2012年06月03日

テルマエ・ロマエ

 公開当初からかなり混雑していて・・・こりゃしばらく待った方がいいな、と判断。
 それは『宇宙兄弟』もなんですけど、こっちはいささか原作に思い入れがあるため(ムッちゃんは大泉さんがよかった・・・)少々ためらいが。 というわけで一足先にこちらから。

  テルマエポスター.jpg 阿部寛が古代ローマ人、それだけでまずキャスティングの勝利。
 しかも前半、ほぼ、阿部寛が全裸! しかしそれに違和感なし! ギリシャ彫刻を見てるみたいで、エロさが入り込む隙間がなしなので安心して鑑賞できました。
 古代ローマ帝国、テルマエ(公衆浴場設計)技師のルシウス(阿部寛)は斬新なアイディアを求められ苦悩の日々を送っていた。 ある日、テルマエにいたら風呂の底に穴を見つけ、そこから水に流される。 すると彼は見たことのない風呂場、<平たい顔族>のテルマエにいたのである。 奴隷船用浴場に紛れ込んだと考えるルシウスだが、<平たい顔族>のテルマエには彼の知らない技術・アイディアが盛り沢山。 感銘を受けて戻り、新たにつくったテルマエはローマの人々に大受け!
 そんなことを繰り返し、ルシウスは大衆に名を知られる存在になっていく。
 そして当然、<平たい顔族>は現代日本人である。 原作は読んでいないのでどこからがオリジナルストーリーかわかりませんが・・・(多分上戸彩の役は相当ボリュームアップされていると思われる)。 そりゃ、古代ローマ人から見たら大和民族は顔がひらたいですよ〜、と素直に納得。

  テルマエ02.jpg こんな感じで古代ローマの場面では外国人エキストラに混じって違和感のないルシウスくん。 台詞は吹替日本語で、ちょっと海外ドラマ風。
 そう、海外ドラマといえばこのローマの街中に激しい既視感が!
 何年か前にWOWOWで見た『ROME』(HBOとBBCの共同制作だったかな?)のセットと一緒! 時代が違うから、足りない部分はCGで補っていたけれど、あのセットを借りたのか・・・。 そこが安くすんだからエキストラ増やせたのかなぁ、と勘繰ってしまいましたよ。
 前半は全裸の阿部寛で引っ張るギャグ展開で面白いですが、もうちょっとテンポをあげてもよかったような。 笑いにはスピード感と間が大事だわ。

  テルマエ04.jpg 絶対笑わないルシウスがいるからこそ、おかしいのですが。
 しかし皇帝ハドリアヌス(市村正親)が登場してからこの映画は別の示唆をしてくる。
 皇帝は言う、「ローマもこれからは武力のみで他国を制圧する時代ではない。 文化の力を広げるのだ。 それがよいものであれば、押しつけなくとも相手が勝手に取り入れてくれる。 お前がつくるテルマエもそのひとつじゃ」
 それだって文化侵略と言われてしまうかもしれないけれど、<よいものならば広まるだろう>というまるで選択の余地のあるような言葉。 このへんが日本人の感覚っぽくて(別名は甘ちゃんということですが)、あたしは大変感銘を受けました。

  テルマエ05.jpg メイクしているとはいえ、主要人物は日本人。
 ルシウスは皇帝の言葉に感動し、この人のためならばなんでもする!、と盛り上がるのだがもともとは<平たい顔族>のアイディアをもらってきただけ、ということに次第に良心の呵責が(そしてどれだけ真似しようとも向こうのほうがトータルの技術は上だし)。
 悩めば悩むほど彼はドツボにはまっていくのであるが、もともと彼はローマ市民。
 <平たい顔族>のことは奴隷と思っているのだからぱくったことに罪悪感を持つ必要がないのである(当時の人種や階層のヒエラルキーから見たら)。 なのにルシウスは黙々と働く平たい顔族を間近で見て、「何故彼らはこんなに私欲なく働くのか!」とじわじわと感銘を受け、その存在を認めるようになっていくのである。

  テルマエ06.jpg 平たい顔族のみなさん。
 まぁ、日本人にしてみたら「仕事だ〜! やろうぜ〜!」となったら協力してやるのが普通ですからね・・・奴隷がいるわけじゃないし、自分たちで動いた方が早いからね。
 そんな温厚な平たい顔族を見て、ルシウスは心の中で呟く。
 「お前たちの文化は素晴らしい! もっと自分たちの文化に自信を持つべきだ!」
 ・・・これ、3.11後の国威高揚映画ですか?
 でも、うっかり涙ぐんじゃいました・・・。
 ラテンのみなさまの力を借りつつコメディに仕上げて、ちゃんと直球のテーマを投げてくる。 ちょっと日本映画として新しい階段の一段を上がったのではないですか? 勿論、この映画が完璧であるとは言いませんが、でも目指してある程度成し遂げられているものは、シリアステーマに笑いを絡めることができないという日本映画の欠点をカバーしてあまりあるのでは。
 勿論、そんなにもルシウスが平たい顔族に歩み寄ってくれるのは、古代ローマ人も日本人も「風呂を愛している」という共通項があったからなんですけどね。
 ただ、ローマ人に感銘を与えてばかりでは面映ゆいので、日本人も古代ローマから学んでくればよかったのに・・・それが文化相互交流でしょう。 続編がもしあるのなら、そこをきっちり描いてほしいかな。
 阿部寛は素晴らしいですね! 期待の北村一輝は役柄が残念なキャラなのでいまいち爆発しきれず・・・ちょっとさみしい。
 満員の映画館はあたしは好きではありませんが、でもこの映画はそこそこお客さんがいる会場で、みんなで「わはははっ」って笑いを共有しながら見たほうが面白さは倍増しそう。 と、10人いるかどうかの映画館で、ちょっとさみしさを覚えてしまったあたしであった。

posted by かしこん at 23:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする