつ結果的に



<ファンタジックなラヴストーリー>におさめるとは、さすがです。 生涯の一本ではない



けれども、見たあとにさわやかで穏やかな気持ちにしてくれる。



 そういう映画ってよくありそうで、実は少ない。


posted by かしこん at 23:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする