本屋さんで見つけて仰天した。 何故、今頃!
そしたら『エロイカより愛をこめて』出版35周年記念だそうである・・・はっ、出版社が
秋田書店になってる!! 版権まとめたのか!
しかも豪華版、カラーページも再現、そして『暗号名はほんのジョーダン』もしっかり
収録となったら買わずにいられようか。 あたしは花とゆめコミックスで『Z』の1・2巻を、
白泉社文庫で『Z』も持っているにもかかわらず、である。

<鉄のクラウス>ことエーベルバッハ少佐の部下AからZのうち、単独で主役を
張るのはZ君だけ。
別にZ君だけが好きなわけではないんだけど・・・やはり作者も書いているように、
「(根がグータラだから)一生懸命な熱血人間の行動にロマンを感じる」からかも
しれない。 『エロイカより愛をこめて』では伯爵の存在がどうしてもコメディ色を
強めてしまうけど、『Z』シリーズはシリアスでリアルなスパイものとしての物語の
妙を楽しめるからかも。
でも、一生懸命真面目にやっているからこそ面白い、という部分はどうしてもある
ので、ド・シリアスというわけでもないのですがね(あわてふためくときのZ君の心の
呟きが面白すぎる)。
けれど、“情報部員とは非情な世界の一員である”という不文律は決して破られない。
『エロイカ』ではおちゃらけさせられる少佐もここでは“任務最優先だが部下にとって
最も頼りになる上司、かつ大変有能な情報部員”という本来の頼もしい姿を見せて
くれるのも素敵である(『エロイカ』では頼もしくないというわけではないのだが、
こっちの方がより教育係的上官っぽいのである)。
ただ、東西冷戦時代だからこそ成り立つ設定であり話なので(描かれた時期も主に
80年代前半なので絵も彼らも若い!)、『Z』シリーズを続けるのは難しいし、作者も
そう考えて「もう描かない宣言」になったんだろうけど、『エロイカ』本編の方にもZ君は
登場するので寂しくはないよ!(そういう意味では『魔弾の射手』のような少佐が主役の
ハードボイルド話もまたつくりづらかろう・・・)
現代でスパイものをやろうと思ったら『ボーン』シリーズのようになってしまうのだろうし、
コンピューターやネットとは切っても切れない世の中だし、スパイものにも<古き良き
時代>ってあったんだなぁ・・・。
そして『暗号名はほんのジョーダン』ですが、作者には珍しいエッセイマンガ。
たった16ページだけなのにあふれる情報量、何度読んでも飽きない構成、その昔は
ただ「面白い〜」としか読んでなかったけど、改めて読み返すとすごい技がさりげなくも
つまっていることに感銘(暗記してしまうほど読んでいるのに、また読んでしまうのだから
どういうことだ)。 生肉のフィレ、食べてみたくなるわ。