2011年11月02日

幸せパズル/ROMPECABEZAS

 アルゼンチン映画。 服とか小物とかに原色が多いのに画面が派手に感じないのは太陽の光が強いせい? それとも全体的にどこかやわらかいフィルターをかけたみたいなフィルム撮影のせい? なんとも不思議な魅力の映画。

  幸せパズルポスター.JPG セニョーラ、shall we パズル?

 冒頭から、主人公らしき女性はずっと台所仕事をしている。 今夜のパーティーのための準備だとわかるのだが、たくさんの親戚・友人が集まってのパーティーの席でも彼女は立ち働くばかり。 が、実はその日は彼女の50歳の誕生パーティーだったのである! 自分で作ったケーキに自分でろうそくを灯して運んで、みなに拍手で囲まれながら吹き消して・・・そしてまた後片付けなどに戻る。 うわーっ、昔の日本みたいだ!(いや、地方ではまだこういうことありますが)、ということで微妙に心が沈む。 しかし専業主婦であることに誇りを持っているらしいマリア(マリア・オネット)は、パーティーの準備も後片付けも全部自分一人ですることがよろこびなのであろうし、自分の城と考えていそうなキッチンに「手伝います」という余計な人間を入れたくないのであろう。 だから「マリア一人にさせてひどいわ!」と憤慨するのもちょっと違うのはわかるのだが・・・でもなんか、もやもやしちゃうのよね。 また映画自体も説明を排除というか、誰か一人に寄り沿いすぎるわけでもなく、淡々と進んでいくのでもやもや感は解決してもらえなかったりするのだが。
 しかしそのパーティーの最中に落ちて割れた皿の破片を元通り並べ直すことに面白さを感じてしまったマリア、たくさん集められた誕生日プレゼントの中にエジプトの女王ネフェルティティをモチーフにした絵画のジグソーパズルがあったことから、一気にジグソーパズルの面白さにのめり込んでしまう。
 この過程が、ジグソーパズルをやったことのある人・好きな人なら「わかるわかる」の共感ポイント! あたしも「ジグソーパズル、やりたい!」と思ってしまったもの。
 やり始めたら時間忘れますよね、ある程度一区切りつくところまでやってしまいたいですよね。 そして、面白さにはまったら次のをやりたくなりますよね、という過程が過不足なく描写され、すっかりマリアの気持ちになる。

  幸せパズル2.jpg 楽しげで問題なさそうな家族なのだが・・・。
 夫もそんな妻が珍しいのか、一緒に買い物に入ったショッピングセンターでジグソーパズルコーナーに思わず立ち止まってしまった妻に「どれか買えばいいじゃないか」などと言う。 「いいの?」と訊く妻に「つくったらまた壊してまたつくればいい」発言。
 あ、こいつ、わかってない・・・というのがワンシーンでわかってしまう素晴らしさ。
 そしてマリアの美意識はショッピングセンターで売っているパズルでは我慢できず(その場では夫が手にとったものではなくクジラがジャンプしてる写真のパズルを買うのだが)、誕生日プレゼントにパズルをくれた人に電話して「あのパズルはどこで買ったの?」と聞いてしまう始末。
 訪れた“パズルマニア”という店(どうやら実在するらしい)は、まさにマリアにとっては宝箱。 素敵な絵画や写真のパズルで埋め尽くされた店内を夢見心地で歩く様子はこっちも楽しい気分にさせてくれる。 そこで彼女は「ジグソーパズル選手権大会にペアを組んで出ませんか」という個人広告に出会う。 そこから彼女の日常が大きく変わっていく・・・というストーリー。

  幸せパズル1.jpg 一大決心して連絡をとり、ペアを組んで大会に出ることになった相手は大富豪のジェントルマン。 お茶も自分の手でマリアに淹れてくれます。 そこは、マリアの知らない世界。
 どれほど愛し合っていても、夫が自分のすべてを理解しているわけじゃない(勿論、逆もそう)。 どんなに気を配って将来のことを考えて育ててきた子供でも勝手なことをして一人前の顔をする。 家族がすべてと思ってきた人生に後悔があるわけではないけれど、新しいことを始めてみたい・ちょっとした気晴らしがほしい・自分だけの秘密を持つってこんなに楽しいのかしら、という世界中にいる“平凡な専業主婦”を誘惑、かつ夢を見させる要素がてんこ盛りでございます。 あたしは専業主婦ではないけれども、同じ女として“趣味というよろこび”を知っていくマリアにとてもうれしさを覚えた(こういうところ、フェミニスト的かなぁ)。
 ラストシーンは「えっ!」というか・・・賛否両論の感がありますが、いろいろな結末にとれるし“見た人次第”ってことなぁのかぁ、と。 ただマリアは自分だけの世界を持つことで精神的な自立を果たせた、ということに青空と同じものを見る。
 なんとこの映画、ナタリア・スミルノフ監督のデビュー作だそうである・・・一作目でこれとは、なんかもう自分の語りができちゃってる感じ。
 アルゼンチン映画、今後も要チェック!
 そして、ジグソーパズルをやたらとやりたくなったあたし。
 だって、秘密も自由ももう得ているもの。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 03:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする