あ、また原題が切れたか。 “ET SI ON VIVAIT TOUS ENSEMBLE?”です。
なんでこの映画見ようと思ったんだっけ?、とぼーっとしてしまい、「あ、そうだ、
ダニエル・ブリュール出てるからだった」と思い出す。 やばいぞ、あたし。

人生の、最高な最後の選択
昔からの友人であるアルベール(ピエール・リシャール)とジャンヌ(ジェーン・
フォンダ)夫婦、ジャン(ギイ・ブドス)とアニー(ジェラルディン・チャップリン)夫婦、
そして一人暮らしのクロード(クロード・リッシュ)は昔と変わらぬ友人づきあいを今も
続けていた。 しかしクロードが心臓疾患で倒れ、息子によって専門施設に入れられて
しまうとこれまでのような<自分たちの望む暮らし>ができない、とジャンとアニーの
家にみんなで揃って共同生活をすることに。

実はジャンには痴呆の気が出ているし、体力ないのに大型犬の散歩に行くため
怪我も絶えないことにうんざりしたアニーは若者(ダニエル・ブリュール)を犬の
散歩係に雇い、民俗学を学んでいてある一定の集団に起こるふるまいを研究
テーマにしようとしている彼をうまく丸めこみ、老人コミュニティのオブザーバー&
何でも係として引き込む。 実はアニーも病気であることを隠しているし、なんと
いうんでしょうか、フランス的個人主義の徹底さを実感した作品でした。
友人たちで助け合って生きる、という発想は確かに美しいですが、実際の生活に
美しいも何もなく、いろいろ起こるトラブルもお金で解決。 そもそも、5人+1人が
生活できる大きな家をもっている人たちなんだからブルジョアなんでしょうけどね。
そうか、お金があって生活が安定しているからこそ、他者への気遣いができるのか
・・・と思ってしまったり。
基本はコメディなんだけど、根底にあるクールさがただの笑いでこの映画を終わら
せてくれなかったところがありました。 それもまた、徹底した個人主義思想故かなぁ。

ときより明らかに若返っていてよかったです。
俳優陣のレベルは高く、だからこそ「お金持ちだからの話じゃん!」と反感を買わずに
すんで“すべての世代に<老い>とは何かを考えさせる”内容になっているのかも。
でもこの年代になってもリアルに恋愛問題が絡んでくるのがさすがフランス人です!
それでもやはり孫の歓心を買いたいところが笑えるけど侘しい・・・(徹底した個人主義は
どうした)。 日本だと、というかあたしのまわりだと、このままずっと独身だったら派と、
結婚してるけど夫が先に死んだ場合派で、もし一人になったら老後はみんなで一緒に
暮らそうよ案が結構昔から出ているんだけど・・・だんだん現実味を帯びてきました。
あくまで女だけで、というところがフランス人とは違うところ。
そしてこの映画は容易くお涙ものにしないこと、解決策を安易に提示しないこと、人を
思う気持ちに正解はない、といった<それでも人生は続く>というフランス映画特有の
エンディングになだれ込むのもお約束。
深く心に残る作品、というわけではないけれど、それでも「失敗だった」とは思わない。
あぁ、フランス映画だなぁ、でした。