2011年05月20日

積読本減らしキャンペーン続行中・・・C



『羆嵐』/吉村昭



 「とにかくヒグマは恐ろしいから気をつけろ」とは、幼少の頃から北海道に旅行に



いくという話になるたび繰り返しのぼる話題であった。 函館に遊びに行くだけでも、



である。 更に小学校の修学旅行だったりしたらヒグマが出るような場所には



行かないよ、と言っても「ヒグマは普通のクマじゃないから」と言われる。



 おかげで、ヒグマは恐ろしい、という意識が刷り込まれております。



 今はもういないと思うけど、子供の頃、地元のちょっとした公園にツキノワグマが



いた(動物園はありません)。 今思い返すと動物虐待と言われてしまうぐらいの



狭い檻だったような記憶なんだけど、そのツキノワグマも間近で見ると怖かった



(まぁ、狭いところに押し込まれて不機嫌だったんだろうなぁ)。 というわけで



「かわいいクマはプーさんとパディントンだけ」と割り切った意識になります(でも、



近くに山がある地方人はだいたいそういう感覚ではないだろうか)。



   ということを、この表紙を見て思い出した。



 本書はヒグマが開拓村を襲うという、大正4年12月に起こった日本獣害史上



最悪の惨事についてのドキュメンタリー。 死者6名(一人は妊婦だったので



正確には7名)という数字は『ジョーズ』以降のパニック映画と比較したら少なく



感じてしまうけれども、なにしろ事実ですからね。 恐ろしいことです。



 とはいえ筆致は淡々としていて、身の毛もよだつはずの前半も比較的さらりと



読めてしまい(あたしの感覚がおかしいのか?)、ヒグマ退治のために集まった



人々が疑心暗鬼になってパニックに陥る中盤(このへんのほうがある意味怖かった



・・・)、そして伝説の熊撃ち・銀次郎とヒグマの一騎打ちというクライマックスに



なだれ込むも、やはり文体は静かであっさりしすぎにも思えてくるのだが、下手な



動物パニック小説にしないためにはこのほうがいいのかなぁ。



 三人称だが、区長さんがすべての登場人物の内面を説明してくれちゃうのがやたら



親切である(だから彼がいちばんおいしいキャラクターであるともいえる)。



 銀次郎さん一人にポイントを絞っていたら、全編ハードボイルドになっていたかも



しれないとも思う。



 北海道は広い。 最近は全然行っていないけれども、とりあえず街中以外の場所



には踏み込むべからずという教えは、まだあたしの中にある。 研究室にいたとき、



助手の先生が「昔、学生の貧乏旅行でいろいろまわったんだけど、真夏の北海道で



ヒグマに出会って一目散に逃げた。 あのときは死ぬかと思った」という話で



みんなの笑いを誘っていたが、あたし一人だけ笑えなかった。 ぞわっと鳥肌が立ち、



「何事もなくてよかったですね」と空気を読まず真顔で言ってしまったなぁ、という



ことも思い出してしまった。



 とりあえず北海道の原野に憧れている人は、これを読んでください(そしてアラスカの



原野に憧れている人はジョン・クラカワー『荒野へ』を読むか、もしくは映画『イントゥ・



ザ・ワイルド』を見てください)。





『ブラック・アイス』/マイクル・コナリー



 ボッシュシリーズ第二作目。 これは原題そのままの邦題です(ということは作者は



『ブラック・〜』というタイトルで統一するつもりだったのかな、最初は)。



 ハリウッド署の殺人課にいるボッシュは、その日が当番にもかかわらず変死体発見の



連絡が自分に入ってこないことを訝しく思う。 実はそれが同じハリウッド署麻薬課の



刑事ムーアで、自殺したものと判断される。 ムーアは麻薬組織とつながっていた汚職



警官だというのだ。 そして何故かボッシュは捜査からはずされる。



 数週間前にムーアと会っていたボッシュは、遺体のそばに残されたメモ『おれは自分が



なにものかわかった』の意味とともに、ムーアの背後を探ることに。



   タイトルの“ブラック・アイス”はメキシコからの

                     密輸麻薬をあわらす言葉。



 が、もはやシリーズ二作目にして事件そのものよりも「ボッシュと彼をめぐる組織に



集う人々」とのやりとりがメインというか・・・いかに一匹狼として組織の中をすり



ぬけて生きるか、を描く話になっているような気がする(今後のシリーズもそういう



展開なのだろうか)。



 ラストのどんでん返しも「どこかで見たことがある・・・」というか、まぁ原著が



1993年なのでそれ以降のもので見ている可能性があり、あまり驚けなかったですが



(というか予想がついちゃいましたが)、「感動と寂寥感あふれるラスト」という解説の



“感動”にのれなかったあたしです。 寂寥感はわかりました。



 しかし、何故毎度毎度女性と恋に落ちるんだ、ボッシュ!



 きっとその関係も長続きしないんだろうな・・・と思わされちゃうかなしさもあり



(そのくせ「割り切った関係」の女性の存在もあったりする。 一匹狼は女性にしか



なぐさめを求められないのか?)。 なんだかんだ言いつつも、本当の孤独には人は



耐えられない、ということなのかしら?



 えーっと、三作目『ブラック・ハート』、待機中でございます。


posted by かしこん at 00:47| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする