2011年04月30日

アレクサンドリア/AGORA



 古代文明好きとしては素通りできない名前、アレクサンドリア(アレキサンドリアと



表記してたものもあるが)。



 アレクサンドリアといえば大灯台と図書館。 この物語は図書館の方を中心に展開



します(とはいえちゃんと大灯台は遠景に登場します)。



   セットや小道具にもリアル感!



 舞台は4世紀のエジプト。 図書館にはその時代の英知が集まり、多くの学生が



師について学んでいた。 その研究者の一人で天才数学者で天文学者かつ物理学者



(まぁ、当時はそんな学問的垣根はなかったのであるが)のヒュパティア(レイチェル・



ワイズ)はその才能と美貌から多くの学生(弟子か?)に慕われ、長老たちからも一目



おかれていた。



 学問の世界では男女の差はない先進性を誇るも、悲しいかなヒュパティアでさえ



「争いは奴隷や下層階級の者たちのもの」と言ってはばからないこの階級制度とは



なんなのだろう?、と早々にかなしくなってみる。



   のちのちカギを握る奴隷・ダオス



 とはいえ、レイチェル・ワイズは『ナイロビの蜂』に続いて女優ならば誰でもやりたいと



思うであろうヒュパティアを見事に演じてくれています。 もう、アレクサンドリアには



女性は彼女しかいないのでは?、と思わせる存在感です。



   実際“学者”の女性は彼女一人だったようだ。



 弟子のひとりオレステス(オスカー・アイザック)からは熱烈な求婚を受け続け、



彼女の奴隷ダオス(マックス・ミンゲラ)からも密かに慕われつつも、恋愛よりも



結婚よりも宇宙の真理を解き明かしたいと願った人。 彼女に起こる悲劇とその時代を、



ただの昔物語ではなく現在へと連綿と続く歴史の一部であると表現したアレハンドロ・



アメナーバルは、やっぱりすごいと思った。



 このころのエジプトは当然多神教である(自前の宗教がありますから)。 しかし



ローマ帝国が事実上世界を支配しており、キリスト教がじわじわと広まりを見せている。



ここで描かれるキリスト教の乱暴狼藉は今のイスラム原理主義とどこも変わるものは



なく、無宗教の人間としてはかなり不愉快な思いになるけど(こんなことしてたのに



今、キリスト教はイスラム教をたたくのか、的な)、その繰り返しもまた世の習いなのか



・・・むなしい。



 ただ、キリスト教の急激な広まりは徹底した身分階級制度の反動で(だからこそ



「神の前ではみな平等である」が説得力を持つ)、そこに気づけなかったのがアレク



サンドリア側の失態なんだけど、その報いが図書館の破壊なのか・・・というのは



非常にやりきれなくて、悲しい。



   図書館とはいえ、当時の本は巻物なんですよね。



 そのくせもうすでにユダヤ教とキリスト教は仲が悪い。 なんなんだ!、と大変



腹立たしい気持ちになっている(感情移入しすぎである)。 “邪教”という名目で



これまでの英知の結晶が灰になる・・・人類は何度同じことを繰り返すんだろう。



 と、めちゃめちゃ内容に入れ込んでしまうのは、セットもすごいしCGも使ってるけど



違和感がなく4世紀のアレクサンドリアがリアルに表現されているから。 奴隷や



下層階級に生まれてしまった人々の“人間とはみなされない生活”もしっかり描かれ、



キリスト教にひかれてしまうのも仕方がないという気にもなる(が、だからといって



改宗したからすべてOKというわけではないのであるが。 ここではキリスト教は



平等を唱えておきながらめちゃめちゃ男尊女卑なのだ!)。



 キリスト教徒・ユダヤ教徒に町を乗っ取られても、ヒュパティアは研究をやめない。



   地球の軌道を考えています。

      つまりこの時代に地動説は当たり前だったということで、軌道が円では

      説明のつかないことについて考えているわけです。



 女に活躍されてはキリスト教・ユダヤ教にとっては邪魔。 というわけで彼女は



魔女呼ばわりされることになり、悲劇はやってくる・・・のだけれど、伝わっている



ヒュパティアの最期よりもかなり救いのある扱い?になっていて、監督の彼女への



敬意と思いやりを感じました。 そして、彼女を守れなかった男たちの悔恨も含めて。



 こんなに強い信念を持って生きられるかな〜。



 壮大すぎて、悲惨すぎて、いろいろ考えさせられすぎて泣くとかいう映画ではない



ですが、どっしりとしたものを受け取った気持ちになりました。



 ハリウッドでは絶対につくれないであろう映画を、同じような規模の大作として



つくりあげたスペイン映画界、すごいです!!!



 ちなみに原題のAGORA=アゴラは“広場”の意味で「知の意見交換をする場」と



いうことでしょうが・・・昔、秋田駅前にあったダブルネーミング“アゴラ広場”は



今もあるのだろうか、ということをふと思い出してしまいました。


posted by かしこん at 07:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする