2012年02月02日

灼熱の魂/INCENDIES



 これは見たかったのである。 予告のあおりがすごくて、「アカデミー外国語映画賞は



この映画が獲るべきだった!」とか、「永遠に忘れられない映画」、「優れたミステリーと



ギリシア悲劇の融合」などと褒め言葉をちらつかされれば気にならないわけがなく。



 映画は、とても静かに始まる。 どこかわからない場所、何者かわからない人々の中、



髪の毛をバリカンで剃り落とされる少年の目だけが雄弁。



 ところと、多分時代も変わって北のある都市(途中でそれがケベックだとわかる)。



 双子の姉弟ジャンヌ・アルマン(メリッサ・デゾルモー=プーラン)とシモン・アルマン



(マキシム・ゴーデット)は二人の母を秘書として雇っていた公証人(レミー・ジラール)の



もとに呼び出される。 母親の遺言が読み上げられるためだ。 ふたりの母親ナワル・



アルマン(ルブナ・アザバル)は、ジャンヌには「父親を探してこの手紙を渡して」、



シモンには「あなたたちには兄がいる、彼を探してその手紙を渡して」というメッセージと



手紙が託される。 財産は折半、家財道具などは仲良くわけてほしい、という普通の



“遺言”とともに。 シモンはそれまでの自分の母親の言動(まるで世捨て人のような



感じ?)に腹が立っていたらしく、こんな遺言なんか知るか、と拒否。 しかし何かを



感じていたらしい娘のジャンヌは、手紙とともに母親が大切にしていた十字架を身につけ、



母の故郷“南部”に向かう。 二人には父親にも兄にも心当たりはないけれど。



   お母さん、あなたが生き続けた理由を教えてください



 ナワルとジャンヌは二人とも面差しや雰囲気の似た女性で、ジャンヌを追っていたの



かと思ったら次のカットからは若き日のナワルに切り替わっていたりする。 それを



説明なしでするので最初は混乱するけれど(似てるから、どっちがどっち?、という



とまどいもあり)、次第に慣れる。 が、慣れるが故に、これは観客に向かって平行に



描かれているだけなのか、ジャンヌが知りえたナワルの過去なんだろうか、とハラハラ



することに。 というかこの国はどこなんだ? 名誉の殺人が許される地域? でも



キリスト教徒でイスラム教徒と対立? ・・・しばらくしてレバノンだとわかりますが、



映画的には特に国や土地は限定していない感じがしなくもない。 内戦があって、宗教



対立があって、というところにならどこにでも起こることとして描いている、というべきか。



 ナワルの過ごしてきた(という言葉さえ似合わない)人生は、とにかく過酷。



 それをすべてではないにしろ知りえたから、最初反目していた双子は協力し合うと



いうか一緒に母親の遺言に向かい合うことになったんだろう。



 父と兄を見つけたとき、母の死の引き金になった衝撃を知り、その意味するところを



知ったとき、ジャンヌはこの世のものとは思えない悲鳴を上げる。 それが、この映画の



衝撃のすべてといっても過言ではない。



 しかし、ナワルは手紙に書いている。 それでも愛しているのだと、だからこそ憎しみを



連鎖させてはならないのだと。 このへヴィさは、なかなか類を見ないです。



 あえてナワルは双子に真実を伝える必要があったのか?、という感覚もなきにしも



あらずですが、知って乗り越えてもらうことが目的だったのだろうと解釈。



 この映画はネタバレ厳禁!



 予備知識なしで見てこそ、ジャンヌの“悲鳴”に共感できます。


posted by かしこん at 04:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする