2012年03月15日

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い



 これはタイトルに原題併記をあきらめて・・・“EXTREMELY LOUD AND



INCREDIBLY CLOSE
”です。 ほぼ、直訳。 でも味わいあり。



 でもこの長いタイトル、わりと不評のようです。 言いづらいから? あたしはネットで



チケットを注文したのでカウンターで作品名を言わずに済みましたが。



 ですが「ものすごく○○○で、ありえないほど△△△」という言い回しがネット上では



流行っているらしい。 言葉遊び的響きがあるからかな?



 少年オスカー(トーマス・ホーン)のナレーションで終始進んでいくこの映画、この



構成が曲者だったな、とエンドロールで気づきました。



 911の同時多発テロ、ツインタワービルにいた大好きな父(トム・ハンクス)を亡くした



オスカーはあの日以来、飛行機や橋、高層ビルなど巨大なものや電車が線路を揺らす



音、大通りを行きかう車の音などが苦手で地下鉄にもバスにも乗れず、どこへも徒歩で



行くしかない。 いや、そもそも学校にも行かなくなっており、父親の残したものを見たり



手にしてはよき日々に・思い出に浸りつつ、すぐに理由もなく父が死んだことへの怒りが



沸き起こる。 母(サンドラ・ブロック)があっさり事実を受け入れているように見えるのも



オスカーの癪に障る。



 ある日、父の部屋で青いツボの中から見つけた鍵、その鍵が入っていた袋に書いて



あったBLACKという言葉を手掛かりに、オスカーはマンハッタン中のブラックさんに



会いに行き、この鍵のこと・父親のことを聞こうと計画を練る・・・という話。



   あの日父を失くした少年の、喪失と再生のものがたり



 悲しいかなオスカーくんが、大変可愛げがない。 マンションのドアマンさん(ジョン・



グッドマンだ!)に「くそ野郎」などと暴言を吐くのだが、その理由がわからない。



 男の子ってそんなもんですか?



 ナレーションでオスカーくんは自分の気持ちを吐露しているからでしょうか、「なんで



他人を傷つける言葉をバンバンはいているのに、自分が傷つくとそんなに怒る?」と



不可解で仕方なかった(子供だから?、という限度を超えているようにも思えて)。



 だから親から十分に愛されているが故の無神経・まわりへの気遣いができない子



なのかと思って、理不尽に父親を亡くしたからってそれを免罪符にできると思うなよ!、



と説教したい気分になってしまいました。 PTSDのつらさはわかっているのですが。



   これは拒絶のまなざし? それとも・・・。



 が、途中で彼が「アスペルガーの疑いあり」と診断されていることがわかる。 



 他人に共感できないのはそのせいか! でもナレーションでは他者を理解している



ような部分も見えるので整合性に困る・・・オスカー独自のこだわりは性格だと思って



いて(苦手なものが多いのはPTSDのせいだと思ってて)、アスペルガー的なものに



あたしは気づかなかった。 そう言われたらそうかなぁ、と感じるけれども、それは彼が



比較的軽症だからかもしれないし、必要以上に劣等感を持たせない彼の父親の愛情



あふれる教育のせいだともいえるわけで、だからこそオスカーの父への想いがわかる



だけに、それがわかるなら他の人の気持ちも多少考えたっていいでしょう!、となって



しまう。 あたしって、「こうあらねばならぬ」にしばられているなぁ。 でも病気だから、



で納得するよりもその人の性格だから、と理解したいなぁ、としみじみする。 誰しも



違う存在ですもの。



 そこへ祖母の家の間借り人(マックス・フォン・シドー)の登場で心がなごむ。



   謎のおじいさん。 正体はすぐにわかりますが。



 かつての大空襲の恐怖により言葉が出せなくなったという彼(多分、ドレスデン



大空襲のことと思われる)はてのひらにYES、もう片方にNOと書き、他は筆談で



意思疎通。 筆談だと文法をはしょるのね、とそのへんは字幕がなくてもわかる感じが



します。 この間借り人さんが、なんともキュートなのです。 80歳過ぎたお人であろうに、



意外にも足取りは達者(「そんなに歩けない」と渋るオスカーを地下鉄に乗せておき



ながら、オスカーの足はマメだらけだったりするのに彼はそんな風を見せない)。



 かっこいい!



 何かで裏を引いている、一人で秘密を知っている、というような役が多いマックス・フォン・



シドーが、ここでは(秘密はあるけど)なんとはなしに“普通の人”でいるのが素晴らしい。



こういう頑固爺さんぽい人、好きだわ・・・。



 オスカーが足にマメをつくりまくるのは、靴紐で結ぶ革靴ばかり履いてるからなんだが、



スニーカーなんか履かないのも彼特有のこだわり故。 お父さんからのプレゼントなの



かもしれないし、もしかしたらお父さんとお揃いの靴なのかもしれない。



   父への想いが強すぎるために母親は二の次。

   地味な服なのにサンドラ・ブロックのスタイルのよさが逆に際立っていてびっくり!

   オスカーのパジャマは何種類か出てきますがどれにも共通項が!



 しかし、それにも負けない母の愛の強さがこの映画をより感動的にもするんだけど、



あっさりまとめた感がなきにしもあらず。 オスカーのトランシーバーから放たれる



「オーバー」にたとえ何時であってもすぐに「オーバー」と返信する祖母の存在とか、



オスカーが最初に出会うミセス・ブラックのヴィオラ・デイヴィスなどインパクトある



女性陣がこの物語を支えているのですよね。 女は強し!



 オスカーが抱えていた秘密はとても重いものだったけれど、彼は“鍵探し”という



ミッションを通じてもしかしたらアスペルガーとPTSDを克服したかもしれない。



 実際にはそう簡単にはいかないと思うのであくまでこの映画はファンタジーだなと



感じてしまいますが、それを信じてみたっていいではないか、なのです。



 さすがスティーヴン・ダルドリー監督、職人芸的うまさ!



   それにしてもアメリカ映画は、

      ストレートに父と息子の愛を描くものが多いね。



 日本の映画だと“母と子”がメインになることが多いのに。 “父と息子”だとそれこそ



『華麗なる一族』ばりに対立軸になることが多い気がする。 お国柄? それもこれから



変わるのかしら?



 このような形で911を描くのに、映画界は10年かかったんだなぁ、ということがそのまま



アメリカの傷の深さのようで・・・311を日本が<物語の一要素>として取り込める日が



来るのだろうか。 そう考えると、それもまた切ないのだった。


posted by かしこん at 04:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする