2011年03月09日

洋菓子店コアンドル

 見終わったら、というか見ている間、ケーキ食べたくなるんだろうなぁ・・・と覚悟して見たのだが・・・思ったほどそうはならなかった。

  洋菓子店コアンドル1.jpg こんなシーンはない(ポスター用)。

 突然連絡を絶った幼なじみのいいなづけ海くんを訪ねて、なつめ(蒼井優)は鹿児島から上京、彼のパティシエ修行先である“洋菓子店コアンドル”に来る。 しかし彼は修行二日目にして逐電、行方は知らないとオーナー(戸田恵子)は言う。
 しかしこのまま帰れないなつめは他に頼れるあてもなく、アルバイト募集の貼り紙を見つけるや「こちらで働かせてください!」と頼み込む。 実はなつめの実家はケーキ屋で、ケーキづくりには自信があるという。 では・・・と試しにつくらせてみたチョコレートケーキは「クリスマスに街頭で売ってるやつ」。 たまたまその場に居合わせた伝説のパティシエ、しかし今は料理学校の講師とケーキ評論家である十村(江口洋介)からも「仕事が遅い、クリームがゆるい、シロップの打ち方にムラがある」と一口食べて一刀両断。

  洋菓子店コアンドル7.jpg 不穏な、出会い。

 が、負けず嫌いのなつめは海くんを探し出すまでは、と強引に住み込みで働かせてもらうことになったのだった。
 そしてオーナーが差し出したチョコレートムースの味にも感動して。
 このなつめちゃん、いくら蒼井優でも許せないくらい無茶苦茶勝手で、世間知らずというか田舎でちやほやされて育ったのか?、というくらい「身の程知らず」。
 いくら先輩(江口のりこ)が無愛想でつっけんどんな性格だからって上から目線で接してどうする! コアンドルのケーキを食べて自分の腕の未熟さを知ったはずなのに「え、やらせてもらえないんですか?」とか言う。 果てはやっと見つけた海くんに対する発言が・・・無神経すぎて海くんがあまりにかわいそうになった。
 しかし、その夜の「男より仕事をとります!」発言時のなつめの言動は“ザ・蒼井優”の真骨頂! 感情をぐっと押さえ込む、泣きたいけれどそれを笑いに変える、全部自分で飲み込んで立ち上がる。
 そういう、「がんばる女子」にあたしは弱い・・・。

  洋菓子店コアンドル2.jpg そして仕事に打ち込む。

 そしてその場にいたオーナーもとってつけたようななぐさめも言わないのよ。
 女って、大変よね。
 そう、この映画には大きな感情のうねりがあるわけでもない(いや、ないわけではないんだけど直接描写は避けられている)。 淡々と、普通の人が普通の日々を暮らすような感じで、過剰さをあえて抑えている。 だからケーキを食べたいと思わなかったのかな〜、ケーキのおいしそうな感じすらも、抑えられているような気がした。

  洋菓子店コアンドル3.jpg こんな料理学校の先生、イヤだ・・・。

 江口洋介は主役というには出番は少ないのだが・・・最初の登場シーンから「あなた、鬱かなんかだよ、病院行けよ!」と思わせる不穏さを漂わせていて過去の傷のことはあとあと説明されなくてもわかってるよ!、という感じ。 これはうまさなのかやりすぎなのかどっちだろ・・・で、せっかく全体的に抑えたトーンできてたのに一部凡庸な幻覚シーンがあり、微妙にげんなり。 深川監督の作品、最近割合続けて観ていますが(『半分の月がのぼる空』『白夜行』)いいところまでいってるんだけど全体的にあと一歩というところなんだよな・・・(ただ、この作品では抑え気味のおかげで江口洋介が取り乱す回想シーンのショッキングさが活きるわけなんですが)。
 前半が丁寧すぎるのかな・・・後半が急ぎ足のような、でもストーリー的に急いでるわけではないので説明不足なのか。 なんか微妙に納得のいかないところがあり・・・せっかくの伝説のパティシエの腕もよくわからず、しかもつくったデザートがなんだったのかもよくわからないという・・・。
 それにしても、はっきり表だってはいないんだけど東京洋菓子界全面バックアップ体制がものすごくて、「きゃー、ピエール・エルメ! あ、柴田書店だ!」などとあたしは内心歓声を上げておりました。 そういうところはすごく楽しかったが・・・関西ではあまり通じないお店が多かったかなぁ(アンリ・シャルパンティエ銀座店ぐらいでしょうか。 でも銀座店は本店は芦屋であることを明確に公表してない感じがするんだけど)。
 「あえて語らない」という姿勢は好きなんですが・・・描き過ぎなところと省略しすぎなところのバランスがもうちょっとうまくいったらいいのになぁ、と思ったり。
 でも鈴木瑞穂さん突然の登場には衝撃を受け、そのもたらすエピソードにちょっと泣いてしまいましたよ。 そう、完璧なものを食べたいのが人情。 でもいつも100点のものばかり食べていると、60点でも荒削りな勢いを感じさせるものに出会うと妙に新鮮なんですよね。 そして100点をときには退屈だと思ってしまったり(でも戻ってみたらまた同じ味で安心したり)。 勝手ですわ、消費者は。

  洋菓子店コアンドル5.jpg それでも試作を続けます。

 『時効警察』のときとはまた一味違う江口のりこの仏頂面&口の悪い不器用ぶりと、別な方向に口の悪い蒼井優との“仕事上の仲間としての友情”はいかにも女の子っぽくなくてべたべたした感じがまったくなくて好きですが、でももうちょっとお互い敬意は払いましょうよ・・・と思っちゃったあたしは外面も大事なおばちゃんになり下がってしまったのかしら。 若いのだから、それくらいでいいのかもなー。
 そして職人として生きていこうと思ったら、強い自己主張ができることはすごく大事なことなわけで。
 意外とタイトルとは関係ない、人々の再出発を描いた映画だったなぁ。
 おいしいケーキは人を幸せにする。 ほのかな救いもまた、しかり。

ラベル:日本映画 映画館
posted by かしこん at 02:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする