ジェニファー・ローレンスが様々な映画賞で激賞された作品、やっと日本で、神戸でも公開。 ダークな話だということはなんとなくわかっていたが、正直ここまでとは・・・。
舞台はアメリカ中西部のミズーリ州の山間部。 リー(ジェニファー・ローレンス)は17歳だが、精神病の母親に代わって幼い弟妹の世話をし、家のこともやっている。 父親はドラッグ売買の罪で逮捕されたが、約束の日に出頭せずに失踪、一週間後に保釈金の担保として家と土地が取り上げられることがわかる。 リーは期限までに父親を探し出さなければならなかった、生きていようと死んでいようと。
あの、これほんとに現代劇ですか?、というほどに貧困度合いは極まっている。
季節が冬だから、ということもあるけど、スクリーンに広がる風景は『フローズン・リバー』にとてもよく似ている気がした(雪や氷はないけれど)。 村というか周辺地域が非常に狭く、人間関係が濃密な感じも『フローズン・リバー』の特定居住区の描かれ方と似ていて、「え、同じ世界?」と感じてしまうほどだった。
が、互いが互いを監視し合っているような空気は、この地域が麻薬産業で成り立っていることがわかるにつれて納得がいくのだが、最初は全然意味がわからなかった。
その中で生きていくしかないリーにとって救いは軍に入ってこの土地を出ることだが、それでは弟妹を捨てることになる。 なんでこんなにひとりで背負わねばならないのか考えると、非常につらい(何故こんな環境で子供をつくるのか・・・と親を責める考えてが浮かんでしまう)。 これも『永遠の僕たち』と同じ時代のアメリカの出来事なんだよなぁ、と思うと余計にかなしい(あの映画は衣食住に苦労してないが故になりたつ話か・・・と)。 日々の暮らしに精一杯だったら、死に囚われたり思いに沈むことはない気がする。 同じく死はすぐそこにあっても、切実なるリアリティがこちら側にはあるから。
父親を探すため、伯父のティアドロップ(ジョン・ホークス)に手助けを頼むも彼は手を出すなと言う。 何かが隠されていると他の手掛かりを追えば、村の有力者の家族の女たちにリンチされる。 その男に声をかけたからだという。 言ってることが無茶苦茶だよ!、だが、男たちではなく女たちが手を下したことでリーへの気遣いになっているらしい。 でも顔殴ってるし、意味がわからん。
自分ではどうしようもない理不尽さに立ち向かうしかない少女を描いている、ということなのでしょうが・・・説明省略すぎだし救いがないしで、ものすごく悲しい。 リアルはリアルなんだろうけど・・・もうちょっとドラマティックなものがないと見ていてつらいだけなのですが。 原作は小説のようで・・・確かに、文章の世界向きの話です、だから映像だけではちょっと物足りない感じ。
とはいえ、ジェニファー・ローレンスを見る!、という意味では彼女がリー役でなかったらもっとつらかったであろうし、彼女の力でなんとか見ていられるところがある。
リーの気高さ・誇り高さは『トゥルー・グリット』の女の子に勝るとも劣らず、それだけが希望でした。 映像に冬の空気はよく出ているけれど・・・大人ってひどいなぁ、と思わされます。 自ら望んで母親代わりをしているわけではない、けれど弟妹にとってリーしかいない。 彼女はこれからも誇り高さ故に重圧を抱えて生きていくのか。
貧困って誰のせいなんだろうなぁ。 ただ、悲しい。
これが今年最後の映画になりました。 なんか、微妙・・・期待していただけに。