2011年04月03日

ヒア アフター/HERE AFTER



 日本では上映中止になってしまいましたが、地震の起こる前に見ていたので極力



そのこととは絡めずにただ映画の感想としてまとめてみたいと思います。



 フランス人ジャーナリストのマリー(セシル・ドゥ・フランス)は南の島での休暇中に



大津波に巻き込まれ、臨死体験を経てかろうじて生還。 それ以来、日常に戻っても



あの日のことが頭から離れない。



   九死に、一生。



 一方、アメリカではかつて霊能力者として華々しく活躍していたが疲れきってしまい、



静かな生活を送りたいと願うジョージ(マット・デイモン)がいて、けれど彼の兄は



弟の苦悩を察することなく今も金蔓にすることを考えている。



   いい感じに“孤独”を表現。



 そしてイギリスではアル中の母親を懸命に支えて今の生活を守りたい双子の少年



たち(ジョージ&フランキー・マクラレン)がいるが、不意の事故で兄が亡くなり弟の



マーカスは「どうすればもう一度兄のジェイソンに会えるのか」の意識にとりつかれる。



   オーディションで選ばれたほんとの

     双子だそうですが、暗めのまなざしがこのキャラクターにぴったりです。



 この三人のそれぞれの生活が描かれ、いつしかそれがひとつに交わりあう偶然と



いう名の奇跡を描いたこの映画、スピリチュアルを扱いつつもそれを否定も肯定も



せず(生きる上で楽ならば信じるのもやぶさかではないがそれを利用して気持ちの



弱っている人から金をむしりとろうとする悪徳業者?には冷たい視線を送っている)、



むしろそこにはあえて踏み込まずに「今生きている人にとって大切なこと」にポイントは



絞られている。 そこがニュートラルでよいなぁと思った。



 まず、冒頭の大津波のシーンはど迫力ですが、地震後の目で思い返せばつくりもの



観は否めないんだけど、水の迫力・なすすべもない人の力、というのはよく描かれて



いると思った。 ただいかんせん美し過ぎるんですけど(津波の水はあんなに透明



ではない)、彼女の感じたものを描くにはそうするしかなかったのはわかります。



 多分リアリストであったマリーにとって臨死体験は「周囲に話して理解してもらえる



とは思えない話」なんだろうけど、だからってそんな体験をした自分だけがわかる、



みたいな妙に自意識過剰な感じが日常に復帰してからの彼女にまとわりついていて



いらいらさせられる(が、これがのちに同族嫌悪というか、そういうものだったん



だなぁと自分自身の態度によって気づかされることになりますが)。 何故まわりの



人を信用しないんだろう、なんで自分の殻に閉じこもるのだろう、と(PTSDは



明らかなのだから病院行け、的な。 しかし彼女はそんな自分の“弱さ”を認めること



自体拒んでいるように見えた)。 なのでマリーに対するイメージはあまりよくありません。



 それに対してジョージ、彼が“静かな生活”を願うことはとてもよくわかり、無神経な



兄貴にイライラ。 新たな行動に出ようとイタリア料理教室に通い、気の合う女性



(久しぶりのブライス・ダラス・ハワード!)と出会っても彼女が彼の能力を知って



「私のも見て〜」とか言っちゃうもんだから結果的に彼女は逃げ出してしまう(でも



あれは彼女が悪いと思うわ)。



 と、人間関係・男女関係の基本についてもイーストウッド御大からアドバイスあり。



 双子たちは母親がアル中であることを社会福祉局に懸命に隠そうとがんばって



いる。 ばれたら母親は保護者として不適格だからと施設に行かされるか里子に



出されることを知っているから。 それがもう痛々しくて・・・なんで、子供に



こんなに当たり前に頼る大人がいるのか・・・でも、この母親を極端に責める描写は



ない。 結果的に兄を事故死させてしまった不良少年たちのその後も描かれることは



ない(とんでもないことをしてしまった、的な表情をするところは映るけど)。



   一人になったマーカスの葛藤に、

                   あの救いをもたらすのは必然。



 兄が死んだことで悲しみに沈み、弟のことは気遣えない母親では無理と結局弟は



里子に出されることになるが、里親慣れした人と社会福祉局の人のいい意味での



ドライさと、声高ではない気遣いが光るけれども日本人的感覚からしたら冷たいと



映るかもな・・・。 誰も責めない、それがこの作品のテーマなのかしら。



 ディケンズ好きのジョージが現実逃避を兼ねてロンドンに飛び、訪れるブックフェア。



 マリーは体験談を本にして会場でサイン会、ネットでジョージの存在を知っていた



マーカスはジョージがロンドンにいることに気づき、まとわりつく。



   初めての握手の意味。



 そんな三人が出会った結果は。



 ラストシーンはとってつけたようなハッピーエンド感で、特にマリーに好印象を



持てないあたしとしては「安易すぎでは・・・」と思っちゃったんだけど、希望ある



終わらせ方をしたいのであればそうするしかないのかもなー、ともわかるし・・・。



 死んだ人たちの気持ちはわからないけれど、残ったものは生きていかなければ



ならない。 死んだ人たちはみな愛する人々のことを考えているのだと信じることが



生きている者たちの支えになるならそれでいい、ということか。



 それでも、生きていく。 そして生きていくことに罪悪感を持つ必要はない



(生きているものは幸せになるべきだ)、というメッセージです。



 早く、この映画が再上映される状況になってくれたらいいのに・・・そう願わず



にはいられません。


posted by かしこん at 18:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする