ムーアに住む姉妹/ジェイニー・ボライソー
たんたんたんと階段を上がるようにコンウォールシリーズも5作目。 コージーは
読むのが速くすむ、続けて読んでもあまり負担じゃない、ということに改めて気づく。

ローズはダドリームーアに住む老姉妹から肖像画の依頼を受ける。 また、町で
絵画教室の講師も始めるが、才能があると見込んだ生徒がその老姉妹と血縁だと
わかり、生徒から行方不明のいとこの様子を探ってほしいと頼まれる。
余計なことに首を突っ込むなという元カレからの忠告をよそに、ローズはまたも
やっかいごとに巻き込まれることに、という話。
これは今までのシリーズの流れからちょっと放れる異色作。 何かがあるのかも、と
ローズが探っている段階では事件が起きていないのだけれど、最後には事件が起きる、
というパターンでした。
それにしても、ローズと元カレの話がここまで引っ張るとは・・・。 芸術家としての
ローズの自立がもうひとつのテーマのはずなのに、痴話ゲンカ繰り広げているキミらは
二十代か?!、です。 なんかちょっとがっかりしてきました。
注文の多い宿泊客/カレン・マキナニー
<朝食のおいしいB&B>シリーズ一作目。 B&Bとはベッド&ブレックファスト、
英語圏に昔からある朝食付きの宿泊施設でホテルに比べたら比較的低価格で利用
できるもの。 日本の都市部だとビジネスホテルになっちゃいますが、イメージとしては
ペンションに近いかな。

クランベリー島でB&B<グレイ・ホエール・イン>を始めたナタリーはまだ完全に
島の人々になじめたわけではないけれど、彼女のつくるお菓子は大評判。 島の
固有種であるアジサシの保護運動も始めたはいいけれど、リゾート開発業者が島に
進出しようとしていて、いろいろと大打撃な予感。 そんな中、開発会社の社長が
死体で発見されて第一発見者となったナタリーが疑われる、という話。
コージーミステリで主人公が第一発見者というのはよくある話だけれど、かつ自分が
第一容疑者、というのは珍しい。 容疑を晴らすために調べ回る、という動機は説得力
あるけれど、ここまで主人公が何度も命の危険にさらされるのも珍しい。
で、ナタリーの財政難も語られるので、彼女が冷蔵庫・冷凍庫からありものでどうにか
つくりあげる朝食は(勿論、材料に余裕のある日もあるのだが)、裏側を知ってしまうと
おいしそうと感じられない・・・。 いや、おいしいんだろうけど、是非!、という感じでは
ない。 シリーズが進んで宿の財政に余裕が出てきたら気にならなくなるのかもしれ
ないけれど。 巻末にレシピつきという最近はやりのコージー装丁ですが、事件の
幕切れはお菓子のようには甘くない。 それがシビアで、この作者の特徴なのかも
しれないですね。 現在4作目まで刊行中。