2011年04月13日

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『誤解でございます』/松永美穂



 『朗読者』の翻訳者でもあり、ドイツ文学研究者として大学に籍を置く筆者の



エッセイ。 帯に、“エレベーターの「5階でございます」が「誤解でございます」と



聞こえるようになってから気になって仕方がない・・・”的なことが書いてあったので、



翻訳者特有の面白話が詰まっているのかと思ったのです。



   なんか表紙もそんなイメージを助長。



 そういう翻訳家的エピソードもあるのだが、面白小話中心というわけではない



(というか笑えるところは帯のエピソードだけかも・・・)。



 それよりも筆者の学生時代からの私生活を綴る部分のほうが興味深かったかも。



 ぼんやりとではあるが研究者を目指していながらも、大学院生時代に妊娠・結婚



(あえて書いていないのかもしれないが、それに対するためらいめいたものが見ら



れない。 「当時はできちゃった婚などという便利な言葉はなかった」と書いて



あるところを見ればいろいろ苦労はされたのだろうが・・・)。 はっきり言って



就職も厳しく、先の見えない昨今ではある意味考えられない生き方である(やって



みればなんとかなるのであろうし、実際そうやってる方もいらっしゃるでしょうが)。



 昔の人は(といってしまうのは失礼だが)あまり先のことを考えて生きてなかった



んじゃないだろうか。 今は、みんな、考えすぎてる。 だから少子化なのかもな、



と納得したりして。



 子供と母親を連れてのドイツ留学、同じく研究者である夫からの経済的・精神的な



自立とか(なんだかんだ言いつつ子育ては女性のほうに負担が掛かる社会的重圧・



それを男性側も女性側も当然と思ってしまうことなど)、今から見て変わってること



・変わっていないことがこの2・30年のスパンでもあるんだな、と。



 が、いちばんの読みどころはドイツ留学中に知り合った人々との交流(その後も続く



人たち・途絶えてしまった人たち)のあたりかもしれない。 東西ドイツが統一され、



世界的には華々しい出来事に思われたベルリンの壁崩壊。 けれどその土地に生きて



いる人たちにとってはそれより重要なことがあって。 重い筆致ではなくあくまで



さりげなく書かれているのでさらっと読み飛ばしてしまいそうだが、筆者のかつて



出会った人々への愛情は深い。



 そして翻訳家の人は専業では食べていけないんだな・・・というかなしい実態の



産物でもあったりする・・・。





『海に帰る日』/ジョン・バンヴィル



 なんで男性というのもは女性に永遠の憧憬を抱き続けるのだろうか?、というのは



女性から見たら結構な謎であります。 「母親から生まれたから」だけで説明がつく



問題なのか?



 年老いた美術史家マックスは妻の死から立ち直れず、日々混濁の中にいる。



 幼いころから続く記憶に吸い寄せられるように海辺の町へ。



   勝手に、読む前のイメージは

              ブラッドベリの『みずうみ』みたいなのかと・・・違った。



 マックスの現在・過去が縦横無尽に入り乱れる内容(一行で何十年も飛ぶ)は、



“思い出のみに生きている老人の繰り言”でしかない側面もあるんだけど、それが



まるで幻想文学のような文体で描かれるとこうも格調高くなるか、みたいな見本の



ような作品で、2005年のブッカー賞受賞作品だそうです。



 でも妻を筆頭としてかかわりあった女性たちについての描写がほとんどということで



あたしの冒頭の謎につながるわけです。 女性側からそこまで男性に固執したものって



あまり見られないような(特定の個人に向けられるのはあるけど、男性全体というのは



・・・)。 そこもまた、女性と男性の違いなのかしら。



 実は読み始めからずっとフランスの小説だと思ってて、文中で引用される慣用句が



英語なので「あれ?」と思い、裏表紙とか折り返しをよく見たら作者はアイルランドの



方でした・・・原文、英語じゃん(そもそもタイトルは“The Sea”だし)。



 というわけで“雰囲気が大事”な物語でした。 後世まで残るかどうかはわからない



けど、この独特の文体を操れるのはすごいことだろうなぁ、と(原文で読んでないので



あれですが、訳者の村松潔氏は他でこんな風に訳したの見たことないから原文の特徴を



踏まえているのでしょう)。 “作家の好きな作家”って感じ、です。


posted by かしこん at 15:20| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする