2012年03月03日

ハンター/THE HUNTER

 ウィレム・デフォーってどこの映画にも出るよな、としみじみ。
 ハリウッド映画は勿論だけど、フランス映画をはじめとするヨーロッパの映画にも不意を突いて登場するし、これはオーストラリア映画でございます。
 フリーの傭兵でありハンターであるマーティン(ウィレム・デフォー)は、あるバイオテクノロジー会社から幻の動物の遺伝子サンプル採取依頼を受けてオーストラリア・タスマニア島を訪れる。 タスマニアデビルを研究する学者という触れ込みで現地に到着するも、林業などで生活している地元住民と外からやってきた自然保護派とで町は二分されていた。 自然保護派とみなされるマーティンは反対派からの嫌がらせも受けるが、彼の目的はただ一頭残っているかもしれないタスマニアタイガーだった。

  ハンターポスター.jpg 最後の標的。 男は、何に照準を合わせたのか――
    孤高の男<ハンター>の生き様が胸を打つ、至高のサスペンスドラマ。

 浴槽につかり精神集中するマーティンの習慣は、日本人には当たり前のものだけど外国人にしてみたらちょっと奇異に映るのかな?(そこが彼の独自性というか、周囲とまじわらない感じを出している?) というかマーティンの過去というか経歴のようなものも全く語られずに映画は進む。 彼は過去を抹殺してきた男なのか? 仕事柄過去は持たないようにしているのか? もともとフリーでひとりでしか仕事をしない人だったのか?
 「こいつはいったい何者だ?」というマーティンに対する興味が浮かべば浮かぶほど、この映画にのめり込む率は高い。 何故ならば、宣伝しているような山岳サスペンスでも陰謀渦まくサスペンスでもないから。 マーティンという一人の男の人生を変える旅と出会いの物語だから。

  ハンター4.jpg 森に入るときは、いつもひとりで。
 というわけで、ほぼウィレム・デフォーのひとり舞台でございます。
 町の実力者(?)ジャック・ミンディ(サム・ニール)の協力で、ある研究者の小屋に下宿することになるマーティン。 ところがその研究者は森に入ってから何カ月も行方不明で、妻は心労のため精神安定剤を飲みまくりで満足に動くことができず、幼い二人の姉弟がマーティンと付き合う(ちょっかいだす)ことに。
 姉はおしゃまだが、弟は口をきかない(きけないのかもしれないが、その理由は明らかにされない。 父親が帰ってこないからだろうか、と推察)。
 そんな二人にペースを乱されるからだろうか、それともその前の仕事で何かあったのか、マーティンはとてもプロとは思えない些細なミスをおかしてしまう。 「ほんとにプロですか!」とあたしはどぎまぎ。 しかし仕事中は表情を動かさないマーティンは、自分でそのミスを悔いているのかどうかもわからない(親切にナレーションなんか出ません)。 そんなマーティンと、口をきかない弟がなんとなく心を通わせてしまうのはわかる気がする。 多分そんなことは彼の人生の中でなかったことなんだろうけれど、そう自然になってしまったことに意味があって。 小屋のまわりの木にスピーカーを配置して、大音響でヴィヴァルディをみんなで聴くシーンは、とても美しかった。

  ハンター5.jpg きっかけは、自家用発電機が壊れたから。
    これを一緒に直していくうちに、何か伝わるものが。
 広大なタスマニアの光景を映すカメラもまた素晴らしいが(山というより森でしたね)、それだけでも終われないのが悲しいところ。 依頼主から「早くしろ」と催促の電話があり・・・話は否応なく転がり始める。 なにしろ登場した瞬間からあやしい気配を漂わせているサム・ニールの存在が、「こいつ、どっちに転んでもありだな(いい人でも悪い人でも可能性は半々)・・・」というのも地味に緊張感を持続させますし、誰でもいい役ではあれどウィレム・デフォーとのバランスを考えて重鎮を配したのは吉と出たと思います(そういえばこの二人、最近『デイブレイカー』でも共演してたわ!)。

  ハンター3.jpg タスマニアにも雪は降ります。
    しかしウィレム・デフォーはハンター的ニットキャップが似合わないと思う。
 強引に退路を断って、タスマニアタイガーとの一騎打ちに賭けるマーティン。
 まるでマーティンとタスマニアタイガーは、同じ存在であるかのようだ。
 その結末は・・・。
 なんとも切なくて悲しくて、やりきれない。
 けれど、だからこそマーティンはまったく別の自分の人生を生きることにしたんだろう。 その先がうまくいくかどうかはわからないが・・・しかし観客はいいほうに行ってくれと願うしかないのである。
 硬派な人間ドラマとして売り出してもよかったと思うが・・・なにしろウィレム・デフォーあっての映画、それは間違いない(ほぼ出ずっぱり、一人でこの映画を引っ張っていくのだから、彼の技量は素晴らしい)。
 そして観客は滅びゆく生き物、すでに滅んでしまった生き物に対して思いを馳せずにはいられない。 一体、どれだけの生き物たちをこれまで人間は破滅に追い込んだのだろう、自分たちの都合のために。 人間も、いつかは滅びゆく生き物だというのにね。

ラベル:外国映画 映画館
posted by かしこん at 23:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする