2012年01月09日

聯合艦隊司令長官 山本五十六 −太平洋戦争70年目の真実−



 日本映画ってどうも戦争を題材にするとどっちかに寄っちゃうよな、微妙だわ・・・と



思っていたので、真っ正面に戦争を捉える映画にはそんなに食指が動かないんだ



けれども、ついこの前NHK−BSで見た『二百三高地』が思いの外よかったので、



それにこの映画はあまり偏っていないという噂を耳にしたので見ることに。 おじさん



揃いのキャストも好みですし。 でも役所広司は坊主頭のイメージがなく、見ていても



ずっと別の人みたいに思えた。



   総員出撃



 昭和14年、日独伊三国同盟をめぐって推進派と反対派がぶつかっていた。



 反対派の海軍は山本五十六(役所広司)を中心に意見をまとめていたが、新聞も



賛成の社説を掲載し、世論は賛成派に一気に傾いていった。



 映画で歴史を学ぶあたしだが、基本的に映画はフィクションだとわかっているので



“そこを入り口にして理解する”というだけで、映画に描かれたことを事実と同じと思う



わけではない(『カティンの森』でソ連兵の所業に怒りを覚えても、それがそのまま



現在のロシア人に向かうわけではない)。 この映画で描かれる日本は閉塞感に



満ちており、首相は次々交代し、景気が悪く、「わー、今の日本と一緒じゃないですか」と



思うので余計に、現在を投影させる仕掛けがあるんだろうなと考える。



   できるかぎり戦争を回避しようとする男は、

     その立場故に戦争の指揮をとらねばならなくなる。 そうなれば次なる目的は

     「戦争を一刻も早く終わらせること」だった。



 “世論の代弁者”を名乗る新聞が自ら世論を誘導し、戦争を煽っているとはっきり



描くことは珍しいけれど、それもまた今では必然になっているということかも(マスコミが



信用されてないことのあらわれ)。 「戦争になれば景気がよくなるから」と戦争を願う



庶民の姿もあり、常に弱者として描かれてきた国民像からの脱却はよいことだと思う



(映画の中では日露戦争から二十年しかたっていないのに「すぐに忘れる国民性



だから」ということになっており、それもまた今に通じる日本人の姿でした)。 なので



好戦的な新聞社の主筆?(香川照之)にすっごくイライラした・・・あたしが情報もあり



かつ平和な時代に生きているということなんだろう(香川照之、ちょっとやり過ぎ感が)。



 実際に空襲されるまで、日本は9.11前のアメリカ同様本土を攻撃されることが



なかった、戦争は海の向こうで起こることだと思っているから容易く戦争に賛成するのだ、



とため息。 日本中で戦争したくないと思っているのは軍人だけか?、みたいな皮肉。



 いや、過去の失敗を繰り返さないために人は歴史を学ぶのだから、「日本人、日本を



なんとかしようぜ!」ということなのかもしれない。 戦後、それこそ個人としては自虐の



念に押しつぶされそうになりながらもGHQの新たな指示に従ってこれまでとは正反対の



世論をつくりだそうとする新聞記者たちが描かれているのが大事なところです。



   山本五十六は甘いもの好きの下戸。



 山本五十六の言うことはすべて先見性に満ちいちいちごもっともで、彼に反対する



人々の愚かしさを誘うんだけれど、「山本五十六、そんな完璧な人だったのか」と



疑念が。 だって欠点ないんですもの、彼がいなくなったら日本終わりじゃん、と感じて



しまうんですもの。 自分と意見が対立するものにも声を荒げず、作戦に失敗して



帰ってきた者には茶漬けを振る舞う。 日本人の願うリーダー像ってこれか。 でも



しっかり非情さも持ち合わせているのですよね。



 そしてやたらと食べるシーンが多いのが印象的です。 あたしには山本家の家族の



食卓、子供たちに「漬けものは食事の後半になってから食べなさい」というのが勉強に



なりました(お漬物を食べるタイミングがいつもわからないので・・・)。



 戦争映画的ドンパチを期待するとCGがしょぼい(時折しょぼさの目立つNHK『坂の



上の雲』にすら負けている。 CG使ってない『二百三高地』のほうがリアル)とか、



出てくる人の名前が全然わからないとか、戦闘の最中に今映っている人たちが



具体的にどこにいるのかさっぱりわからないとか問題も多々ありますが、そのような



スペクタクル戦争映画ではないので期待する方が間違い。



   ミッドウェー海戦にて。



 陸軍より海軍のほうがリベラルというイメージがあるけれど、海軍の人でもまぬけは



いるとわかります。 おじさんキャストばかりでニヤニヤですが、もっと人数多くても



いいんじゃないのか? 限られた人しか出てこない感じ・・・予算の都合か。



 阿部寛と椎名桔平はさすがの安定感。 柳葉敏郎と伊武雅刀はいつもと同じですが、



柄本明はわりと抑え目、吉田栄作が地味にいい感じ。 坂東三津五郎が引き締め役を



一手に担い、玉木宏が語り手視点で参加。 その中心にはいつも、役所広司がいる。



   海軍の白い軍服はかっこいいなぁ。



 最近はやりの「見た目がまず本人にそっくり」路線は使わず、ひたすら内面に迫った



ところが正統派で、主演男優賞をごっそりとりそうな感じである。



 そしてこの映画では光と影の使い方が非常にわかりやすく効果的である。



 作戦会議を引きでとらえたとき、顔に当たる光の色で山本五十六の賛成派なのか



反対派なのかわかったり・・・軍人たちの心理戦として成り立つ部分もあったので、



いっそのこと戦闘シーンをもっと削ったほうがよかったのでは・・・。



 エンディングテーマは小椋佳。 いつもの小椋佳よりは一歩力強さに踏み込んだ



楽曲だったような気がする。 昔、夜中のテレビで『零戦燃ゆ』を見たことを思い出し



ました・・・内容はさっぱりだけど、石原裕次郎のエンディングに心打たれた記憶が。



 そこにあるのは、現在から過去を描くために必要な“誠意”(でもそれは戦争を美化



している、というのとは違う)。



 ただ、観客の年齢層が高かったんですよね・・・でもそういうときって観客のマナーが



悪いのよね・・・若い人を悪く言うなよ、と思う。 映画見て泣くなら自分のことのように



考えて! “他人事”が日本をダメにしてるのよ!


posted by かしこん at 02:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする