2012年02月11日

ヒミズ

 『冷たい熱帯魚』で「おおっ!」と思い、『恋の罪』で「あれっ?」と思った園子温監督の新作、ついに観に行く。 『恋の罪』が微妙だったのと『ヒミズ』の予告編が期待できる感じだったので、前作の不完全燃焼感をチャラにしてもらえるかと。
 中学3年生の住田祐一(染谷将太)は成長して普通の大人になることが夢。そんな住田くんに憧れる同じクラスの茶沢景子(二階堂ふみ)は、「あたしって、ストーカー?」という自覚を持ちつつ自分の部屋の壁に“住田くん語録”を貼り、毎晩暗唱していたりする。 そんなちょっと変わった二人の地味なラブストーリー、だったらよかったのでしょうが。

  ヒミズポスター.JPG 「生きろ」と、君が言った。

 冒頭、地震と津波で破壊された町並みが延々と映される。 住田くんの住んでいる場所はどこなのかはっきりしないのだが、東北というよりも北関東という感じ? だからその光景は住田くんの心的象徴としても描かれているわけで・・・でも、あたしが見たのはこんなもんじゃないという反発が生まれる。 わかっている、これはあの地震そのものを描いた映画ではないが、それでも映っているのは「ある程度整理された、多少なりとも安全が確保された場所」。 そんなものをゴーゴーと映して、「どうしても撮らなければならなかった」とか言ってんじゃねーよ!、と思ってしまうのだった。 テレビから流れるニュースやコメンテイターに「原発の危険性・反原発への流れ」を語らせるぐらいなら、その後続発していた余震をもっとストーリーの中に組み込めばよかったんじゃないの? そうすれば住田くんの捨て鉢な放浪に説得力がついたのでは(明らかに余震を意識してるのかなぁ、と思われた演出は、住田くんの父親がボート小屋に押し入ってきて、ひでーことを言って最初に住田くんがブチ切れそうになるシーンのみ)。
 以上、ストーリーと直接関係ないですが、北東北出身者の感想でした。

  ヒミズ7.jpg 普通上等!、と願う住田くんの父親は飲んだくれの借金持ち、「おめーなんかいらねーんだよ」と酔う度に言うが自分は全然覚えていない人でなし。 母親は別の男と遁走、「がんばってね」のメモと幾ばくかの金を置いて。
 残されたボート小屋で暮らす住田くんのまわりには、地震で家を失った人々がキャンプ生活をしており、年齢や立場を越えた交流が。 住田くんが学校に来なくなって以来、茶沢さんもボート小屋の運営に口を出すように。 が、そんな短い平和な時期も、住田くんの父親(光石研)の借金取り立て屋(でんでん・村上淳)がやってきて破られる。
 なんというのでしょう・・・ろくな両親に育てられてないから・愛情を注がれてないから、と決めつけるのもいかがなものかと思いつつ、住田くんと茶沢さんの会話って全然噛み合ってなくて、片方が言いたい放題言うって形。 気に入らなければびんたが飛ぶし、罵りの言葉が出る。 それを「思春期特有の」という言葉で片付けるのはあまりに実りがないではないか。 後半、二人の会話はちょっとずつ噛み合うようになってきますが、それは大きな犠牲を払ってからのこと。
 住田くんは髪型のせいもあるでしょうがまつ毛がばしばしで、彼がいつもどこか眠そうに見えるのはまつ毛が重いからまぶたが下がり気味なのでは! 茶沢さんもウザかわいい路線でがんばっておりますが、詩のフレーズを連呼するという手法、何度も使ったら新鮮味がなくなると思う。

  ヒミズ2.jpg そして悲しいのは、住田くんの悲惨な家庭環境についてまわりの人たちはみんな知っていて助けたいと感じているのに、茶沢さんの抱える家庭の問題(へたすりゃこっちの方がおそろしい)は誰にも知られていない、ということだ。
 そんな投げっぱなし、ある?
 雨の降らせ方もひどい。 明らかに放水機でどんどん降らせてます、な、いつも土砂降りで、人物はびしょぬれ、そして泥だらけ。 出ていく前、住田くんの母親が「放射能とかあるんだから、(外の被災者たちに)勝手に家のお風呂貸すんじゃないわよ」という台詞があったが、だったらその雨で濡れまくりな息子をちょっとでも心配したらどうよ、である。
 そんなダメ揃いの大人の中、住田くんのために一肌脱ぐのがテント住まいの夜野さん(渡辺哲)である。 やたら「住田さ〜ん」となついてくるかのような様はウド鈴木が「天野く〜ん」って呼ぶときの言い方に似てなくもない・・・夜野さん、精神年齢いくつ?

  ヒミズ6.jpg 以前は工場を経営していた方らしいが、地震と津波ですべてをなくし・・・。

 なんとなく夜野さんのキャラは本来住田くんの幼馴染か同級生という位置づけなような・・・(原作未読なので不明ですが)。 でも、“大人の気遣い”を最後に見せる役なので設定が変更されたのかなぁ。 ま、明らかに悪役で出てきたでんでんも途中で大人の余裕を見せていたり、“懸命な若者の未来を案じる気持ちは大なり小なりあるんだよ”ということなのでしょうか。
 そのわりには通り魔多すぎだよとか、変態さんたちに遭遇してばかりだよ、と愕然とするわけですが(日本ってそんなに壊れているの・・・と悲しくなってみたり)。
 そして教室で熱血教師の語る言葉に失笑していたのに、まったく同じ言葉を茶沢さんが住田くんに贈るのにもびっくり。 え、結局それ?!、みたいな。
 がんばるべきなのは住田くんなのか、茶沢さんなのか、それとも被災地のみなさんなのか。 なんか最初と最後だけそんな風にまとめられても・・・。
 「普通でいるのがいちばん幸せだよね」って考える若い世代が増えている今、住田くんや茶沢さんの様な家庭環境で育ってなくてもそう思う人たちが増えているんだから、そして解決されない放射能問題が「普通に結婚して、普通に子育て」を普通じゃないものにするのかもしれず・・・だから安易にこの映画のラストを“希望”とは捉えられないあたしなのだった。

ラベル:映画館 日本映画
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする