2011年12月01日

ハラがコレなんで

 石井裕也監督の新作。 主演仲里依紗ってことにも期待!
 冒頭、リストラされて公園のベンチに置き場のない身を置いているサラリーマンを近藤芳正がやっていて、もうそれだけで笑ってしまっている自分がいた。 そしてメジャー作品を撮るようになっても自分の好みというか粘着質的な欲求から離れられない監督に、なんとも言えないどうしようもなさを覚えたり(自分の中から出ていくモノへの執着、とでもいおうか。 別にそこ、映さなくてもいいのになぁ、と思ってしまうから)。 しかし表現者というものはそういうものなのかもしれないし。

  ハラがコレなんで2.jpg 雲のように、流れに身を任せましょう。

 ただいま妊娠9カ月目の原光子(仲里依紗)はカリフォルニアから戻ってきて一人暮らし。 だけどお金も底をつき、ご近所の人間関係も自分の思っているものとは違うし、子供の頃の一時期を過ごした東京のはずれの長屋へ戻ることに。 光子の人生観に多大な影響を与えた大家さん(稲川実代子)はまだ健在で、同級生の陽一(中村蒼)はおじの次郎(石橋凌)としょぼいレストランをやっている。 いろんな意味でぱっとしない彼らに「イキじゃないよ!」と光子はできる限りのことをしようと心に決めるのだった・・・という話。
 まぁ、なにがイキでなにがヤボなのか、ということを語ってしまうときりがないし、そこにこだわるとこの映画の本質を見失う(そもそも光子のやってることはイキじゃない、いちいち言葉にするのはイキじゃないとなっちゃったら映画の内容は全否定である)。
 「それが日本人の美意識だ!」と15年前の大家さんが言うのだけれど、実際は人情や意気といったものは江戸時代の町人文化ぐらいからだろうからそんなに古いものではないだろうけど、確かに現在ではその境目は難しいよなぁ、と観客が考えるようであれば監督としてはOKなのかも、と感じた。 裏表のない好意としての行動と、お節介の境目は難しい、と相手のことを思うつもりであえてノータッチになっていることが増えてるよなぁ、とかね。
 が、光子はそんな境界が存在しないかのようにどんどん踏み込んでいき、そのことで自分からは助けを求められないでいた人々が救われる。 そして「イキなのかイキじゃないか」だけで物事を判断していた光子もまたそのこだわり故に自分自身のことをよく考えていなかったことに気づき救われる。

  ハラがコレなんで3.jpg 状況を動かすのは人との出会いだ、ということで。
 そういう意味ですごく落語の世界っぽいんだよな〜。
 実はファンタジーだったのね〜。 石橋凌の真顔のコメディ演技、冴えない男の役であるが故にはまっており、光子の少女時代を演じる大野百花ちゃんはうまいし(顔立ちがそのまま成長したら二階堂ふみのようになりそうで今後に期待したい)、大家さんは迫力あり過ぎなのに心の中は乙女だし、近藤芳正・螢雪次郎らのいわゆる“人生の負け組”(このレッテル自体意味がないのだが)の方々のキュートさがたまらない。

  ハラがコレなんで5.jpg 不器用すぎるおじ&おいもまたキュートです。
 光子の口癖「OK(I willが省略されてるみたいな勢い)」がいかにもカリフォルニア帰り的発音なのも楽しい。 テーマが繰り返され過ぎてわかりやすすぎるというのは難点かもしれないが、新天地として福島が設定されていたりと3・11後の状況を踏まえたらここまではっきり言わないといけないみたいな気持ちになるのかな・・・と複雑な気持ちになる(実際に制作されたのは震災前なのかもしれないが・・・だとしたらそれはそれで意味のある偶然である)。 あと、多分妊婦体験者は怒ってしまうくらい妊婦に強引なことをさせているのだが、そこはファンタジーということで割り切りましょう。 仲里依紗の妊婦演技はさすがです。
 というか彼女以外の他の女優さんがこの役をやることが想像できないぐらいですし。
 ラストは唐突ではあるものの、思いのほか鑑賞後の気分は悪くなかったです。
 のんきだっていいじゃないか、争わなくったっていいじゃないか、という考えは甘いのかな〜。 日本人全員がそうなったら困るのかもしれないが、そう考える人たちが普通に生きられる世の中である方が、ゆとりがあるのだと思う。

ラベル:映画館 日本映画
posted by かしこん at 02:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする