2012年12月22日

危険なメソッド/A DANGEROUS METHOD



 デヴィッド・クローネンバーグ新作。 またしてもヴィゴ出演!、ということに心が



躍りましたが、主役はマイケル・ファスフェンダー。 しかもファーストクレジットは



キーラ・ナイトレイだという不思議な状態に。 ま、この三人の関係がメインだから



いいのか。



   許されぬ愛。測れない心。

      偉大な心理学者ユングとフロイトの軌跡を辿る、史実に基づいた物語。



 ユング(マイケル・ファスフェンダー)の新しい担当は、ヒステリー発作持ちの



精神病患者ザビーナ(キーラ・ナイトレイ)。 暴れ回わる彼女にかねてより考えて



いた対話療法を試すことにしたユングは、患者との信頼関係を深めていく。 そして



理論上同じ系統の先頭を走るフロイト(ヴィゴ・モーテンセン)に、その過程を持って



会いに行くことから、精神医学上・現代思想上でも貴重なふたりの師弟関係は始まる。



 ユングはもっと直接的に(それこそ同じ大学で、とか)フロイトに師事していたんだと



思いこんでいたあたしはそのことにちょっとびっくり。 フロイトの著作は読んでいた



けれど、結構ユング手薄だ・・・と思い当たりました。



 ユングの「私は偶然を信じない」という口癖に笑いがこみ上げる。 これがシンクロニ



シティのきっかけか!



   いろんな意味で、フロイトは大人。



 それにしてもユング、なんてダメダメなんだ! 坊ちゃんかおまえは、というような



世間知らずさというか空気の読めなさというか。 なんとなくフロイトの考え方が



古くさいと感じられてユングは師から離れたのかと思っていましたが(もしかしたら



ユング自身はそう思っているのかも)、こりゃ、フロイトの方がユングから離れたの



かも、と思わされたりして。



 そしてまたもやってくれるヴィゴは、最初からそうだとわかっていなければヴィゴ・



モーテンセンだと気づかない見事なカメレオン振り。 というかアラゴルン(『指輪



物語』のね)があの人にとっては特殊な役どころというか扮装だったんだろうけど、



『ヒストリー・オブ・バイオレンス』とも『イースタン・プロミス』とも全然違うんですよ。



そりゃ、クローネンバーグもずっと仕事したいと思うだろうなぁ。



 対話療法について突き詰めていくはずの師弟の連絡のとり方は手紙。 片方から



片方への一方的な語りかけ。 これが葛藤を抱えた友情への対処法?



 ともかくも、この映画の肝は<会話・言葉>です!



 そう、対話でこそ深層心理を解放させられると思うからこその対話療法なんだけど、



自分が体験した過去・夢などを言葉で語るということは、ひとつのフィルター越しに



物事を探るということ。 だからこの映画もまた、直接的表現は避けて(あえて映像では



現さず)台詞の積み重ねによって本質にアプローチする。



 原作が舞台劇だから、ということもありますが・・・クローネンバーグにしてみたら



ものすごい自制の結果なのでは?!、とか感じたり。 なのでとても洗練された感が



あります。 だから会話で持たせられる俳優を選んでいるわけね!



   ザビーナはユングのどこがよかったんだろ

                       ・・・やはり<転移>かなぁ。



 キーラ・ナイトレイが発作のとき顔をつくりすぎ(顎が出過ぎ)なのがすごく気に



なりましたが・・・美人であることを捨て去る役作りはさすがです。



 フロイトの生活苦っぷり(というか子沢山で贅沢はできないという普通の感じでは



あるのだが、ユングが恵まれ過ぎてて腹立たしい)がせつない。 で、ユングは自分が



恵まれていること(財産家の奥さんのおかげだけど)に自覚がないので余計ムカつく



のですよ。



 フロイトとユングの決別、という大事件を出会いから終わりまで2時間に満たない



時間で、会話と役者の表情と静かな映像で描ききったこの映画、なんとも味わい



深いのです。 第一次大戦前のチューリッヒとウィーンが主な舞台、というのも



穏やかでよかったかも(しかし、その後に訪れるであろう世界大戦への予兆めいた



ものは見えるのだが)。



 やっぱりクローネンバーグ、好きだなぁ。 なんだかんだ言いつつヴィゴも好きです。


posted by かしこん at 23:59| Comment(2) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする