2012年01月08日

透明人間の告白/H・F・セインツ



 買ったばかりの本をすぐ読むとは・・・最近、積読山がどんどん高くなっているだけ



だったんだけど、現状に恐怖を覚えてきてとりあえず近くにあるものから読もう!、と



考え始めています。 これで、読むスピードが上がればめっけもん。



 先日、友人とも「増えすぎた本ってどうする?」という話をしたばかり。 読み終わった



本は段ボールにしまって押し入れにしまうことはできるけど、読んでない本をしまう



ことはできない!(しまっちゃったら探すの大変!)



 というわけで、地道に読んでいく所存。



  



 証券アナリストのニック・ハロウェイは、熱を上げているニューヨークタイムスの



記者・アンの気をひきたくてある研究所の発表会に連れていくと、その研究所は核を



利用しているのね、と盛り上がったアンは地元の過激な環境保護団体を仕込む。



団体が画策した爆弾が予定とは違うところで爆発し、研究所も吹っ飛ばしてしまった



せいで何か特殊な反応が起こってしまったらしく、爆発周辺にあったモノ・生き物は



みな「透明の存在」になってしまった。 勿論、ニック・ハロウェイも。



 突然透明人間になってしまったニックの逃亡劇が物語のメインですが・・・なにしろ



ニックの一人称で話が進むので、「ニック、バカじゃね?」と思わせられること多々・・・。



 透明人間がいることを知られ、スパイとして活用できるかも・いやいやまずは人体



実験をと考える人たちがいるだろうと想像はつく。 モルモットのような、自分の意志



どおりに生きられないなら死んだ方がましだと考えるニックの気持ちはわかる。



 が、あまりに行き当たりばったりである・・・。



 ニックを追う部隊の責任者ジェンキンズにいささか同情を禁じ得なくなるほどだ。



 透明になると自分の行動を遮る「他者の目」がなくなるから、冷静に考えればそれは



犯罪だぞ、ということもニックは平然とする。 自分が生きていくために必要なことだから、



それが当然の権利だとでもいうように。 H・G・ウェルズが書いた『透明人間』でも透明に



なった彼は非常に偏屈で話の通じない人間として描かれていたが、それと一緒では?



 会員制クラブにもぐりこんで衣食住を確保するくだりなどは閉店後のデパートに残って



売り場の布団にもぐりこんで寝た彼と同じでは? “いきいきとした透明人間の日常から、



より人間らしさが迫ってくる”と褒めている人は書いてるみたいだけど、基本的なところは



ウェルズが書いてますが・・・。



 いや、面白くないということではないのです。 面白いんだけど、ウェルズが悔しがる



ほどか、というのはちょっと疑問だなぁ、と思う程度です。



 そしてとても悲しいことに、出てくる女がバカばかり(いや、男女ともにまともな人は



出てこないんだけど・・・)。 アンなど、最初の爆発事故において「あなたにはわかって



いるかしら、これは原子力利用の歴史でもっとも深刻な惨事だということ」などと言う・・・



核爆発も起こってないし、放射能も検出されていないのに。



 だったらこの女はアメリカが使用した原爆についてはどう言うつもりだろう。 広島や



長崎の惨状を見たらなんと言うのだろう。



 後半から登場するもうひとりの女・アリスは、とにかくニックにとって都合のいい女で



しかなく・・・というか、情欲をあっさり恋だと思いこむニックの精神構造がまずバカで



ある。 それを受け入れる女の頭もどこかおかしいに違いない!



 常識のある人物がどこかにいないと、読んでて疲れる・・・ということに気づいた



(ジェンキンズがニックに「君は自分本位すぎないか」と声をかけるシーンがあるけど、



ニックはあっさり聞き流してるし)。 透明人間の苦悩って、いかにして消化中の食べ物を



目立たなくさせるかではなくて、透明になってしまったことで自分の理性や良心を失って



いくことではないのだろうか・・・最初の頃は彼も思っていたのですがね、慣れていくうちに



それもなくなっていった。



 人間が、人間である、とは。



 それを問いかけているのか?


posted by かしこん at 05:34| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする