2012年07月08日

涼しさを求めているわけでもないが・・・

 先日、『冬のデナリ』を読んで、あたしの中の“雪山遭難探索魂”に火がついてしまいました。 何故、危険を顧みずに山に登るのか。 理解できないので、ついいろいろと読んでしまいます(映画も見ますが)。

グランドジョラス北壁 ウォーカー稜冬期日本人初登攀/小西政継
 描かれている時代が自分が生まれたよりも前、ということに驚き。
 アルプス三大北壁の中で最も知名度に劣りながらも最も困難、といわれるグランドジョラス。 しかもわざわざ冬に、日本人初登攀を狙いに行くという・・・いいじゃん別に、とあたしは思うが、行くんですよね・・・。

  グランドジョラス北壁.jpg 図書館から借りたやつは初版だった・・・カバーもなくて。現在、文庫本が入手可能のようです。

 筆者はこの頃、30代そこそこって感じだけど、いろいろ下調べの段階で出会った先輩が60代だということにものすごく驚いていて(それこそ「そんな年齢で!」みたいな)、時間の流れは無常だなぁと思う。 だって、最近の山登りする人の平均年齢ってそれくらいじゃない? つまり筆者とその後輩たちの年代で日本の本格登山ブームは止まっているということでは? あたしはそれが悪いことだとは思わないですけどね。
 筆者がグランドジョラス北壁の登攀に成功したのは1971年。 チームで登り、みなさんそれぞれ生きて帰ってこれたが、大半の人が凍傷で手足の指をなくす結果に(凍傷にかからなかった数少ない一人が、あの植村直己である)。
 というわけで指を切断する手術を受けるところから始まるこの本は、そういう命の危険に近づきながらもともかくも隊員を誰ひとり失わず帰ってきたということで、なんとはなしにどこか牧歌的。 思ったよりも簡単にお茶とか飲めてるし(よく考えたら8000m峰じゃないからかも。 グランドジョラスは4000m台である)。
 まぁ、時代が時代だから装備が不十分なんですけど(今現在の装備ならば凍傷になることはなかったかも)。
 しかし、登攀できたら足や手の指ぐらい失くしてもいい、という気持ちで登ってしまうアルピニストの熱さには困ったものです(帰って来てから、ほんとに引き換えにするだけのことだったのかと自問してるけど、それでも後悔していないみたいだから)。
 しかし、この筆者はのちのち、マナスルで消息を絶っているらしい・・・。
 もはやアルピニストとは、現役を引退するか死ぬまでやるかの選択しかないのだな。


K2非情の頂 5人の女性サミッターの生と死/ジェニファー・ジョーダン
 この本が執筆された時点(2004年)で、世界第2の高峰K2の女性登頂者はたったの5人。 うち3人はその下山途中に死亡、残った2人も他の山で死んでいることに何かを感じてしまった著者が、5人の女性たちの生き方に迫るルポ。
 なんと筆者はジョン・クラカワー『空へ』で高所登山というものに魅せられてしまったらしい(そこ、あたしも同じ経験を! でもあたしがそもそも遭難ものにはまったのは新田次郎『八甲田山死の彷徨』と『聖職の碑』でした)。 しかも『空へ』で、出てくる女性アルピニストたちに対して描写が冷たいと感じ、登山界では女性の立場はどうなのかとフェミニストの血が騒いだようだ。 うーん、あたしはそこまで感じなかったんだけど(たとえばピットマン女史への批判は、相手が女性だからというよりも、形は違えど同じマスコミ業界に身を置いているものとして視点が厳しくなっているのであろうと感じた)。 そんなわけでこの著者は本文中で「おいおい」とつっこみたくなるほど女性たちを擁護しているが・・・まぁ仕方がないのかな。

  K2非情の頂.jpg なるほど、これではエベレストより死亡率が高いのわかるな。

 それを差し引いても、5人の女性たちは性格も生き方も山への気持ちもまったく違っていて大変興味深い。 これだけまとめるのは大変だっただろうな、と思いつつガンガン読んでしまった。 面白い。
 それにしてもサミッターの世界というか、8000m峰を主に狙う人たちというのは意外に少なくて結構みなさん顔見知りだったりするんだな…ということに驚く。 特にK2だから、エベレストほど一見さんが来づらいということもあるだろうけど。
 筆者はこの5人に運命というか因縁めいたものを感じてしまっているようだが・・・結局のところ確率の問題かな、と。 1990年以前と以後では死亡率もかなり変わっているわけだし(K2に関して言えば、41%から20%未満と半減している。 その後、女性の登頂者も増えて10名を余裕で越えているはずである)。 K2だけでワンシーズンに13名の死者を出した、<ブラックサマー>も1986年のことだし(5人のうち2人がこのときに亡くなっている)。
 言葉は乱暴になってしまうが、どの山で死のうともサミッターの死は突然であり、なかなか受け入れがたい。 だからこそ意味を見出したいのだろうし、だからといって誰も戻ってこないのだが。
 というわけで、次はその<ブラックサマー>を書いたやつを読んでます。
 『空へ』も、もう一回読もうかな・・・。

posted by かしこん at 10:07| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする