2011年05月02日

わさお



 これはどうなのかなー、と企画を聞いたときにはダメダメ感を明らかに感じたの



だが、蓋を開けて見たら主役薬師丸ひろ子! 脚本小林弘利!ってことでなんか



ちょっと見てもいいかなー、という気になった。



   こう見ると・・・わさお、でっかい。



 舞台は青森県鯵ヶ沢町。 子犬をもらって大はしゃぎの少年はその犬をシロと



名付けいつも一緒に。 しかし、ある不慮の事故によって少年はシロに八つ当たり、



「お前なんかどっかに行っちゃえ!」と吐き捨て、困った父親は東京の妹にシロを



預けるのだが、少年と遊んだ記憶が残るシロは家を抜け出し、少年のもとに戻ろう



とするのだった・・・。



 むくむくの真っ白な子犬が、人に追い払われ、雨の中をとぼとぼと歩いて行く



場面(映画開始からまだ十数分)で、映画館からすすり泣きが。 あたしもちょっと



ヤバかったですけど、犬好きの方にはかなりくる映像かと。



 まぁ、ツッコミどころはあります。 何故父親は「シロのせいじゃない!」と息子を



叱らないのか、とか。 しかしそれは彼自身が自分で気づかなければならないこと



なのだというまとめにつながるのですが・・・そのあたり、小林弘利的世界観と



いうかそういうものにつながっているようで、手ぬるいと思いつつあたしはニヤリ、



なのです。



 そして時は流れ(とはいえ一年たってない)、鯵ヶ沢町でイカ焼き屋をやっている



セツ子(薬師丸ひろ子)は、ある日わさわさした毛の巨大な秋田犬を見かける。



 捨て犬を引き取り続けているセツ子はあまりに印象的すぎるその犬を密かに



“わさお”と名付け、引き取ろうとするが彼はまったく人になつかず、むしろ



孤高の存在のように現れては消え、消えては現れる。



 わさお以外の犬はちゃんとした動物プロダクションの犬なんでしょう、「そろそろ



年だし心配なのよね」と言われるセツ子さんところの一匹の犬の弱った感じの



名演技に度肝抜かれます(それ故、わさおの自然体が妙に浮いてみたり、逆に



孤高の存在に見えたり、不思議)。



   他の犬、かわいい。



 ちなみにあたし、曾祖父母の墓が鯵ヶ沢にありまして・・・イカ焼き通り(イカ



焼き屋さんが店を連ねている場所で、タレの味が一軒一軒違うのでそれぞれ



ご贔屓の店あり)を通るたびにイカを買ってもらっておりました。 子供だった



からね。 だからこの映画を見て思っていたのはずーっと「イカ食べたい!」でした。



関西のデパートが東北物産展やるなら、鯵ヶ沢の焼きイカ持ってくればいいのに。



しかし煙が出過ぎる・においが強いからダメなのだろうか? ちなみに映画では



焼きイカ一枚(当然ゲソつき)300円でした・・・安い(しかも食べやすい



ように切ってお皿に入れてくれていた。 昔はまるまる一枚を新聞紙にくるんで



終わりだったのに)。



 と、一夜干しの焼きイカに思いを馳せつつも、物語はわさお中心ではなくさびれ



つつある田舎町に暮らす人々にフィーチャー。 焼きイカを肴に飲みつつだべる



おじさん方(上田耕一・不破万作・河原さぶの三人が楽しすぎ! そして目立ち



すぎ!)、全然役に立たない釣り人(佐野史郎)、嫁がほしいがうまく気持ちを



伝えられない青年?(甲本雅裕)、気持ちはわかっているがどう答えたらいいのか



悩んでる幼馴染(鈴木砂羽)、やたらかっこいいオーラの獣医(大沢樹生)、



無口なマタギ(笹野高史)、などなどなかなかの豪華キャストなのです!



 過疎化も進んでいるのであろう数の少ない若者たち、おとぼけさんは出てくるが



悪人は誰ひとりとして出てこないのもまた、ファミリー向け映画だということを



差し引いても小林弘利ワールドだなぁ。



 まぁ、実際イカ焼き屋のおかみさんにあんなかわいい人はいないであろうが、



無口な夫(平田満)とはっきり会話してるシーンはないもののセツ子さんの見た



こと・思ったことがちゃんと伝わっているのがよくわかる場面が多々あり、



“いい夫婦像”な感じです。 今回の地震で全壊したという八戸港も元の姿で



ちょっと映っていたし、つくってもらえてよかったんだろうな、と思いました。



 途中、クマが現れるというシーンでは急に安っぽい着ぐるみ感全開なのがとても



わびしかったですが・・・子供たちはきゃーきゃー言ってたのでよしとしようか



(そう、これを見たときはまだ世間は春休みだったのです)。



 とはいえ、ツッコミどこもまた満載・・・ねぶたとねぷたの違いも知らない人



たちには大きく誤解を与えるであろう祭りとか、あんなコロコロの仔犬が一年



そこそこでわさおみたいになっちゃうのかよ!、とか、結構近くにわさおが



いるのにその存在に気づかない少年とか、そもそも少年の母の状態はどういう



ものなのか!、などなど、キリがありませんが・・・そこは薬師丸ひろ子の



かわいさとじーさま三人に免じて許しましょう!



   ま、わさおにも癒されます。



 そしてわさおのプロモーションビデオで終わることなく鯵ヶ沢のアピールも



含めて「地方に生きること」を話のまとまりがなくなることを承知の上で内容に



盛り込んだのであろうスタッフのみなさんの苦労もまた。



 しかし海辺のウミネコの数が半端ではないようで・・・(あたしには普通の



光景なんだけど)客席からはどよめきが。 まぁ、神戸港にはこんなにカモメ



いないですからねぇ。 日本は広い、を実感するため、地方発映画はまだまだ



続くだろうし、続いてほしいけど、脚本と世界観はしっかりしてくださいね。


posted by かしこん at 07:34| Comment(2) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする