『ア・ポワン』へ行ってきました。
13時で予約を入れ、多少迷ってもいいようにと梅田を12時半頃出発。 事前に
地図も確認し、地下鉄本町駅1番出口から2ブロック行ったら曲がって3ブロック、
そこを曲がればお店のある通り、と脳内シミュレーションで確認済みである。 一応、
お店から来た開店案内のはがきも持った(一応、簡単な地図がついているのだが
わかりにくい・・・ネットの地図で調べたときは淀屋橋からのほうが近いのでは?、と
思ったのだが、ハガキには本町駅からと書いてあるので本町で降りた)。
が、なんか途中で「おかしい」と気づく。 そして歩けば歩くほど目的地から遠ざかって
いる気配。 迷ったよ・・・。 あたしは方向音痴ではないという慢心が生んだ失敗で
あるが、ビジネス街は予想以上に高層ビルが多く、目印にしたものもすぐに見えなく
なる・目印を探したいが近くまで行かないとわからないという哀しい宿命がある。
土地勘がないってこういうことを言うのだな。 そして改めて考えれば、地下鉄からの
実際の出口が地図で描かれているのと向きが違っていたのだろう(途中から90°ずれて
いることに気づいたのだが、どこで間違ったのかわからなかった。 多分、スタートから
間違っていたのであろう)。 すんなりいったら5・6分の場所に、あたしたちはぐるぐる
回って40分もかかったのであった・・・。
しかも明らかに近くに来ているはずだとわかってもなかなか見つからず、ちょうど
通りかかったヤマトの配達員さんに番地を伝えて尋ねたのであった。
相手はプロなのですぐ教えてくれた、あのときの配達員さん、ありがとう!
と、予約の時間を大幅に遅れてドアを開けたあたしたちを、シェフはあたたかく
迎えてくれたのだった(「暑かったでしょう。 わかりにくい場所ですみません」と飲み物を
サービスしてくれた。 あたしはあやうくジンジャーエールを一気飲みするところであった)。
<シェフおまかせ>で頼んでいたので、出てきたメニューは。

ビーツの冷製スープ
中にコンソメスープのジュレが沈んでおります。 ジュレといってもかなりつるんと
なめらかで固さとか一切なし。 美味しいのどごしと味、暑さをスーッとやわらげて
くれるスープでした。 あぁ、やはりシェフの味はおいしい!

淡路島産タマネギのキッシュ
これ、9割タマネギじゃない?、というくらいぎっしりタマネギで、しかもすっごく甘い。
今までのキッシュよりも厚みがあって、いつもの「もっと食べたい!」気持ちがこれで
報われるくらいのボリューム。 タマネギえらい!、と褒め称えたい気分になる。
そうそう、お店に入るとテーブル席があって、奥は逆L字型のカウンターになっていて、
厨房がある。 どうぞ、とカウンター席に招かれたのだが、「コース料理をカウンターで
食べるのってどうなんだろ」と思ったけれどこれはこれでありだ!、とわかる。 だって、
シェフの動きがわかるし、厨房の様子も見えるもんね。 そして以前よりもはるかに
気軽に、シェフと会話ができるのである。

前菜:ミズダコのマリネ
タコって一歩間違うと「噛み切れなくてなかなか飲み込めない」ということになりがち
なのであるが、これは絶妙。 歯ごたえと弾力はあるけど長く続き過ぎず、普通に食べて
飲み込める。 黄色いのはパプリカのソース、手前の緑のはバジルのソースであるが、
この皿の目玉は真ん中の“赤オクラ”である。 生でも食べられるオクラだそうで、食感は
確かに生なのだが、噛んでいると火を通した普通のオクラよりも粘り気はあとからやって
きて、上品に去っていく。 ねばとろ系があまり得意ではないあたしだが、これならば全然
OKである(普通のオクラも食べれますがね、念のため)。
その赤オクラの両脇に並んでいるのが、サボテンらしい。 アロエに似ている、という
ことでしたが、いかにも多肉植物という厚みとみずみずしさが面白い。

魚料理:真鯛の蒸し焼き
中央部分の白いところが、スティームオーブンで焼かれた真鯛。 表面の焼き目は
あるが、内側はとろけるようなふっくら感。 おいしい!、と泣きそうになるくらい。 下の
野菜は大ぶりに切られたタマネギやパプリカなどでラタトゥイユっぽいが、その酸味は
トマトよりはるかに強いインパクトで一口目、来ます。 ムール貝からとった出汁がその
酸味と脂分とで乳化するのか、だんだん酸味はまろやかになるがさわやかさだけは残し
続ける。 あ、暑い夏にさっぱり食べさせようという工夫か!、と気づく。
「この酸味の正体はなんですか?」と尋ねれば、シェフは何事もなく「レモン汁です」と
答える・・・レモンか! やっぱりいろいろなものが混ざっている複雑なハーモニー故、
レモン汁だけが単体で目立ってしまうことはないんだなぁ。
このあたり、さすが<シェフの腕>って感じです。

肉料理:シャラン鴨のポワレ
「今日はちょっとレアなきのこが入ったので」とカモと同じぐらい主役っぽいきのこたち、
どれひとつとして同じ味のものがない! 傘の部分がまるでフォアグラのような肉っぽさを
感じさせるやつ(これも生で食べられるらしいが、火を通した方がうまみが出るので・・・と
出てきたが、ほんとにおいしかった!)もあれば、固めの食感でカモと一緒に食べると
歯ごたえのコントラストが面白かったりして。 基本のソースはバルサミコ。
シイタケも肉厚ですし、カモはキモ部分も食べさせていただける。 その食感は
砂肝や豚のかしらにも似ています。 皿上部には黒にんにくのソースがひとはけ。
見事に熱が通っているのでにんにく特有の臭みや匂いはまったくなく(つまり食べた
人の口も臭わないということ)、香ばしさとコクだけが追加されます。 カモ肉につけると
うまみ倍増! あぁ、やっぱりシェフのカモはおいしい・・・。

デセール:桃のコンポート
なんと上に乗っているのは“エルダーフラワーのアイスクリーム”なのでした。
見た目はバニラと変わりないけど、ものすごく後味さっぱり、甘みも舌に残らない。
愛知県産の白桃だそうですが、コンポートといっても桃本来の風味・食感は
活かしています。
これにお茶菓子とコーヒー・紅茶がつき、コース終了。
お店が変わり、内装が変わったから雰囲気も変わり、ビジネス街の平日ランチ中心に
メニューが変わっていたらどうしようとちょっと心配していたんだけれど、やはりシェフの
味はシェフの味。 多少カジュアルになった部分はあれど、そこは許容範囲です。
あぁ、今日もおいしかった。
そしてえむさんはシェフを質問攻めにし、実はあたしたち同世代だとわかる(シェフの
ほうがいっこ上)。 「ほとんど同じ世代ですねぇ。 なんか楽しくなってきました」と気さくな
シェフはサービス精神を発揮しまくりでいろいろ話してくださり、<シェフに歴史あり>の
修業時代のお話などうかがう。 そのうち話はどんどん脱線し、『トム・ソーヤの冒険』を
見ていかだで川下りに憧れたとか、『ラ・セーヌの星』を見てたとか、懐かしの同世代
トークに突入。
はたと気づけば時刻は17時をまわっており、夜営業に差し支える時間に・・・。
すみません、すみません、と平謝りで、でも楽しい時間はほんとに過ぎるのが早いの
ですよ。 そしてシェフも「全然大丈夫ですから〜」といつもの気さくな感じで許してくれる
のでつい甘えてしまうのよね・・・いかんいかん。
が、「シェフったら、実は普通のにーちゃんだわ」とわかったのはいいのか悪いのか・・・。
だがシェフの料理にはわざわざ大阪に行って道に迷っても、手や腕が日に焼けて
その晩ひどい目に遭っても、それだけの価値があるのです。 少なくともあたしには。
できたら今年中にもう一度行きたいなぁ、是非!