2012年02月26日

キツツキと雨



 『南極料理人』の沖田修一監督の新作なれども、前作ほどにあたし好みのキャストが



てんこ盛りというわけではなく、どうしようか悩んでしまったけれど、久し振りの役所広司



コメディ演技が見たくって。



 林業に携わる岸克彦(役所広司)は山間の村で息子と暮らしている。 そんな静かな



村に、ある日突然ゾンビ映画の撮影隊がやってきた。 何故か巻き込まれ、撮影の



手伝いをすることになった克彦は、いつしか優柔不断な新人映画監督の幸一(小栗旬)に



不思議な影響を与えていき・・・というような話。



   雨でも・・・きっと晴れるさ。



 冒頭。 まさかの役所広司、「はい?」の4連発に笑いが止まらなくなった。 また



クエッションマークがつくかつくないか微妙なトーンだから余計に面白い。 おかげで



ずっとニヤニヤしながらこの映画を見てしまいました。



 前作同様、はっきりしたストーリーがあるわけじゃなく積み重ねられたディテールが



勝負、みたいな映画。 克彦さんが自宅で五本指の靴下とかかとが高くて小さい



スリッパを履いているところを映すだけでこの人は健康に気をつかってんだなぁ、って



わかったりするし(料理やお弁当を作る手慣れた様子からも奥さん亡くしてからしばらく



経つんだな、とか)。 映画としてのクオリティというか磨かれ方というか完成度とか、



そういうものはランクアップしているような気がします。



 ゆるい映画ではあるのですが、そのゆるさもプロっぽくなっているというか。



 とにかく、役所広司がキュートすぎ!



   違和感なく、“きこり”。



 黙々と木を切り倒す・枝を払う、といった動きにもまったく無理・無駄がなく、朴訥な



きこりそのものを表現しつつ、映画撮影という全くの未知な世界に引き込まれる子供の



ようなよろこびも全身から発散。 いわばあたしのようなスレた客であれば「けっ!」と



足蹴にしたくなるようなベタな設定にも真剣に向かい合ってしまうわけで、思わず「スレた



客ですみません」とお詫びしたくなるほどである。



 で、最初は「使えない若者だな」と思った幸一が監督だと知ったからといって急に



態度が変わるわけでもなく、しかし監督には監督にしかわからない苦悩があるのだと



察しつつも自分の興味があるほうに盛り上がってしまう天然さ(温泉で幸一くんに近付いて



いく様子は爆笑!)。



   映画にエキストラで出ちゃったよ・・・に

 対するきこり仲間のリアクションも微笑ましい。 「よく見たら克彦さん、かっこいいもんな!」

 でもゾンビの役なんだけどね。 そのゾンビメイクも爆笑でした。



 で、克彦さん本人に励ますつもりはあんまりないんだけど、結果的にまわりの人たちは



励まされていく、という・・・なんともほのぼのな、実に日本的な映画でした。



 『南極料理人』から引き続き出演されている人も多く(助監督役は多分『南極料理人』で



いちばん損な役の人だったから、今回はちょっとおいしい役でよかったね、と思ったり)、



嶋田久作さんがカメラマンだったらそりゃ新人監督ビビるよ、とまたニヤニヤ。 やっぱり



料理や食事、食べるものがいいモチーフになっていたりして。



 克彦さんのつくった卵焼き、食べたい!



   でもただゆるいだけの映画ではない。

   「あっちが、60年物。 そっちが25年物かな」 「違いがわからないですよ」

  木としては、100年育って一人前。 人間なんてちっぽけなもの。



 しかし、いくら低予算映画だからって(いや、低予算だからこそ)ロケ地に住む人々の



協力を最初から得ておこうよ、というのがこの映画から得られる教訓か?(コメディだから



ほのぼのとしていられるが、実際自分が働く現場だとしたらこの泥縄式展開にあたしは



ぶちぎれているであろう。 段取り、大事です)



 エンディングは星野源の『フィルム』。 『11人もいる!』のはじけっぷりが記憶に新しい



星野源が普通に真面目なシンガーソングライターとして歌っているのがまたおかしくて



(いや、前からそうなんだけどさ)、曲も普通にいい曲なのでそれもやたらおかしくて。



 最初から最後まで、にやにやしたままスクリーンに向かっていたかも。


posted by かしこん at 10:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする