2011年06月27日

イリュージョニスト/ L'ILLUSIONNISTE



 ジャック・タチの本名がタチシェフとは知らなかった。



 ほんとに半自伝的作品として書かれたんだろうなぁ(脚本はジャック・タチが



生き別れた娘のために書いたというの幻の作品であるらしい)。



 『ベルヴィル・ランデブー』は人物の絵がちょっと・・・と思って敬遠していましたが、



これは絵柄もジャック・タチ映画っぽかったので見てもいいかな、と。



 しかし配給にジブリがかんでいると知り、なんだか舌打ちしたくなる。 自分でも



気付かないうちに“アンチジブリ派”になっているようです(勿論、世界のすぐれた



アニメーションを日本に広く紹介するのだという趣旨には賛同なんだけど・・・



なんなんでしょう、カネのにおいとか妙な力関係を感じるからでしょうか)。



 さて、映画の舞台は1950年代。



   疲れ切った、楽屋。



 時代遅れの手品師・タチシェフはパリではもう仕事が見つからず、まだ彼の芸が



通じるところ(つまり辺鄙なところ)をめぐる旅に出て、スコットランドの離島に辿り着く。



大成功を収めるタチシェフだが、宿の小間使いアリスはタチシェフをすっかり本物の



魔法使いだと思い込み、彼の次の旅先についてくるのだが・・・という話。



 カラーのアニメーション映画ながら台詞は最小限に削り取られ、ほとんどサイレント



映画のような印象。 タチシェフはフランス人だから英語が微妙で、アリスもスコット



ランド訛りがきついのか会話があまり成立しないところもサイレントな風情の説得力に



なっている(結局、アリスの言葉は日本語字幕でも表わされてなかった気がする)。



 絵も細密ではないけれど終始ノスタルジックな美しさに溢れてる。



   いい雰囲気出てるよね〜。



 だから非常に叙情的なのですが、「世間知らず」といえば聞こえがいいアリスの



図々しさに非常に腹が立つ。 彼は魔法使いなのだからほしいものはなんでもねだって



いい、という思考回路がまずおかしい、ということに気づいて!



 また、彼女を傷つけたくないタチシェフはアルバイトをしてお金をつくり、彼女の夢を



かなえようとする。 マジシャンとしての仕事をせずに、だ。 本末転倒ではないか!



   まずはおしゃれな靴、その次は豪華なコート・・・。



 でもそれを重苦しさなどまったくなく描かれてしまうので、なんかノスタルジーに



騙されちゃうなー、という雰囲気もある。 タチシェフが身を隠すために飛び込んだ



映画館で『ぼくの伯父さん』が上映されているのはわかりやすすぎるオマージュですが、



この物語に出てくる人がいい人ばかりじゃない(完全な悪人というわけではないが、



だいたいの人はこずるさを持っている、という感じ)ってのもジャック・タチっぽかった。



 そして、同じ宿に泊まる大道芸人たちの豊かな個性とその悲哀。



 いつしか芸だけで食べていけなくなる彼らのアルバイト状況とか、面白いんだけど



なんだかせつないのですよね。 でもその感じを押しつけてこないのもいいバランスで。



 まぁ、『街の灯』の伝統にのっとって(?)、手品師の気持ちは報われることなく



アリスは勝手に自分の“幸せ”をつかむわけなんですが、決して二人に恋愛感情が



あったわけではなく、手品師もアリスに厳しい現実を最後には教えるところがまだ多少



観客としては救いがあるかなぁ。



   旅に出てからアリスが働いたのって、

    隣人に頼まれて(材料一切その人持ち)シチューをつくって下宿人の大道芸人

    仲間にふるまっただけのような・・・。 まぁもともと小間使いだから家事らしき

    ことはしてたけど、大概は新しい靴とコートでエディンバラの街をはしゃぎ

    まわってばかりな印象。



 タチシェフにはアリスのことなどとっとと忘れて地元に戻ってほんとの娘と一緒に



暮らしてほしいし、アリスには“生活”という“より厳しい現実”に今まで自分がどれだけ



恵まれてきたか、手品師の好意にどれだけ甘えてきたのか思い知ってほしいものだ、と



考えてしまうあたしは相当ひねくれ者?



 だって彼女がこのまま成長したとして、いつか手品師のようなことを他の人にして



あげられるとは思えないんですもの。 幼さもしくは無知故の無神経さが許せないのは、



あたしはまだ修行が足りん・まだ若いからでしょうか・・・それとも、「自分もかつては



そうだった」という自覚が足りないのでしょうか。



 なんとなく、反省。


posted by かしこん at 04:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする