2012年10月16日

鍵泥棒のメソッド



 「そろそろ内田けんじ監督の新作、出てもいいんじゃないのかな〜」とふと思いついて



呟いたのが今年の6月頃? そうしたら一週間もしないうちにシネ・リーブル神戸に



『鍵泥棒のメソッド』のチラシが並び始めて、びっくり。 これもシンクロニシティ?



 しかも香川照之と堺雅人ダブル主演! 予算増えたなぁ、とたまたまですがメジャー



デビュー作『運命じゃない人』から映画館で見てきた者としてはしみじみするわけです。



でも公開は9月15日か・・・まだ先だなぁ、と思っておりましたが、そんな日はあっという



間に来るものですね(またもしみじみ)。



 しかも今回は前二作と比較にならない宣伝量だったような気が・・・おかげで、結構な



人数で込み合ったスクリーンで見ることになりました。 でも、コメディはある程度の人数で



見たほうが楽しいです。



   二人の人生が入れ替わり、喜劇が幕を開ける!



 役者を目指しているが売れないまま35歳になってしまった桜井(堺雅人)は荒れ放題の



部屋で自殺を試みるが、失敗。 とりあえず風呂にいこうかと行った銭湯で、羽振りのいい



男(香川照之)を見かける。 なんと彼は石鹸で足を滑らせて頭を強打! 意識を失って



救急車で運ばれることになるが、どさくさにまぎれて桜井はその男とロッカーのカギを



交換。 現金ぎっしりの財布と高級外車などを手に入れる。 男は病院で目を覚ますが



記憶を失っており、ロッカーの荷物から自分は桜井という名の35歳だと知らされる。



 ところ変わって、世界中の一級品を紹介する雑誌の編集長・木島香苗(広末涼子)は



職場で「近いうちに結婚することになりました」と宣言。 が、相手はまだ決まっていない



にもかかわらず、結婚式までのスケジュールはびっしり。 彼女が結婚相手に求める



条件とは「健康で、努力家の方」。 編集部のみなさんは度肝を抜かれるのだが、努力を



尊ぶ彼女をよく知っているためか「がんばりましょう!」と拍手で激励(あたしはここ、



おなかが痛くなるかと思うくらい笑った)。 合コンのセッティングもしてくださいます。



   かわいらしさ封印、ほぼ無表情の広末が

           思っていたよりずっとよかったです。



 そんな香苗が、退院直後の桜井(と思い込んでいる男)と病院の出口で出会う。



 「記憶がなくて・・・」と話す男を香苗は車でアパートまで送り届けることに。 そこで男は



自分が役者志望であると部屋のモノから判断し、病院で買ったノートに鉛筆で<わかった



こと>を書きつけていく。 そんな姿に香苗は努力家要素をかぎとる。



 その頃、ほんとの桜井は男が記憶喪失になっていることに安堵し、自分の借金を男の



金で返済してまわる(このあたり、堺雅人のダメ度が全開なのがめったに見られない分、



楽しい)。 が、その男の正体とは誰もターゲットの遺体を見つけることができない伝説の



殺し屋・コンドウだった!、という話。



 今回は時間軸をいじらず、時系列通りに物語が進行するため、前半はちょっとスロー



ペースな気がするくらい。 しかし、それぞれの携帯の着メロや警告音を発しすぎの



高級車や破り捨てた写真の一枚一枚までがエンディングまでつながる伏線となっている



のは相変わらずお見事です。



   桜井(と思い込んでいる男)にとって

        唯一のお知り合いである香苗とはすっかり仲良しに。



 で、香川照之がいちいちおいしすぎ! 「35歳って言われたんですけど・・・老けてます



よねぇ」と、そこは無理あるでしょ、と観客が思うところを自分から言ってくれるし、整理



整頓が大好きな性格は記憶を失っても変わらないのか桜井の部屋はあっという間に



きれいになるし、はじめは着心地悪そうに着ていた桜井の服を次第に着こなしていく



ところとか、香苗さんと一緒に舞台を見に行く約束をして待ち合わせに現れた彼女に



手を振る仕草とか、いちいちキュートなんですけど!



 でも記憶を取り戻し、香苗の前から姿を消したコンドウは、今度は桜井との二人芝居



パートに突入。 ここ、すっごく面白かった。 コンドウはキュートさをかなぐり捨てて



非情な男になり、桜井は情なさ全開で立ち向かうも返り討ち。 多分、普段の堺雅人本人



ならば絶対使わないであろうぞんざいな言葉遣いが板についてなくて、それはそれで



かわいい(あ、ちょっとファンの心情が入ってしまった)。



   桜井が引きよせてしまったトラブルを、

            解決しようとコンドウが一芝居打つことに・・・。



 で、リハーサルをするわけですが、桜井へのダメ出しに会場中大爆笑。 タイトルの



『メソッド』はある種の演劇技法のことでもありますが、「演技論の本、何冊もあったけど、



全部16ページで挫折してるじゃないか!」とか確かに生活環境を共有した人ならではの



つっこみが楽しすぎて(ちなみに記憶がなかった時期のコンドウさんは自分が売れない



役者だと思っているので地道に演技とは?と考えてエキストラのオーディションに行ったら



小さいけど台詞ありの役をもらってしまってました。 努力の人です)。



 この二人のやりとり、ずっと見ていたかったわ・・・。



 内田監督の作品、好きなんですが、いつも気になっていたのは<何故いつもヤクザとか



闇取引とかそういうのが出てくるのか>、ということ。 今回もコンドウさんは殺し屋だし、



依頼人として当然やくざ屋さんが登場します。



   ま、それが荒川良々だってあたりが・・・ですが。



 でもこれを見てやっと気づいた。 今の日本ではわかりやすい悪の記号って<ヤクザ>



しかないからだ(そこは北野武がヤクザ映画を撮る理由と同じですよね)。 でもそんな



<悪>を前にしても人間の善なる部分はあるのだと、そういう部分を信じたい気持ちを



より強く描きたくて、ヤクザ的犯罪を絡めてくるのかな〜、と。



 だって、ただの一人の欲望が引き起こす犯罪じゃ、記号化できないし後味悪いし、



コメディにもしづらいよね(と、今頃気づくか、あたしも・・・)。



 というわけで、非常に後味のよい作品に仕上がっております。 見終わったらちゃんと



ラブストーリーだし! でも毎回貧乏くじを引く人がいて、今回は森口瑤子さんの役だった



かなぁ(前回は佐々木蔵之介)。



 しかも結局、堺雅人は香川照之の引き立て役になっちゃってるんだけどね!


posted by かしこん at 23:59| Comment(2) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする