2012年12月03日

声をかくす人/THE CONSPIRATOR

 くしくも、『リンカーン/秘密の書』のラストで、エイブラハムが向かった先で起こる出来事からこの映画はスタート。 なんだか次の日に前の日の夢の続きを見たかのような、そんな奇妙な気持ちに(勿論、こっちは史実に忠実ですが)。
 1865年4月14日、ワシントンのフォード劇場でリンカーン大統領が銃により暗殺される。 ほぼ同じ時刻に国務長官・国務次官補なども自宅で襲われており、主要閣僚を殺して合衆国政府(というか北部)を混乱させるための南北戦争に対する南部からの報復と思われた。 当然北部側は怒り、犯人グループは即座に摘発される(実行犯は逃亡途中に射殺)。 その中には、近所で下宿屋を営む南部出身のメアリー・サラット(ロビン・ライト)もいた。
 彼女は犯人グループの意図をわかった上で場所を提供し、協力した罪で軍事裁判(軍法会議)にかけられるが、彼女は断固として無罪を主張するのだった。

  声をかくす人ポスター.jpg 彼女の罪。 それは、最期まで秘密を守ろうとしたこと――。

 リンカーン本人の姿をはっきり映すことはないのだが、フォード劇場の片隅から実行犯が狙う位置、銃の準備、何も知らずに集う人々など散りばめられる点描がいやがおうにも見る側をハラハラさせる。 結果を知っているのにね。
 犯人たちや南部に向けての怒りの空気が世間を覆う中、メアリー・サラットの弁護をかってでたのは元司法長官のジャクソン(トム・ウィルキンソン)。 その手伝いを南北戦争の北軍の勇者である弁護士のフレデリック(ジェームズ・マカヴォイ)に頼むが、フレデリックは彼女を擁護する気にはなれない。 しかしジャクソンは、「どんな事件であろうとも弁護を受ける権利がある」と譲らないのだった。

  声をかくす人5.jpg トム・ウィルキンソン、かっこいいよ! その時点で唯一のアメリカの良心だよ!

 が、とっとと全員を有罪にして民衆の溜飲を下げたいスタントン陸軍長官(ケヴィン・クライン)は次々と妨害をし、南部出身であるジャクソンは弁護人を降りなければならなくなる。 あとはフレデリックに託されるのだが・・・。
 『声をかくす人』というタイトルから、ロビン・ライトは黙秘権行使で何も喋らない人なのかと勝手にイメージしていたが、普通に喋るのでなんかびっくり。 ただ、肝心なことだけを語ろうとしない、というだけだった(原題は直訳すると『共謀者』って感じでしょうか)。
 見どころはやはり、次第に心を通わせていくメアリー・サラットとフレデリックの何気ない会話の積み重ねかと。 ロビン・ライト、ノーメイクですか?、と思わされたり。

  声をかくす人1.jpg 演技力のある人たちはそういうなんともない感じをじんわり見せてくれるのでよい。

 フレデリックの親友ニコラス・ベイカー(ジャスティン・ロング)や、メアリーの娘アンナ・サラット(エヴァン・レイチェル・ウッド)もいい味を出していた(エヴァン・レイチェル・ウッドは黒髪だったので最初誰だかわからなかったけど)。 そう思うと、イギリス人キャストが多いのよね(共犯者のひとりは『処刑人』の弟くんだったし)・・・時代的に、イギリスからの入植者の面影が多く残っていたのか?
 何故共犯者たちが軍法会議にかけられるのかよくわからなかったのだが、この時点ではまだ南北戦争は終わってなかったんだね・・・だから<戦争中の犯罪>ということになってしまったんでしょう。 でも時折激情にかられるメアリー・サラットが見せる南部から見た北部への憎しみの意味がよくわからないのだった。 そこまでのものは、一体どこから?
 アメリカの歴史において、メアリー・サラットは軍法会議にかけられた唯一の民間人女性であり、また女性死刑囚第一号となった、という事実が重い。 普通に考えたら“ただ息子をかばっている”って想像がついてそれでいいでしょう、となりそうだけど・・・そうならないのが法なのだ、ということでしょうか。 あ、またしても“普通に暮らす人”と“法”について考えることになってしまった。
 答えをすぐに求める空気、は時代が変わってもそのまま911後とまったく同じだし、というアメリカ側の反省というか「歴史を直視せよ」というロバート・レッドフォード監督からのメッセージなんでしょうね、この映画。
 その危険性は今の日本人にもそのまま通じます・・・。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 06:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする