2011年04月24日

ヘヴンズ ストーリー/HEAVEN'S STORY



 今のところ日本映画最長!、と呼ばれる278分。



 この映画もまたアートヴィレッジセンターでした。 前半・後半でインターミッション



10分をはさむとはいえ、いすに座ってる状態がしんどかった・・・。 しかも一日一回



13:20〜のみで上映期間一週間、入場料¥2800である! それきついでしょ、って



ことで初めてこの映画館で前売券を買いました(それでも¥2000なんだけど、まぁ



映画2本見るのと同じと思えばいいか、みたいな)。 そのかわり土曜日も仕事の時期



だったので、チャンスは日曜日しかないわけで。 そういう意味では朝一上映じゃなくて



助かりました(起きれない可能性大)。



   世界が憎しみで壊れてしまう前に。



 全9章ということもあり、インターミッションもありで覚悟したほどの長さを感じた



わけではなかった。 でも、「日本って病んでるな〜」としみじみ思ってしまったのは



確かである。



 多くの人物が次から次へと登場し、断片的な出来事が積み重なり、それがいつしか



物語というタペストリーを織っていく。 『感染列島』の監督の方ですが、あくまで



この映画は長いから商業ベースに乗らないだけで、もともとエンタメ志向の人なんじゃ



ないのかな、という気がした(たとえ内面的にアングラなものがあろうとも)。



 一家皆殺し事件で、唯一外出していて助かった少女。



 祖父(柄本明)に引き取られることになるが途中で家族の思い出の地に駆け上がる。



車にいると思っていた孫がいない、と気付いた瞬間からの祖父の取り乱しよう、息子



夫婦ともう一人の孫を奪われた悲しみと苦しみを人に見せないようにしてきたのが



最後の一人をも失いかねないという恐れを前に感情が爆発するシーン、まったく



柄本明ずるすぎるというか・・・いい役をやってます。



 そして少女は電器屋?のテレビで妻と娘を殺されたが犯人が未成年ということで



無期懲役の判決を受け、「彼が出所したら僕が必ず彼を殺します」と発言している男



(長谷川朝晴)を見る。 少女の家族を殺した犯人はその場で自殺してしまった、彼女の



復讐対象はもういない。 だがいつか、彼の復讐を手伝おう。



 それが少女の生きる目的になるのだった。



 復讐屋を営む男(村上淳)が新たな依頼先に出向くと殺しの対象(佐藤浩市)は廃墟と



化した北の地の団地で最後まで抵抗を試みる。



 鍵屋として働く男(長谷川朝晴)は不本意な判決以来、抜け殻のような人生を送って



いる。 そして男に裏切られたばかりの客に難癖つけられ、振り回され、しかしその女



(菜葉菜)も不幸を背負っていることを知り、同情を覚える。



   そして、時が流れ・・・。



 成長した少女は復讐屋の息子と顔見知りになる。 そして男を探し出し、妻子を殺した



犯人(忍成修吾)が出所したことを告げるのだった。 しかし男にはもう新しい家庭が



あり、もう忘れたい気持ちと忘れられない気持ちに引き裂かれ、苦悩する。



 そんな前半のスピード感、すごい。



 一見無関係なように見えた人々がつながり、かかわっていく様子を季節の移り変わりと



ともに詩的な要素も絡めつつ疾走していくのだから。



 しかしインターミッション後の後半、その速度は明らかに落ちる。



 「加害者にも人権が・事情が」を描かれてしまっては、“復讐”の持つ緊迫感はなくなり、



ただ互いの気持ちに納得できない人たちの群れになる。 うわっ、我儘勝手に生きた



やつのほうが勝ちなのか?、と感じさせられる部分もあり・・・しかし“とにかく



自分が生きるため”というしたたかさにはそういう部分も必要なんだろうけど、と



げんなりさせられたりもした。



 ひよったわけではないと思うし、最初からすべてのキャラクターを分け隔てなく



描くつもりだったんだろうけれど、観客としてはただむなしさだけを引きずることに



なり・・・つらいです。



 役者のみなさんの熱演がせめてもの救いでございました(忍成修吾に「人間として



付き合いたい」と時間をかけて彼の心を開かせた女性役の山崎ハコさんのパワーが



失速した後半の吸引力になりましたが・・・彼女の思い出の地が廃墟と化した



団地なので・・・はっきりとは描かれない部分を想像すると誰しも闇を抱えすぎ)。



   「初めて信頼できる人に出会った」

        ならば愛する者を突然奪われる憎しみも想像できるだろうに・・・

        それとこれとは別、なのが所詮人間の弱さなのか。



 映画的にも最後には希望を、と考えたのか、物語上のルールを破り、なんと少女に



救いを与えてしまいます。



 これはちょっと、いただけない。



 そして語りすぎのエンディングテーマも、無粋すぎでした。



 前半はよかったのに・・・けれどこの映画が提示する“罪と罰”・“生と死”は確かに



重いし、考えさせられる(ただ、死んでいく者と生まれいずる者との対比はあまりに



ありがちというか、陳腐だ。 あたしはこういうまとめが苦手なのだ。 江口のりこさんは



またも無愛想仏頂面だったし)。



 というわけで、いろいろ考える。



 下手にきちんと完成した映画だったらここまで引きずらせるだろうか・・・そう



考えれば、未完成・未成熟な作品であるが故に届くものがある、ということなのかも



しれない。 面白くなかったわけじゃないですよ。 ただこれだけの時間があっても



まだ語られてない部分もあるわけで・・・キャラクター多すぎたかなぁという部分も



あれど、人生で出会う人のことすべて把握できるわけじゃないし、一瞬の交差の意味も



あるのだろうなぁ。



 というわけで賛同できない箇所はあれど、キライになれない。



 このような映画をつくれる余地があるのなら、日本映画界もまだ大丈夫かなぁ、と



思えました(前の『海炭市叙景』の存在も含み)。


posted by かしこん at 06:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする