2011年10月11日

忘れられた花園/ケイト・モートン



 東京創元社が大プッシュしてたので、読んでみた。 タイトルからもバーネットの



『ひみつの花園』を連想させるではないですか(実際は『秘密の花園』なのでしょうが、



あたしが最初に読んだのはそういうタイトルだったのです)。 ゴシックロマンかなぁ、



と思って。



 1913年、ロンドンからの船がオーストラリアの港に到着した。 乗客が去った後、



一人の少女が取り残された。 自分のことを何も覚えていない少女は港湾職員夫妻に



引き取られ、ネルと名付けられて過去のことはすべて忘れて育てられるが21歳の



誕生日に父親から真実を告げられる。 そのとき持っていたトランクの中には身の回りの



品と一冊のおとぎ話の本。



   こういうテーマのある装丁も好き。

       一冊600ページ越えなので上下巻も許します。



 2005年、ネルの孫のカサンドラは祖母を看取り、自分にイギリス・コーンウォールの



コテージが遺産として譲られることを知る。 何故祖母はイギリスの不動産など持って



いたのか。 カサンドラはネルの過去を追い、ネル自身が探し求めた自分の過去を



追体験する・・・というような話。 これに、おとぎ話の作者イライザ・メイクピースの生きた



時間1900年前後の時代が絡み、100年以上にわたる物語がタペストリー状に展開して



いくのです。



 ミステリを期待すると、正直ちょっと肩すかし。



 でも『ひみつの花園』や『嵐が丘』、『オリバー・ツイスト』などなどの作品群の雰囲気が



漂い、程よいゴシックロマンが楽しめます。



 しかし作者ケイト・モートンはオーストラリア人だそうで、以前に別の人の作品だけど



オーストラリア人作者による『古書の来歴』を読んだときにも感じたんだけど、結構



大雑把というか、「えっ、それちょっと無茶だろ!」な描写がみられる・・・オーストラリア



大陸に育つが故のおおらかな国民性ですか?(そのあたり、訳者あとがきにも書かれて



いて大爆笑であった)



 が、なにより特筆すべきは翻訳がいいこと! あたかも日本人作家が書いたかの



ような自然な文体が素晴らしい。 装丁もシックだし、中身も語り手によって活字を



変えたりするといった工夫が素敵。 内容が一部あれなので子供には薦めにくいが、



でも小学校高学年ならば十分読めるし、もしかしたら自分の趣味嗜好を変える作品に



なるかもしれない。 三つ子の魂百まで、です。


posted by かしこん at 02:08| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする