2011年10月12日

人生、ここにあり!/SI PUO FARE



 原題の意味は“やればできるさ”。



 イタリア映画がなんか楽しいのは、あたしがイタリア語会話をほんのちょっとかじった



からだけではない。 やかましいほどに音楽が流れ、登場人物は弾丸トークだが、その



根底には“人生を楽しむ”というイタリア人の哲学?が息づいているからだ。



 そんなことを考えさせられました。



   未来は自分で照らすのさ



 1983年のミラノにて。 組合運動に行き詰った(というか周囲とうまくやれなくなった)



ネッロ(クラウディオ・ビジオ)は<生活協同組合18>に移動させられる。 が、そこは



1978年に施行された<バザーリア法>のために精神病院が廃止され、行き場の



なくなった精神疾患患者が集まったところだった。



 しかし“切手を貼る”・“手紙に封をする”などの軽作業がなんとかできる(とみなされて



いる)彼らは精神疾患者とはいえ比較的軽症なほう。 意思疎通ができるとわかった



ネッロは生来の勤労精神がメキメキと働き、彼らにお飾りではない仕事−きちんと



稼ぎの出る仕事をさせようと目論むのであった。



 ある意味キャラの立った登場人物たちは人数は多いけれど誰もが印象的でイメージも



誰ともかぶらない。 それはとても素晴らしいことで、ついつい誰が自分の好きな役者の



タイプかを探してしまう(多分、実際の患者を参考にした役づくりなんだろうが、やりすぎの



感じがないのがまた素晴らしいわけで)。



   パンくずを規則正しく並べずにはいられない人たちには

   木でモザイクを。 締め切り守らねばが強迫観念になる人にはマネージャーを。

   これぞ適材適所。



 試行錯誤の末、モザイク木工がいちばん彼らの個性を活かせる上にお金になるという



ことで組合活動は順調になり、薬も減って体調も順調、普通の人並みの給料を手にした



彼らはいろいろと欲求が膨らみ・・・。 精神病における“作業療法”の効力って1983年



段階では認識されていなかったんだろうか?、と不思議に思う(日本では<森田療法>と



いう薔薇の栽培作業をするやつが以前からあったような・・・)。



 ふと思うのは、精神疾患と判断された人と、いわゆる健常者との境目とはなんなのか、と



いうことだった。 誰かを守るためとはいえ乱暴な内容の言葉を、本人が聞いてショックを



受けてしまうのは誰だってそうではないのか。 聞き流すことができれば健常者なのか?



自分が否定されてしまったと感じることは異常なのか?



   “仕事”を得ることでこんなにも人は輝くのか。



 勿論、引くべきラインはある。 けれどこの映画に出てくる組合員たちはちょっとズレては



いるが“個性”とくくれる人々ばかり(乱暴な人もいるが、それも理由があって思わず手が



出てしまうという感じ)。 そういう人ばかり描いてるからだろと言われたらおしまいなの



だが、診断されてないだけで異常者は市井の中にもたくさんいることを考えれば何が



明確な区別なのかわからないのである。 なお、劇中では組合運動を推進する人々は



左翼と呼ばれていましたが・・・左翼も悪いことばかりではないのね、と思ったり(理想は



わかるんだけどさ・・・しかし今の日本では左翼のイメージはダダ下がりである)。



 勿論、いいことばかり起こるわけではない。 悲劇もある。 けれども、それでも生きて



いこうと、仕事を続けていこうとする姿は自ら選びとったたくましさである。



 折しも日本ではバブル期。 ネッロの恋人がエンポリオ・アルマーニで働いていると



いう設定だったので顧客に日本人がいたりして(演じてる役者は日本人かどうかわから



なかった、あまりにステレオタイプな感じだったもんで)。 言われてみればヨーロッパの



ブランドが本格的に日本に上陸をしてきた時代で、バス停にかかってる広告などにも



時代を感じました。 そう思うとブランドファッション市場って日本ではそう歴史は長く



ないのね〜。



 うーん、日本では長期入院用の精神病院の撤廃など可能だろうか。 そう考えると



ラテン系のおおらかさというものがものすごく懐深く感じられる(実際、実話が元だそうで



ある)。 へヴィーな実話をコメディに仕上げるのもまたしかり。



 笑って、そして涙が止まらなかったり。



 やはり人生肯定派のイタリア映画、素敵だ。


posted by かしこん at 03:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする