2012年11月02日

あなたへ



 もしかして、ちゃんと高倉健の映画を見たのって初めてかも・・・。



 なんでだろう、と考えてみる。 あたしが子供の頃は角川映画全盛期。 テレビで



たまに放送される黒澤映画はモノクロだったからどうも興味をひかれず(でも『犬神家の



一族』には盛り上がったのだから市川崑監督だけちょっと特別な存在)、『日本沈没』や



『首都消失』といったスペクタクルものは見ましたが(でも『復活の日』と『さよなら



ジュピター』はちょっとよくわからなかった記憶が)、『幸福の黄色いハンカチ』みたいな



“人情物”は小学生にはまだ理解できなかったのか。



 どうも日本映画は辛気くさい、というイメージがあり、子供OKのアニメや洋画が豊富



だったのでそっちに流れてしまった感があります。 だからあたしには<日本映画冬の



時代>があり、その時代を代表するスターが高倉健と吉永小百合なのかなぁという気が



します(このお二人の作品、実はほとんど見ていないのです)。



 そのお二人の映画が今年は続けて公開され、今のあたしはどちらも見に行こうと思って



いるのだからいつの間にか冬の時代は終わっていたのかもしれません(今、WOWOWで



黒澤作品を放送中で、地道に録画しています。 そのうち小津作品もお願いします)。



   あなたの大切な想い 大切な人に 届いていますか――



 北陸の刑務所で木工の指導技官として勤務する倉島英二(高倉健)は定年退職後も



技官としての腕を買われて仕事を続けているが、最近、最愛の妻(田中裕子)を亡くして



仕事しかすることがない、という状態。 後輩ながら上司である塚本(長塚京三)は



「倉さん、休んでくれなきゃ困りますよ」とぼやくが、聞き入れてなどもらえないのは承知の



上である。 そんなある日、死期の近い人の願いをかなえる趣旨の活動をしているNPO



から倉島のもとに妻からの手紙が届く。 一通はこの場で開けてもいいが、もう一通は



妻の故郷である長崎の平戸の郵便局の局止めとして投函するという。 そこで受け



取ってもらうのが意志なのだ、と。 最初の手紙には平戸の海に自分を散骨してほしいと



いう妻の希望が書いてあり、倉島は定年後に妻と二人で全国を旅しようと準備していた



手造りのキャンピングカーを仕上げ、長期休暇を取って長崎に向かうことにする・・・。



 まずびっくりなのは、「健さん、老けている!」ということであるが・・・これは大スクリーン



なので致し方ない。 むしろ妻が田中裕子では年齢差で余計に健さんが老けて映るの



ではないかとハラハラしていた。 が、更にびっくりしたのは妻にだけ饒舌に語っている、



ということ。 しかも相当の甘えを含んで。



 <甘える高倉健>なんて、いいんですか?!



 妻以外の人物(特に旅の途中で出会う人々)に対しては「不器用ですから」のイメージ



そのままなのに・・・そこに妻への深い愛が描かれているのでしょうが、なんだか変な



感じがしてしまいました。



   だからこそ、二人の時間が貴重なものに。



 あ、あと、木工の技術がものすごく自然で、この映画のために身に付けたのか、それとも



過去のやくざ映画関連のときから覚えてすっかり自分の趣味・特技になってしまっている



のかわかりませんが、やたらうまいです。 それにもびっくり。



 そもそも、役名が「倉さん」です。 亡くなった奥様は歌を歌ってらっしゃいました。



 これ、高倉健の人生を別モードに翻訳した物語ととらえられてしまうのでは? もしくは



そう取られてもいい、ということなのかも。 PRの場に積極的に出てきてコメントする姿を



見ていると、「これが最後の映画になるかもしれない・そうなっても構わない」みたいな



覚悟が感じられます(実際、結果的に高倉健と大滝秀治の共演はこれが最後になって



しまったわけですし)。



   予告の印象ではコメディリリーフっぽかった

    たけちゃん、なんと元国語の教師を名乗り、倉さんに山頭火を題材に旅の指南。



 あまりにも真面目でまっとうな台詞展開にいい意味で裏切られました!



 でも、ちゃんと観客を楽しませるオチも用意されてるんですけどね。



 映画としては大変上品ですし、品格があるといえばある。 しかしそれは退屈と紙一重。



 「そんなにクレーンからの画像、素直に撮っちゃっていいんですか!」と見てるこっちが



ハラハラしてしまうほどシンプルな画づくりに度肝抜かれました。 斬新なものを求めて



しまうあたしがいけないのか、成熟とはマンネリとは違うのだと見抜く目が足りないのか・・・。



 いや、この映画の目的は<今の高倉健>をスクリーンに焼きつけることなのだ。



 となれば奥さんの気持ちがなんだかよくわからないんだけど、という疑問が残っても、



多分どこかすがすがしい気分なのであろう倉さんが延々と堤防を歩いていくエンディング



ロールで十分それは果たされた、ということなのであろう。



 これで、主演男優賞の枠をひとつ獲られた・・・。


posted by かしこん at 06:39| Comment(2) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする