2012年02月29日

J・エドガー/J. EDGAR

 J・エドガーといわれて、はじめは誰のことかわからなかった・・・エドガー・フーバーと言ってくれたらわかったのに。 つまりタイトルからも、公人ではなく私人としての彼を描きますよ、という監督クリント・イーストウッドからのメッセージなのか。 レオナルド・ディカプリオが20代から80代までの彼を演じています。 というわけでアメリカがまだ暗黒の時代を長々と走り抜ける私的な叙事詩といったところか。
 多分『グッド・シェパード』の後? 『パブリック・エネミー』と一時期かぶり、このあとに『大統領の陰謀』や『フロスト×ニクソン』がくる・・・という時代かと。 実はこの映画に対して事前情報を持たぬまま行ったので、エドガーの母がジュディ・デンチ、エドガーの秘書がナオミ・ワッツという豪華配役に動揺、ついつい期待してしまいます。

  Jエドガーポスター.jpg これは、いくつぐらいのときであろう・・・。
 「8人の大統領に恐れられた男」みたいな予告コピーがありましたが、実際エドガーに手こずらされている場面が何度もあるのはロバート・ケネディぐらいです。 しかもそのロバート・ケネディが『バーン・ノーティス』のマイケルでちょっと笑ってしまったんだけど、結構似てるかもと思い直す(でもあたしには『ケネディ家の人々』のバリー・ペッパーが印象深いので彼でもよかったなぁ、と)。
 若き日のエドガーはとても切れ者で、コンピューターのない時代にコンピューター的システムをアナログ世界で構築しようと孤軍奮闘。 国会図書館の図書検索システム(書籍カードから場所を探すあれですね)をつくり上げたのは彼だと知ってびっくり! そういうセンスがある人なのでしょうが、ファイルキャビネットの中身をただABC順や事件順にするのではなく“独自の理論で”ファイルわけをし、読み方を知っている人しか閲覧できなくさせた、というのはまさにパスワードの手法。 情報セキュリティの感覚が徹底してる! 犯罪者の指紋収集にも並々ならぬ情熱を見せ、科学捜査の基礎を確立するために費用は惜しまない(上司は渋い顔をするが、いつも押し切られる)。

  Jエドガー3.jpg そしてFBIには、自分の美意識にかなった人間しか入れない。 ダークスーツのイメージはここから。
 その成果がエイフィス(現在アメリカで使われている犯罪者探査システム)につながっているわけですね!
 というわけで彼の功績はそれだけでも十分素晴らしいと思うのだが、偉大なる母にもっと認めてもらいたい気持ち、まだ司法省の役人だった若き日に、当時の上司の家に爆弾が仕掛けられたことで燃え上がった共産主義憎しの気持ちは一生涯消えなかったらしく、晩年の彼の判断を狂わせることに(というか時代が変わったことを認めたくない気持ちなのか)。 引き際を間違える大物は、つらい。
 それにしても、序盤から漂うエドガーの同性愛嗜好に、腐女子ではないあたしもドキドキしてしまったんですけど! いえ、露骨なシーンがあるわけではないのです。 些細な目くばせ、言葉の選び方・・・などなど、そこに“抑圧された感情がある”ということにどきどき。 時代はまだ同性愛を容認してはいないし、まして司法省からFBIの初代長官になった男である。 そんなスキャンダルは赦されるわけないわけで・・・なおかつエドガーは自分がゲイであることを自分自身でも認めようともしていないという屈折感。 『ミルク』の脚本家の方だそうで・・・さすが!

  Jエドガー2.jpg 上に冠する者の孤独だけでなく、自分を受け入れられないことからくる孤独も。
 そんなエドガーに出会ってしまい、弁護士志望だったけどエドガーへの献身の道を選ぶクライド・トルソン(アーミー・ハマー)は生涯をエドガーの側近として、ときには彼に罵倒され、ひどい目に遭いながらも素直になれない“恋人”への想いをあくまでまっすぐ持ち続けており、かなりの健気さに胸がキュンキュンしてしまう。
 実は男性陣の老化特殊メイクは結構無理が見える部分があって寂しいのですが、ミス・ヘレン・ギャンディ(ナオミ・ワッツ)の老けメイクは見事というしかなく、老化しているにもかかわらず美しい・・・やはり、女優が相手ではメイクも一味二味違うのか?!
 結婚せずにエドガーに尽くしたミス・ギャンディ、若い頃エドガーにプロポーズされているのだが「仕事に生きたいので」と断っている。 彼女の背景はまったく語られることはないけれど、知りたくなりました。 エドガーとトルソンの関係は知っていただろうに、何も言わず、ただ忠実な秘書であり続けた姿には「女性だから」というだけで仕事をさせてもらえなかった時代の意地もあるのかもしれません。
 常に「ミス・ギャンディ」と呼びかけるエドガーも、ときには「ヘレン」と呼ぶときもあって。 それが厳格で不器用な上司の心の内を見せるときならば、この人のために働こうと思うのかもね。
 FBIの地位向上のために何でも利用するエドガーのやり方が反発を買うのは当たり前だし、敵もたくさん作っただろうに、トルソンの忠告も聞かずにブルドーザーのように進む・・・自分と主義主張が同じか近くなかったら絶対に一緒に仕事をしたくないタイプ。
 ミス・ギャンディえらすぎます!
 自分の提唱する科学捜査の見せどころ、と張り切ったリンドバーグ子息誘拐事件は今では冤罪という見方が強まっているだけに(そういう説はあるよと匂わせてはいるものの)、もう少し突っ込んだ表現をしてもよかったのではないかしら。 知らない人にはよくわからないままだと思う。
 どちらにせよ、回想録を執筆させるエドガーにとっては過ぎた事件、利用し終わった事件という扱いなのかもしれないが・・・。
 なんとも物悲しくなる映画だった。
 ディカプリオ、これでオスカーの主演男優賞にノミネート、の声も聞こえてましたけど結局ノミネートされなかったのは、老けこんでる時期の演技がまるでマーロン・ブランドにしか見えないからじゃないかなぁ、と思ったり。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 04:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月28日

第84回アカデミー賞授賞式



 なんだかんだで、決まりました。



 主要結果は以下の通りです。



■作 品 賞 『アーティスト』



■監 督 賞 ミシェル・アザナヴィシウス (『アーティスト』)



■主演男優賞 ジャン・デュジャルダン  (『アーティスト』)



 主要3部門を『アーティスト』が独占する形に。 あまりフランス人に見えないジャン・



デュジャルダンはジーン・ケリーやジェイムズ・スチュワートのようないかにもハリウッド



正統派男優のような雰囲気を醸し出し、そして監督やプロデューサーのコメントは



アメリカ映画黄金時代を支えた先人たちの賛辞であふれていた。 これ、台湾の『海角



七号』を日本人が見たら泣かずにはいられないように、アメリカ映画人のハートを撃ち抜く



作品だったような気がする。 だから保守層の多いアカデミー会員の多くが一票を投じた



のだろう。



■主演女優賞 メリル・ストリープ (『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』)



 メイクアップ賞で『マーガレット・サッチャー』が受賞したのでメリルはないかと思って



いた。 演技というよりもそっくりさん的なりきりぶりをメイクで評価したのかと。 でも、



授賞式始まる前から「メリルが獲って当然・そろそろあげてもいいんじゃないの」的空気が



満ち満ちており、ノミネート発表後からどのような工作が行われたか非常に気になる



ところです。 でも、あれだけのベテランでも、やっぱりもらえればうれしいんですね。



 主演女優賞の発表が主演男優賞よりも、監督賞よりも後、という進行具合で「あぁ、



メリルなのね・・・」とわかってしまいましたよ・・・(かなしい)。 ルーニー・マーラや



ミシェル・ウィリアムズにはまだまだこの先がありますからね!



■助演男優賞 クリストファー・プラマー (『人生はビギナーズ』)



 そんな中、あたしの大本命のクリストファー・プラマーの受賞はめでたい!



 またスピーチも素敵だ! ノミネートされた他の俳優たちにもエールを送り(マックス・



フォン・シドーにだけ「ディア・マックス」と呼びかけていたのが微笑ましく、マックス・フォン・



シドーも穏やかな笑顔で拍手を続けていた)、これが長編2本目であるマイク・ミルズ



監督への賛辞、共演者ユアン・マクレガーをも称えつつ、ちゃっかりお茶目にしめくくると



見せかけて最後には妻への愛と感謝を。 クリストファー・プラマーの奥さん、すごく美人!



■助演女優賞 オクタヴィア・スペンサー (『ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜』)



 名前を呼ばれた瞬間、腰が抜けて立てなくなったみたいなオクタヴィア・スペンサーが



超キュート。 三人のうちだれか獲るだろうと言われていましたが、まさにその通りに。



女性としては、『ヘルプ』を是非見たいです。 ただ、ノミネート時に情報がなかった



『アルバート・ノッブス』がすごくあたしのツボにはまりそう。 その昔、カフェの給仕として



働くために男装しなければならなかった女性の物語、ですよ! グレン・クローズや



ジャネット・マクティアがリアルに男装! みたい、これは絶対見たい。



■脚 本 賞 ウディ・アレン (『ミッドナイト・イン・パリ』)



■脚 色 賞 アレクサンダー・ペイン、ナット・ファクソン、ジム・ラッシュ

          (『ファミリー・ツリー』)



 ゲストの三谷幸喜が、日本の映画賞も脚本賞と脚色賞とわけてほしい!、と吠えて



いたのが印象的。 あたしも、そう思います。



■美術監督賞 『ヒューゴの不思議な発明』



■作 曲 賞 『アーティスト』



■主題歌賞 “Man or Muppet”(『ザ・マペッツ』)



■撮 影 賞 『ヒューゴの不思議な発明』



■編 集 賞 『ドラゴン・タトゥーの女』



 『ドラゴン・タトゥーの女』は結局一部門でしたが、フィンチャー監督お得意分野で



よかった。 編集賞のみならず、スタッフに与える賞の受賞者もみなさんそこそこ



いいことをおっしゃる。 裏方であろうが表彰するときは一緒、みたいな感じも日本



映画界にはほしいところです(でも日本の職人気質のスタッフさんたちは結構口下手



だったりするのだろうか・・・意外に木村大作さんクラスがごろごろいるかもしれんし、



日本アカデミー賞運営委員会?は是非参考にしてほしい)。 



■音響編集賞 『ヒューゴの不思議な発明』



■音響録音賞 『ヒューゴの不思議な発明』



■衣装デザイン賞 『アーティスト』



■メイクアップ賞 『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』



■視覚効果賞 『ヒューゴの不思議な発明』



■長編アニメーション賞 『ランゴ』



 ま、ここは順当に『ランゴ』。 ゴア・ヴァビンスキー監督にはやりたいことやって、また



普通の映画の世界に戻ってきてもらいたいと思う(両方やるというのならそれはそれでよし)。



■短編アニメーション賞 『モリス・レスモアの不思議な空飛ぶ本(原題)』



■長編ドキュメンタリー賞 『Undefeated(原題)』



■短編ドキュメンタリー賞 『Saving Face(原題)』



■短編実写映画賞 『The Shore(原題)』



■外国語映画賞 『別離』(イラン)



 外国語映画賞は、今回のノミネートと関係なくいち早く日本での公開予定が組まれて



いたので、多分これだろうと予想(いい作品であろうと期待)。 受賞スピーチでは「戦争や



政治の影に隠れてしまっているイランの文化が世界に広まるのは光栄なことです」みたい



なことをおっしゃっていた。 イランの前はペルシャ。 日本だってここから文化的な



影響は受けているもの、応援したくなりますよね。





 『マネーボール』のジョナ・ヒルくんがメガネをはずしてタキシード着たら意外にハンサム



だったり、いつもはじけたことをするベン・スティラーが初プレゼンターではしゃぎまくる



エマ・ストーンをグチ混じりになだめる役だったりしたのも面白かったし、なによりウィル・



フェレル&ザック・ガリフィナーキスがほぼ無表情で息の合ったぐだぐだぶりを見せて



くれたのがよかったです。



 メモリアル・トリビュートは文字がいつもより見にくかったけれど、ピーター・フォークの



出現のさせ方にたまらない愛情を感じました。



 特にサプライズのない授賞式だったけど、だいたいこんなもんなのかな?



 ま、所詮お祭りですので、評価は自分で見て決めたいのです。 それでも、これだけの



作品がこれから日本で公開されるかもしれない、という「ショーケース博覧会」のような



気もしてきている今日此頃。



 あとはスピーチを聞いて、好きな役者さんをより好きになる場、ですね。



 さ、見てない映画がたまってきたぞ! 行かねば!!


posted by かしこん at 03:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画関連情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月27日

普通に面白いですよ!



キング&クイーン/柳広司



 読み始めたら結局止まりませんでしたよ。 なんでですかね。



 あたし自身はチェスはしないのですが(というか一対一のボードゲームはオセロを



含めて基本的に苦手です)、それを題材にした物語は大概好きだったりするのが



不思議なものです。



   内容はこんなにあやしい感じじゃないのですが。



 愛想のない女性バーテンダー、実は元SPという設定からついつい真木よう子を



イメージして読んでしまったり(途中から「違うな」と自主的に変更しますが)、アメリカ



大統領とか出てくるような陰謀を期待してたら意外にもこじんまりとした事件だったとか、



多分この作品を面白くない!、と言ってしまう人はいるだろうなぁと思うのですが(実際、



アマゾンでは予想以上の低評価)、あたしは普通に面白かったんですけどね・・・。



 何故か。 チェス盤の上には世界が(もしくは宇宙が)広がっている、ということが



ちゃんと書かれてあるから、です。 いい面も悪い面も含めて。



 『ジョーカーゲーム』以降、この人に対する期待値が高くなってしまっているのも



原因かと・・・「トリックが甘い」みたいなことをおっしゃる方もいますが、だったら『葉桜の



季節に・・・』だってなしになってしまうのではないかと。  ただ、どうしてもこの著者の



性格上、話をあっさり終わらせたい傾向が感じられるので、もうちょっとキャラクターの



背景を書き込んで500ページ越えぐらいにしてもらったら、もっと物語に厚みが出たの



ではないかという気もします(文庫は実質360ページほど)。



 あたしも、もっと読みたかったですし。





十蘭レトリカ/久生十蘭



 しまった、他のシリーズをまだ探していなかった・・・次に本屋に行くときは、忘れずに。



 それにしても、結構前に物故した作家の、自分がまだ読んだことのない短編集という



のはわくわくしてしまいますねぇ。



   また、程よい薄さでさらっと読めてしまう。



 数ページから数十ページ、長さも内容もバラバラな8編。



 幻想文学タッチのコントから不思議な味わいのユーモア小説、かと思えば壮絶な



残酷話(ミステリではない)がきて、なんとなく浄瑠璃や浪曲にありそうな人情話が



来てみたり。 共通するのは久生十蘭独特の“語り”の面白さ、そして言葉のリズム。



ただ美文調は今回の作品集では抑え目でしたね。 『湖畔』や『ハムレット』で過去に



ノックアウトされた身としてはちょっと物足りず・・・だから他も読もうと思ってしまうの



でしょう。







 それと、私事ですが・・・実家の妹からメールがきまして。



 「戸籍謄本を取り寄せたら、知らない妹がいるんだけど」



 ということで・・・「へー」という感想しか出てこないあたし。



 遥か昔に両親が離婚して以来ずっと母親のもとで育ったあたしと妹にとって、



遺伝子上は父親ですが結構前から「いないも同然」の存在なんですよね。 何してるか



知らないし、興味もないし。 まぁ向こうが連絡してこないのは新しい家庭ができたから



なのかもしれないし、こっちはこっちで別に用はないし、下手に連絡して向こうに波風



立てる気もないしってことで一応気を遣っているかのようですが、やはりどこかで「もう



この人はあたしには関係ない」と判断したからでしょう。 だから二十年以上たって、



今更半分血のつながった妹がいると知ったからといって何の感慨もないのです。



 「一切興味がないんだけど、まずいかな?」と妹に返事したならば、「いいんじゃない、



私もそんな感じ」という返答。



 血は水よりも濃し、とか、親は子供のことを忘れない、子供もまた親のことを忘れない、



とかいろいろ言われますが、人それぞれです。 子供は連絡もしてこない親のことは



忘れます。 そして親だからといって子供のことを考えている、というのも幻想です



(だからこそ虐待による子供の死亡事件が減らないのでは)。



 生みの親より育ての親、血のつながりだけが家族じゃない。



 そういう考え方のほうが広まってほしいなぁ、とあたしは思っているのですが。


posted by かしこん at 05:49| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月26日

キツツキと雨



 『南極料理人』の沖田修一監督の新作なれども、前作ほどにあたし好みのキャストが



てんこ盛りというわけではなく、どうしようか悩んでしまったけれど、久し振りの役所広司



コメディ演技が見たくって。



 林業に携わる岸克彦(役所広司)は山間の村で息子と暮らしている。 そんな静かな



村に、ある日突然ゾンビ映画の撮影隊がやってきた。 何故か巻き込まれ、撮影の



手伝いをすることになった克彦は、いつしか優柔不断な新人映画監督の幸一(小栗旬)に



不思議な影響を与えていき・・・というような話。



   雨でも・・・きっと晴れるさ。



 冒頭。 まさかの役所広司、「はい?」の4連発に笑いが止まらなくなった。 また



クエッションマークがつくかつくないか微妙なトーンだから余計に面白い。 おかげで



ずっとニヤニヤしながらこの映画を見てしまいました。



 前作同様、はっきりしたストーリーがあるわけじゃなく積み重ねられたディテールが



勝負、みたいな映画。 克彦さんが自宅で五本指の靴下とかかとが高くて小さい



スリッパを履いているところを映すだけでこの人は健康に気をつかってんだなぁ、って



わかったりするし(料理やお弁当を作る手慣れた様子からも奥さん亡くしてからしばらく



経つんだな、とか)。 映画としてのクオリティというか磨かれ方というか完成度とか、



そういうものはランクアップしているような気がします。



 ゆるい映画ではあるのですが、そのゆるさもプロっぽくなっているというか。



 とにかく、役所広司がキュートすぎ!



   違和感なく、“きこり”。



 黙々と木を切り倒す・枝を払う、といった動きにもまったく無理・無駄がなく、朴訥な



きこりそのものを表現しつつ、映画撮影という全くの未知な世界に引き込まれる子供の



ようなよろこびも全身から発散。 いわばあたしのようなスレた客であれば「けっ!」と



足蹴にしたくなるようなベタな設定にも真剣に向かい合ってしまうわけで、思わず「スレた



客ですみません」とお詫びしたくなるほどである。



 で、最初は「使えない若者だな」と思った幸一が監督だと知ったからといって急に



態度が変わるわけでもなく、しかし監督には監督にしかわからない苦悩があるのだと



察しつつも自分の興味があるほうに盛り上がってしまう天然さ(温泉で幸一くんに近付いて



いく様子は爆笑!)。



   映画にエキストラで出ちゃったよ・・・に

 対するきこり仲間のリアクションも微笑ましい。 「よく見たら克彦さん、かっこいいもんな!」

 でもゾンビの役なんだけどね。 そのゾンビメイクも爆笑でした。



 で、克彦さん本人に励ますつもりはあんまりないんだけど、結果的にまわりの人たちは



励まされていく、という・・・なんともほのぼのな、実に日本的な映画でした。



 『南極料理人』から引き続き出演されている人も多く(助監督役は多分『南極料理人』で



いちばん損な役の人だったから、今回はちょっとおいしい役でよかったね、と思ったり)、



嶋田久作さんがカメラマンだったらそりゃ新人監督ビビるよ、とまたニヤニヤ。 やっぱり



料理や食事、食べるものがいいモチーフになっていたりして。



 克彦さんのつくった卵焼き、食べたい!



   でもただゆるいだけの映画ではない。

   「あっちが、60年物。 そっちが25年物かな」 「違いがわからないですよ」

  木としては、100年育って一人前。 人間なんてちっぽけなもの。



 しかし、いくら低予算映画だからって(いや、低予算だからこそ)ロケ地に住む人々の



協力を最初から得ておこうよ、というのがこの映画から得られる教訓か?(コメディだから



ほのぼのとしていられるが、実際自分が働く現場だとしたらこの泥縄式展開にあたしは



ぶちぎれているであろう。 段取り、大事です)



 エンディングは星野源の『フィルム』。 『11人もいる!』のはじけっぷりが記憶に新しい



星野源が普通に真面目なシンガーソングライターとして歌っているのがまたおかしくて



(いや、前からそうなんだけどさ)、曲も普通にいい曲なのでそれもやたらおかしくて。



 最初から最後まで、にやにやしたままスクリーンに向かっていたかも。


posted by かしこん at 10:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月25日

睡眠って大事、(今更ながら)。



 このところ、ずっと舌が痛かったのである。



 左側の奥、ある一部だけが。 何かを食べたり飲んだりするだけで鋭い痛みが走り



かなりうんざり気味。 しかし口内炎とは違うし、栄養バランスが極端に偏った食生活が



続いたわけではないし(特にこれまでと変わったところはないように思えたし)、意識して



野菜や植物性たんぱく質をとるようにしているし、最近は手足の末端冷え性解消のため



ビタミン剤も飲んでいる。 多分、栄養バランスの問題ではない。



 確認したが、舌に外傷があるわけでもない。 となると、原因は何か?



 そういえば、「体調の不調が口腔内にあらわれる」といった内容に記事の見出しを



どこかで見たような。



 ここのところ、いつも以上に睡眠不足だったのである。



 夜中の1時前後にビデオを見ながらうとうとしてしまったりして、ハッと気づくと



一時間後だったりする。 そのまま続けて布団で眠れればよいのであるが、眠気が吹っ



飛んでしまうし他にもすることがあるしで、次に寝るのは朝5時〜6時過ぎ。 で、8時の



目覚ましで無理矢理起こされる。



 そんなのがしばらく続いていたので・・・さすがにちょっとしんどかったのである。



 原因は、これか?



 ということで、土曜日、死んだように眠ってみる(薬を多めにのんでみた)。



 10時間以上、寝た・・・。



 で、起きぬけに野菜ジュースを飲んでみると、舌が痛くないのである!



   散歩がてら、ミスドで

            新しいチュロを食べてみた。 おかわり自由のカフェオレとともに。



 もしゃもしゃと固めのものを食べているにもかかわらず、舌は痛くない! 多少の



違和感はあるけれども、昨日までのつい顔をしかめてしまうような痛みはまったくない。



なんじゃこりゃ。



 眠っている間に、意識せぬほど身体の隅々まで修復してくれているってことなのか、



それとも自分の不調の意味に気づけていない本人に対しての警告なのか?



 睡眠の意味・意義は、深いなぁ。



 しかし、ミスドでチュロをものすごく久し振りに食べましたが、こんなに周囲が硬かっ



たっけ? 内側はもう少しもっちりしてたイメージがあったけど、本体そのものが記憶より



細い。 おまけにコーティングされてるチョコがバラバラと落ちて食べにくいです。



 で、長居のついでに(というかこっちが目的ですが)、『日出処の天子』完全版4・5巻を



読みふける。



   話も佳境でございます。



 厩戸皇子って石上の斎宮を陥れるのにこんなに手間暇かけてたっけ?、と自分の



記憶の中の誤差を発見したりして。 自分の記憶に思いこみのシーンを追加してたかも。



この先はどうなるのか(既に過去に何度も読んでいるにもかかわらず)、あらためて



ドキドキしてしまうのは何故なんでしょう。 径年後の再読(再々読? 複数回の再読も



含む)にも耐えられるのがさすが「名作」と呼ばれる作品の資格なのかも。



 それにしても大判で、カラーページ全部ついて、というのはうれしいですなぁ。



 一ページ、原稿が紛失しているので連載誌からの複製というのはありましたが(多分



カラーページは他の連載ページとは別に入稿するから、紛失が一枚で済んでいるのが



ある意味奇跡というか、作者の原稿管理がしっかりしているんだなぁ、と感銘を受ける。



自分の“作品”だから当然だけど、編集者や印刷所ではそういう意識が低い人はいるし。



仕事の資料や書類をなくすバカはどこにでもいるからな)。



 完全版は7巻で完結予定だそうなので、あと2冊! 発売は2ヶ月後です。


posted by かしこん at 19:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記のようなもの | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月24日

サラの鍵/ELLE S'APPELAIT SARAH



 やっと見に行ってきました。 シネリーブル神戸は一週間単位で上映時間が



がらりと変わることがよくあり、上映終了もいつ決まるかわからなかったりするので



毎週タイムテーブルをチェックするのですが、こっちの予定も必ずしもうまくいくとは



限らないのが困りもの。 2月からはまたレイトショー設定がなくなり、大変困って



おります。



 しかしこの映画、公開から結構な日数がたっているのにいちばん大きいスクリーンで、



しかも客の入りもなかなかよい。 口コミで広がっているのか!、とちょっとうれしく



なってみた。 内容は・・・うれしいものではないですが。



   ただ、伝えたい。 決してあなたを忘れはしないと。



 『黄色い星の子供たち』でも描かれたヴェルディヴ事件を、当時の視点だけではなく



現在から掘り起こしていくパートにわかれて真実に迫る、という先日見た『灼熱の魂』と



似た構成。 でも当然ながら、手触りはまったく違う映画になっております。



 アメリカ人ジャーナリストのジュリア(クリスティン・スコット・トーマス)は結婚して現在は



パリで暮らし、雑誌のパリ特派員という形で仕事をしている。 夫の家族が住んでいたと



いう古いが改装されたアパートに引っ越し、新たな生活を始める中、若者がまったく



知らない<ヴェルディヴ事件>を10ページの特集記事にするという約束を編集長と



取り付ける。



 一方、1942年のパリはナチス占領下。 早朝のユダヤ人一斉検挙によってヴェル



ディヴ競輪場に連れてこられた少女サラは、アパートのクローゼットに弟を隠してきて



いた。 鍵をかけたまま。 そして悲劇はつづく。



 サラ役の少女(メリュジーヌ・マヤンス)はどこかで見たことあるような気がするん



だけど・・・思い出せない。 つまりそれくらいうまいのです。



 屋内競輪場での場面はかなりの部分『黄色い星の子供たち』と酷似しており(だから



どちらの映画も、史実の再現に気を配っているということなのかも)、医療テントの中には



メラニー・ロランやジャン・レノがいそうな気がして仕方がなかった。



   そんな不思議な既視感。



 編集部で青年が「自分の国のことなのに知らなくてすみません。 同世代を代表して



お詫びします」みたいなことを言っていたのがちょっと面白かったんだけれど、しかし



自分ももはや“「わからないです」と言って許される若い者”の世代ではないのだと



気づかされて「しまった!」と思う。 あぁ、人生勉強だなぁ。



 サラのパートは本人の回想というわけではなく、ジュリアが知り得ることの断片が



繋ぎ合わされたものなので『黄色い星の子供たち』のように当時の悲惨さ・苦しさが



前面には出てこない。 むしろジュリアのパートのほうが比重が高いことに少し驚く。



   ジャーナリストという職業のせいも

        ありましょうが・・・いつしか調べることをやめられなくなるジュリア。



 フランス人にとって、当時を記憶するフランス人にとってヴェルディヴ事件はやはり



思い出したくないもの。 ましてそれを自分が(子供の頃だったとはいえ)見ていた・



関係していたことを語りたくない気持ちはわかるし、でもそういうことがあると知って



しまったジュリアが相手を傷つけるとわかっていても“真相”に辿り着きたいという欲求も



わかる。 その結果自分もまた深い傷を負ってしまっても、それでも知りたいのだ。



 好奇心、猫を殺す。 そんなことわざを知ってはいるけど止められない。



   美しい、心洗われる場面もあるのですが

                ・・・それもいつしか痛みとセットになる。



 あたしは「命が続いていくのならば、それでいいじゃないか」的まとめをあまり容認



しません。 いやいや、それでも個人の思いはあるじゃないか!、と考えてしまうから。



 けれど、血縁とかまったく関係なく、誰かから受け取ったと思うことをまた誰かに



手渡したいと考えることは、寿命の限られた生物でしかないあたしたち人間にとって



時間を縦軸で考えたときに唯一できることなのかなぁ、と思ったりして。 でも、伝えたい



内容は吟味されなければならないですがね。



 クリスティン・スコット・トーマスのベストアクト!、と評されてるみたいですが、勿論



悪くないんだけど、『ずっとあなたを愛してる』のほうがあたしは入り込み方が半端



なかった気がして、そっちのほうが好きですが、どちらにせよすごい女優さんです。



 知らなかったけど、実は原作が新潮クレストブックスから出ていた・・・しかも表紙が



ハンマーホイだよ・・・どうしよう、ほしいかも、とすごく悩んでおります。


posted by かしこん at 04:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月23日

もかむすをいただきました



 おすそわけで、「もかむす」をいただきました。



 実は以前食べたことがあるが・・・タイミング的に写真に収めたことがなかったので。



 もかむす=もなかのおむすび、ということでしょうな。



   カレー味



 米粉でできたもなか状の皮でおむすびをはさんでおります。



 勿論、ごはんからの湿気が映らないように、ごはんともなかの皮の間にはフィルムが



入っております。 だからパリパリ食感!



 他にもいろいろ味があったり、更に具が豪華なタイプや、ライスペーパーにくるんで



クレープ状になっているタイプもあったような。



 米粉利用の新しい提案って感じ?



 そこそこ前には神戸そごうの地下にも出店したのだけれど、いつの間にかなくなった



・・・今はどこにあるのかしら(ハーバー?)。


posted by かしこん at 04:19| Comment(0) | TrackBack(0) | ごはん・お茶の時間 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月22日

どこまで本気で、どこまでギャグか



殺人者の健康法/アメリー・ノートン



 ノーベル文学賞を受賞したこともある大家が、奇病にかかり余命は短いと噂が



流れる。人嫌い・インタビュー嫌いの大作家から、“自叙伝”を語らせることは



できるのか。 世界中から我こそはとジャーナリストが名乗りを上げるが、一人、



また一人と玉砕していく・・・という話。



   実は、ほぼ会話劇です。



 底意地の悪い老作家に撃退されるジャーナリストたちの姿は皮肉たっぷりに描写され、



インタビューしようというのにその著者の作品を読んでないとか最低限のマナーもなって



いないことが露見する。 どの世界でもちゃんとしていない人はいるなぁ、ということ



ですが、この老作家もかなりの曲者で、前半は「これはほとんどコメディですか?



ブラックジョークですか?」という感じ。 中盤からある女性ジャーナリストが登場し、



彼女と作家とのやりとりはこれまでとはまったく違う緊迫したものになってから、作品の



空気もがらりと変わります。



 これはモダンホラーなのか!、と盛り上がってきたのに、そのオチは・・・。



 ちょっと肩すかしというかあっけないというか・・・でもそれがフランス風なのかもなぁ、



と感じるようにはなりました。





悪魔の紋章/江戸川乱歩



 あー、読んじゃった。 なんかもったいないけれど、読みはじめてしまったら先を



めくってしまうのだから仕方ないじゃないか。



   華麗なる、復讐譚。



 この作品だけではないのだけれど、乱歩の作品にはよく「八幡の藪知らず」という



表現が登場する。 藪が深すぎて道に迷うとか、そのように人工的につくった藪で



見物人を惑わす見世物、とあたしは解釈していて慣用句的に使ってしまっていたの



だが、かつて仕事で、人の名前を電話で確認するときに「幡さん」の文字を伝えたい



のだが上手く伝えきれていないと感じておられた相手に、あたしは「わかります、



『八幡の藪知らず』の八幡ですよね」と何気なく言ってしまってさらに相手を混乱させた



ことがある(その後、「八幡製鉄所と同じ字ですよね」、で決着)。 そのとき初めて、



あたしは『八幡の藪知らず』が日常語でないことを知ったのである!



 と、このように、乱歩作品で育った者には独特の慣用句が存在すると思う(多分、



これも笑える話であろう、あたしは本気だったから通じないことに困惑したが)。



 創元推理文庫の解説では、「いわゆる乱歩の通俗小説は本格推理物という観点からは



レベルが低いが、“笑える”という観点からは今でも高い娯楽性を保っている」的なことが



書いてある・・・若干、言葉足らずかなぁとも思えるのだけれど、「一生懸命やっている



本人の姿を、傍から見れば妙に滑稽に思える」というところがポイントなのだと思う。



ある種、シュールなコントに通じるような。



 でも、そんな手間暇かけた復讐劇が、あたしは好きなんだからしょうがない。


posted by かしこん at 02:51| Comment(2) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月21日

今日は3冊、と。



 新聞の下の新刊広告を見て、小躍りして本屋へ向かった。



   キング&クイーン/柳広司



 ハードカバー出たときに(しかもジュンク堂に並んでいたのはサイン本だった)、



どうしようか悩んだ本が、もう文庫に!



 チェス小説といえばあたしにとっては『8−エイト−』が白眉であるし、あれ以上の



作品はそう出てこないと思うので過度に期待するつもりはないが、柳広司的世界が



広がってくれればそれで満足である。



   エクソシストとの対話/島村菜津



 かつて『フィレンツェ連続殺人事件』を読んだときから、イタリアのルポなら島村菜津さん



だな!、という気がしていた。 そこに現れたこれ、買わずにいられようか。



 映画『ザ・ライト〜エクソシストの真実』で描かれていたように「悪魔憑き」は精神医学の



ジャンルに近づいている。 「悪魔払い」とは精神科医とはもっと強い絆を築ける(信仰心の



共有が可能な)相手におこなわれる心理学的治療である、というようなことをよりはっきり



言語化していただけるのだと思う。 楽しみ。



   グイン・サーガ・ワールド4



 いきなり始まったかに思えたこのプロジェクト、これで第一弾終了、だそうである。



 買ってはいるのだがどこから手をつけていいのかわからないあたしのような人間は



結構いるようだ・・・未完に終わった物語への多大な思い入れを一体どこにしまうのか、



どこで落とし前をつけるのか。 まるでこのプロジェクトは、『グイン・サーガ』への



“喪の仕事”だったのかもしれないなぁ、と思うようになってきた。



 あたしは受け入れつつあるようだ、この物語にこれまでと同じような続きはないと。



いつかグインたちも忘却の彼方に消えてしまうのかもしれないと。





 さて、本日はTさんにお会いし、気になっていたという『自殺クラブ』をお貸しする。



 年季の入った本であるが、保存状態は悪くない、はずである。 「クリームパイを持った



若い男の話」から是非話の内容に引き込まれていただきたい。



 そして「ある種の少女マンガには高い文学性があるが、少年マンガにはそこまでの



ものはあるのか?」という話をしていたはずなのに、何故かあたしが『王家の紋章』



ストーリーについて熱く語る!ということになり・・・ま、少女マンガでは歴史も学べます、



という話です。 『王家の紋章』にはツッコミもたくさん入るけど、それでも抗いがたい



物語としての魅力があるのは事実なので(とはいえあたしも30巻前後で途絶えて



ますが)、序盤を読む分にはお薦めしたいですね。





 家に帰ってきて、光市母子殺害事件の上告が棄却されたことを知った。



 予想通りではあるが・・・それが言い渡されるのと渡されないのとでは大きく違う。



そしてこの結果のために13年もかかってしまったということに、なんとも言えない



むなしさがたちのぼる。



 それにしても、本村さんはすごい。 過酷な運命に立ち向かわざるをえない人は、



否応なく人間的に成長させられてしまうという事実。 それがかなしい。


posted by かしこん at 03:14| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 買っちゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月20日

ペントハウス/TOWER HEIST



 コンゲーム的な話、結構好きです。 そして微妙なラインでの豪華キャスト、



ちょっと惹かれてしまいます。



   全財産は、最上階(ペントハウス)。



 長期滞在型高級マンション・“ザ・タワー”の管理人ジョシュ(ベン・スティラー)は



お客様満足度を高めるために日々の仕事に励んでいる。 最上階に住む大富豪の



ミスター・ショウ(アラン・アルダ)とは夜中にオンラインでチェスをし、新規事業等に



ついて情報提供もする。 タワーの従業員のお手本であり、彼がいないと実際仕事が



まわらないほどである。



 しかしある日、ミスター・ショウは投資の名目で集めた金を不正に使い込んでいる



ことが発覚、FBIに逮捕されるが、ジョシュはタワー従業員たちの年金も「10倍に



なるから」と言われて渡していたのだった・・・自分の金ならあきらめもつくが、それは



仲間たちの人生のかかったお金。 どうにかお金を取り返せないものかと策を練る。



 基本的に善人で有能で真面目、というベン・スティラーがとてもかっこいい。



 白髪まじりで「えっ、老けた!?」とびっくりしましたが・・・エディ・マーフィーと幼馴染



という設定だから若干老け気味なのか? それにしてもタンクトップ&ニットキャップ姿の



エディ・マーフィーは昔とあまり変わった感じがしない・・・若いのでしょうか。



   計画に加わる仲間たち。



 一応、エディ・マーフィーは泥棒の過去があるという設定ですが、他はみなさんド素人。



助手の義弟役のケーシー・アフレックはわざわざ喋り方が変になっており、学歴低い感と



いうか頼りなさ全開。 少数民族枠(?)でタワーに採用されたサービスマンのマイケル・



ペーニャさん、こういう役多いよな・・・「バーガーキングで働いてました」的ネタは



アメリカン人には受けそうである。 『プレシャス』の印象が強すぎて他に役はくるのかと



心配になってたガボレイ・シディベは横柄なメイド役で出番は少ないがおいしいところを



持っていくし、金融危機で財産をなくしてタワーを追い出されて妻子にも逃げられた



ホワイトカラーにはお久し振りのマシュー・ブロデリック(『ニューイヤーズ・イヴ』にも



出てたけどほんのちょい役)。 こんな人たちで百戦錬磨の詐欺師を出し抜こうというの



だから無謀なのであるが、無謀であるが故に応援したくなってしまうのが小市民である。



「がんばれ、ベン・スティラー!」という気分で、盛り上がりました。



 厳密に見えて運任せの彼らの計画はどうしようもなく杜撰であるが、タワー内部を知り



ぬいている従業員特権を活かし、内部構造をレゴブロックで完全再現しているのには



受けました。



   物語の鍵を握るのは、このフェラーリ。



 なんと『ゴースト・プロトコル』も真っ青の高所アクションがあり・・・プロのイーサン・



ハントに比べたらよれよれの素人があれを成し遂げるとは逆にすごいんじゃないか!、



とマシュー・ブロデリックに心の中で拍手。



 まぁ映画的には特に新しいものはないんですが・・・いろんなところで細かい職人技を



楽しませてもらいました、という感じ。 後味も悪くないし、群像劇的な側面もあるし、



頭脳線を期待してしまったら肩すかしかもですが意外にもあたしは楽しめました。



 かっこいいベン・スティラー、もっと見たいな〜。


posted by かしこん at 05:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月19日

チョコだと思ったらマカロンでした



 今週土曜日も仕事でございました。



 おかしい、2月になったら多少暇になるはずだったのに。 いや、確かに時間的に



余裕はできたのだが1月にできなかったこともしようとするが故に気がついたら



さらに時間がない・・・一日36時間ください。



 で、109シネマズHATにて公開中の『ハンター』が24日で上映終了!、のお知らせ。



ちょっと、見に行ってる暇がないですよ!、ということでネットでチケット予約し、「映画が



あるので間に合うように絶対帰りますから!」宣言し、無事に鑑賞。 思いの外よかった



です(ウィレム・デフォーばんざい!)。 上映館が少ない&上映期間が短いので興味の



ある方はお早めに。 感想はおいおい書きます(一気に映画を見たので感想を書く時間が



とれません・・・)。



 しかし、おかげで図書館の呼び出しに出向けず。 『リンカーン弁護士』を取り寄せて



もらっているのですが・・・今日が取り置き最終日だ。 さて、出かける気分になるのか



どうなのか(おいおい)。



 ヴァレンタインデーにもらってしまいました逆チョコ(?)、よく見たら賞味期限が!



チョコレートならしばらく大丈夫だろと勝手に思ってて、油断しました。



   サダハルアオキ。 値段を知るのが怖い。



 ショコラだと思って一個持ちあげたらば、妙にでっかい。 そして大きさのわりに軽い。



むむ?、と一口食べてみたらば・・・なんと、マカロンにチョコレートがコーティングして



あった! 思ったよりおいしかったので、ぺろりと全部いただきました。



 いや、マカロンということはこれは早すぎるホワイトデーのお返しなのか?



 それともヴァレンタインデーに受け取ったのだからあたしもホワイトデーに何かを



返した方がいいのか? いやいや、実は他にもピエール・マルコリーニやベルギーの



チョコ詰め合わせが入っており、あたしが贈ったものよりもトータルで高額なのでは



・・・(汗)。 ホワイトデー、おいしいクッキー買おう、と決心。


posted by かしこん at 06:40| Comment(0) | TrackBack(0) | ごはん・お茶の時間 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月18日

ダーク・フェアリー/DON'T BE AFRAID OF THE DARK



 『デビルズ・バックボーン』・『パンズ・ラビリンス』とギレルモ・デル・トロ作品で



子供が主役なら間違いない!、と思って期待しておりました。 しかし実は脚本を



担当しただけで監督は違う人なのね・・・ここで何かに気づくべきでした。



 冒頭から、「いかにもゴシックロマン!」な鉄の門とお城が映りワクワクする。



が、“なにか”もまた比較的最初から姿を現しており・・・ちょっと、そこはチラリズムで



お願いしますよ!、と(別の意味で)泣きそうになる。



   気をつけて! やつらは暗くなるまで待っている。

                   背筋も凍るおとぎ話。



 オープニングから変わって舞台は現代。 キム(ケイティ・ホームズ)は恋人の



建築家アレックス(ガイ・ピアース)が古い屋敷を買い取って改築作業中、彼が離婚した



相手と住んでいた娘サリー(ベイリー・マディソン)を引き取ることになり、彼女とうまく



やっていけるかどうか心を砕いていた。 一方サリーは両親の離婚で傷ついて大人への



信頼感をなくしており、二人の初対面はいいものにはならなかった。



 一人で屋敷を徘徊するサリーは、ある日地下室で何も知らずに封印を解いてしまい、



屋敷にはある魔物が跳梁跋扈することに・・・という話。



   気持ち悪いものに触ってはいけません。



 あー、この女の子、『マイ・ブラザー』の子供たちの一人だ。 あの映画でも父親の



変貌ぶりに動揺し感情を表に出さなくなる、というような役だったが・・・仏頂面の似合う



子である。 傷ついた・ひねくれた性格という設定なので、子供らしくなくかわいくないのは



この映画的には必要だと思う。 それ故、後半以降の狙われる恐怖が活きてくるのでは、



と。 バスタブに逃げ込むがシャワーカーテンがあたかも襲ってくるようなシーンは



非常にデル・トロ的というか、いい感じの場面でした。



 しかし! “やつら”のビジュアルはなんとかならんのか・・・そこまではっきり描かれ



ちゃったら、怖くもなんともないのですが(しかも中盤で、本棚に挟まれて死ぬやつが



いるとわかってしまうと「踏みつぶしたらいいじゃないか」みたいな感じに・・・)。 そりゃ、



数がキリがないんですけども。 ホラーだと期待するからいけないんでしょうか、あくまで



“お伽噺”と考えるべきなのかもしれません。



 だとしたら、それはそれで結末はひどい話なんですけれども・・・。



   こんなキモい壁画(?)のある家に

                 そのまま住む気持ちがわからない。



 今ではトム・クルーズ夫人としてのほうが有名になってしまったケイティ・ホームズ



ですが、あたしは『ドーソンズ・クリーク』から見ているし『エイプリルの七面鳥』は



よかったし、まぁ子育てもあるから大変でしょうけどいい映画に出てほしいなぁ、と思う。



演技力はあるからトム・クルーズの名前抜きで評価してほしい。



 ちなみに『ドーソンズ・クリーク』のもう一人のヒロインだったミシェル・ウィリアムズは



いまや賞レース常連の女優になった・・・ティーンドラマから成長する人がいるって



うれしいですわ(しかし主役だったドーソンくんはどうしているのだろう。 親友役の



ジョシュア・ジャクソンは今『フリンジ』に出てますが)。



   あたし、ガイ・ピアースは好きですが・・・

                このお父さんはいいところなしだわ!!



 だからこそ、余計に「あのラストはひどいよ!」となります。



 なんでももともとはギレルモ・デル・トロが子供の頃見てトラウマになったというテレビ



映画『地下室の魔物』のリメイクとか。 オリジナルは未見ですが、メインストーリーの



内容に忠実なら、このラストは確かにトラウマになるな・・・。 女性だったら、小さい娘の



いる人と付き合うのは考えた方がいい、とすら思うかも。 もしくは、古い家を買うな、と



いうことでしょうか。



 よいところもあるんですが・・・ゴシックな雰囲気とか。



 でもそれもくっきりしたやつらの姿のせいで、台無しよ。


posted by かしこん at 23:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月17日

新しい才能は次から次へと



 タワレコへ行く。



 グラミー賞の影響で、店内はアデルがヘビーローテーション。 つい、ニヤリと



してしまう。



 ポール・マッカートニーの新譜を試聴したくて行ったのだが・・・どうも人がそこから



離れない、しかも周囲には次を狙っている気配の人たちが何人も。



 これはちょっと待っていられないなぁ、と別のコーナーへ行く。



   SCARS & STORIES / THE FRAY



 いわゆる“美メロ”がウリのアメリカン・ポップ・ロックバンドのサードアルバム。



ジャンル的にはオルタナティブロックと思われますが、サウンドとしてはかなりメジャー



路線だと思います。 めずらしくも国内盤が出ていたのですが、輸入盤が紙ジャケット



だったのでこっちを買ってしまった・・・それに、彼らは輸入盤でも歌詞カードをつけて



くれる数少ないバンドでもあるからです(ファースト・セカンドは国内盤を買ったから



いいや、的思考もあり。 こっちの方が千円以上安かったし)。



 前2作に比べると、なんとなく地味?



 “HOW TO SAVE YOUR LIFE”や“YOU FOUND ME”のような一曲で聴き手の胸を



撃ち抜くキラーコンテンツがないからだろうか。 でも一曲一曲の構成は緻密だ。



キャッチーさにあたしがとらわれ過ぎていて、素晴らしさにまだ気づけていないのかしら。



 これからも聴く楽しみがありまする。





 ずいぶん前に試聴機で聴いて気になっていたんだけどそのときは時間がなくて、



でも名前とか覚えてなくてジャケットの記憶もどんどん薄れていって、「次に行っても



探し出せないかもしれない」と思っていたアルバムを、なんと見つけることができました。



   BIRDY / Birdy



 これは輸入盤のみですが、日本語POP的シールが貼ってあります。



  少女は歌う、ピアノが語る。

  心奪われる15歳のピュア・クリスタル・ヴォイス。

  全英が注目する超新星BIRDY(バーディー)待望のデビュー・アルバム。




 全編ほぼカバー、しかもほぼピアノ弾き語りのみ。



 クリスタル・ヴォイスとありますが、あたしにはシャーベット・ヴォイスというか・・・



どこか落ち着いたふしぎな揺らめきを感じるのです。 それを、このジャケットの少女が、



15歳が、歌ってるとは!



 声は高いわけでも細いわけでもない。 低すぎるわけでも力強さが前面に押し出されて



いるわけでもない。 けれど確かにある安定感と、けれどどこか不安定さを醸し出す



揺らめき。 正反対のものがいくつも同居しながらそこにある。



 これが若さ故のものなのか、もしくは一生続くものなのだとしたら彼女の才能は



とんでもないかもしれない。 最近、イギリス、ほんとにすごい。


posted by かしこん at 05:38| Comment(0) | TrackBack(0) | Music! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月16日

デビルズ・ダブル−ある影武者の物語−/THE DEVIL'S DOUBLE



 一応、“実話の映画化”とのことなのですが・・・どこからどこまでほんと?、と



考えてしまうのはやはり日本が平和だからでしょうか。



 イラク軍中尉のラティフ(ドミニク・クーパー)は、ある日突然拉致同然に連れ



去られる。 その相手はかつて高校の同級生だったウダイ(ドミニク・クーパー、



二役)、独裁者サダム・フセインの長男だった。 高校時代から二人は似ていると



評判だったが、状況が混迷している昨今、ウダイはラティフに自分の影武者になる



ようほぼ脅迫の命令をするのだった。



   ポスターイメージ、何故こんな感じ?



 ドミニク・クーパーといえば『マンマ・ミーア!』が代表作と書かれるようですが、



あたしは以前WOWOWで見たサブプライムローンをテーマにしたスペシャル



ドラマみたいなやつで、庶民をだまくらかしてローン書類にサインさせる金融マンを



やっていたのが印象的。 一歩踏み込めば狂気、という感覚が似合う役者である



ような気がして、意外なキャスティングではありませんでした。



 父親であるサダム・フセインに「生まれたときに殺しておけばよかった」と言われる



ほど自らの欲望に忠実に極悪の限りを尽くすウダイの姿は紋切り型ではあれど、



見る側に嫌悪感を抱かせるに十分(たとえ実母が父親の女遊びのために苦しんで



きたのを目の当たりにしてきて精神が歪んで・・・みたいなエクスキューズがあると



しても許容の限界を超えている)。 一方のラティフはそこそこお金持ちのいい家柄で



自分自身も軍でそこそこ出世しており、ウダイの影武者になって自分の存在を消される



なんて到底容認できないし、ましてやその相手が相手だしと抵抗・逃亡を続けるもすぐ



つかまり拷問にかけられ、言うことを聞かないと家族を殺すと言われてしまう。 これで



ラティフが最下層の出身だったら「そのかわりに家族にちゃんとした生活を」と進んで



身売りしかねない話になりそうですが、ラティフくんには学もあるので純粋に迷惑な話。



 そして普通“影武者”の存在はひた隠しにするはずだと思うのですが、その存在、



知ってる人が多すぎ。 そこまで情報統制が完璧にできているということなの?



 ウダイのお目付け役でフセインの側近でもあるムネム(ラード・ラウィ)は明らかに



何かを感じているのに、それでも従ってしまう・・・独裁というか、恐怖政治はいけません。



 というわけで、ウダイとラティフ、ラティフが真似するウダイ、という3パターンをドミニク・



クーパーは演じているわけですが・・・サングラスを外すと、それが誰だかすぐわかると



いう親切設計演技となっております。 というか、見どころはそこですね、はっきり言って。



   左:ラティフ、右:ウダイ



 時期はイラクのクウェート侵攻からアメリカの反撃あたりですが・・・そんな国家の



一大事にウダイが何をしていたかというと、クスリに酒に女あさりに気に入らないやつ



殺すぐらいで・・・いっこうに国政に参加しておりません(参加しているといえばむしろ



ラティフ)。 ちょっとフセイン、だったらこいつ殺しちゃってもいいんじゃないの!、と



あたしは何度思ったことか・・・。 そうそう、ブッシュ(父)大統領の声明が当時の映像で



流れるのですが若くて、「うわっ、ブッシュ(息子)にそっくりじゃん!」と驚愕しました。



 自分そっくりになっていくラティフをあたかも自分がつくり出した作品のように執着を



見せるウダイ(まさに凶悪なジャイアニズム)に支配される感が日々強くなっていく



ラティフ。 狂気に巻き込まれる前に彼がとった決断は・・・という話ですが、キーマンと



なる女性、ウダイの気に入りの情婦サラブ(リュディヴィーヌ・サニエ)なのですが・・・



これが『8人の女たち』の末っ子なのかと思うほどあやしい変貌を遂げており、フランス



女優は油断がならないことを思い知ったり(いや、ヘアメイクのせいなんかもあると



思うんですけどね)。



 これが実話だというならば、歴代北の将軍様にも何人もの影武者がいる説はぐんぐん



信憑性が増すのですが・・・でも“影武者”って呼び方、やめてほしいかなぁ。



 だって武士じゃないもんね!


posted by かしこん at 06:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月15日

ドラゴン・タトゥーの女/THE GIRL WITH THE DRAGON TATTOO

 何故、サブタイトルが『ドラゴン・タトゥーの女』になったんだろう?、というのは最初に原作を読んだときからひそかな疑問だった。 原作(シリーズタイトルは『ミレニアム』、その一作目)を直訳すれば確か『女を憎む男たち』みたいな内容だったような・・・けれど日本語版は『ドラゴン・タトゥーの女』、そしてこの映画の英語タイトルも『THE GIRL WITH THE DRAGON TATTOO』。 最初に英語版の原作を訳した人がつくったタイトルなんだろうか、だとしたらすごいセンスだよなぁと思う。
 さてあたしは原作も読み、スウェーデン版の映画も全部見ておりますが、純粋に「デヴィッド・フィンチャーの新作」として期待をしております。 どうしても比較してしまいますが、他意はないことをお断りしておきます。
 まだ公開5日目にもかかわらず「大ヒット上映中!」の文字・・・確かに、平日レディースデイとはいえ結構な込みようです。 なんだかんだいっても、日本ではまだデヴィッド・フィンチャーは『セブン』の監督という認識なんだなぁ、という思いを強くする。

  ドラゴン・タトゥーの女ポスター4.jpg 誰が、ハリエットを殺したのか?

 月刊誌『ミレニアム』編集長で専属の経済ジャーナリスト・ミカエル・ブルムクヴィスト(ダニエル・クレイグ)が大物実業家の不正行為を暴いた記事を書くが、証拠不十分だったため逆に名誉棄損で訴えられてしまい、これまでのジャーナリストとして築き上げてきた栄光に傷がつく。 そこへ、スウェーデン経済界の大物であるヘンリック・ヴァンゲル(クリストファー・プラマー)から私の自伝を書いてほしいと依頼が舞い込む。
 優秀な調査員リスベット・サランデル(ルーニー・マーラ)にミカエルについてすでに調査させていたヴァンゲル氏は彼に任せることにし、自伝はカモフラージュ、本当に調べてほしいのは40年前に起こった兄の孫娘・ハリエットの失踪事件だった・・・という話。 ほぼ、スウェーデン版と話は同じであります(ラストがちょっと簡略化されてますが、大筋は同じ)。

  ドラゴン・タトゥーの女1.jpg ただ、違うのはリスベットのキャラクター。
 こっちのリスベットのほうがより、無口。 自分の感情を表に出さない。 それ故に怒りが心の奥底で熾き美のようにいつまでも燻り続ける。 静かであるが故に、怖いけれどずっと彼女のことが気になってしまう・・・。 原作にあったパンクな雰囲気は抑えられているけれど、反抗心がないかといえばそんなことはなくて、彼女の全身から世界を拒否する空気が発せられている。
 原作もスウェーデン版も一作目はミステリーであることを守ってつくっていた印象ですが・・・この映画はもう、すべてはリスベットのためと割り切ってつくったようにとしか思えない。 ヴァンゲル家の人間関係はそれほど深く掘り下げないし、リスベットに寄り添い過ぎて事件もハリエットもなんだか印象が薄い感じに・・・。
 中盤、登場人物が一気に増えるので、ここで人物関係をある程度把握しないと厳しいです(ミカエルもメモを取りながら「もう、誰が誰だか・・・」と困惑していたが)。
 そうそう、オープニングクレジットでは予告編で使われていた『移民の歌』のカバーがしっかり使われており、その映像はどこか『ファイト・クラブ』のオープニングにも似ていながらもメタリックな漆黒一色で、それでありながら漆黒は色をわずかに変えながら泥沼のような悪夢を描いていた。 ・・・これって、リスベットの深層風景? 彼女が体験してきた理不尽な暴力? それから逃げられない悔恨?、と目を奪われてしまい、肝心のクレジットがまったく印象に残っていません。
 まさに、リスベットのための物語!
 彼女の上司、ドラガン・アルマンスキーが『ER』のコバッチュ医師でびっくり! 役的に年齢不詳風でしたが明らかに若すぎるでしょ(もし三部作つくられるのなら、のちの二作で彼には是非活躍していただきたい)。 と、他の脇役も大変豪華です。 自分の役を(多分、内心苦しみながら)きっちりこなしておられます。
 そしてなにしろミカエル・ブルムクヴィスト(ダニエル・クレイグ)です。

  ドラゴン・タトゥーの女3.jpg 彼の長年の愛人エリカのロビン・ライトはちょっと老け役?

 007のくせに“有能なれど愛すべきうっかり男・ミカエル”がはまるのか? 彼ではストイックすぎ、もしくはしっかりしすぎではないだろうかと不安がありましたが、杞憂。 ちょっとした怪我(?)でも「痛い、痛い!」・「血が出てる!」とわめく様とか、コテージに入り込んできたノラネコを仕方がないなぁとエサをやったりして、姿が見えないと「Cat!」と大声で読んでみたり・・・(「ネコ」呼ばわりなんですね)。 意外とキュートが似合っております。 コメディの映画、もっと出たらいいのに。
 このミカエルの“裏表のない軽さ”がリスベットにとって救いになっているのね、と気づくヨロコビは大きい。

  ドラゴン・タトゥーの女5.jpg スウェーデンのコーヒーショップのカップには何と書いてあるのか?
 そう、スウェーデン。 さすが全編ロケだけあって、空気感や冬の凍てつく感じが素晴らしい。 日がすぐに沈んでしまう一日の流れとか、雪のない都市部での(たとえば地下鉄構内での)薄暗さとか。 期待した以上にダークではないけれど、必要十分で。
 というか、最初の予告編がかっこよすぎたよ・・・さすがにそれは超えられなかったけど。
 だけど家の中のもの(特にヴァンゲル一族はお金持ちだから、美しく機能的な北欧家具が必要最小限にシンプルに置かれていてかっこいい!)は基本的におしゃれです。 『ミレニアム』編集部も思ったより規模が大きかったし働いている人数も多かったけど、オフィス空間ときたらかっこいい。 そしてリスベットのすることもいちいちかっこよくて、やがてかなしい・・・ミカエルのバカ!、とだいたいの人が思うであろう・・・。
 これ、後日談、必要だって!
 それにしても・・・R+18なのにモザイク使わないといけないわけ、映倫?
 それがかえって鬱陶しいというか、不自然に感じさせるから観客として物語を見る流れを強引に止められる感じがする。 モザイクかけるならもっと気づかれないようにできないものか(でもそれをすると著作物に勝手に手を加えることになる? でもモザイクも加えてることにならないのか)。 なんか映倫の判断もテキトーというかそのときによって変わるから、もう過去に一回OK出したんならいいじゃんと思うのはあたしだけでしょうか(それにこの映画、ただのポルノとはわけが違うんだし)。
 なんかそれが、それだけが不満です!
 もう来年には2作目を公開してください!

 すみません、昨夜、これを書きながら気がついたら机に突っ伏して寝てました・・・前日2時間睡眠で一日映画4本はしごはさすがに疲れたみたいです。
 アップが遅くなり、申し訳ありませんでした。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 23:26| Comment(2) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする