2011年02月24日

モンガに散る/MONGA

 「『モンガに散る』ってタイトルも、まず、モンガってなんやねん!って感じですよね〜」と、上映してくれた三宮シネフェニックスの支配人Mr.T氏からこれをどう宣伝していいかわからないご苦労をうかがう。 たまたまロビーで会い、少しお喋りをさせていただいたのでした(『完全なる報復』を見に行った日ですね)。
 実は少し前に沢木耕太郎の映画評コラムで『モンガに散る』が取り上げられていたのを読んでいたのであたしは知っていたのですが(しかし沢木氏のコラムも毎回結構ネタばれなので、ちょっと考えてほしいなぁと思う)、確かにそうですよねぇ。
 しかも『戦火の中へ』と『男たちの挽歌』のポスターと並んでいたのでこれも韓国映画だと思い込んでいる韓流おばさまもいたし。

  モンガに散るポスター.JPG これは台湾映画です。
 間違えないでください! そして台湾映画は中国映画でもありません! これは映画文化上のはっきりした区別であります。
 ちなみにモンガとは、台北一の繁華街でありながら多くの極道組織が縄張りを持つために日々抗争の絶えない地域で、もともとは“小舟が集まった場所”という意味であったらしい。 日本でいえば歌舞伎町?
 予告とタイトルの感じから、“闇社会でしか生きられない若者たちの悲劇”という印象だったんですが・・・冒頭から「?」マークが飛ぶポップな展開。 まるでクドカンが脚本を書いたかのようなテンポ・省略・巻き戻しで、「え、実はポップなヤンキー話?」と目が点になりました。 しかも時代がわからん・・・と思ったら、1986年と。
 過去にいろいろあったのだろう、目立たず地味に高校生活を送りたいと思っているモスキートは転校初日からいじめっ子(?)に弁当に入っている好物の鶏のモモ焼きを横取りされ、それを取り返してしまったことで集団で襲われる。
 そのうまい逃げまどいっぷりを気に入ったドラゴンとその仲間は、モスキートを自分たちの仲間に加えることにして、ここに“桃園の誓い”的5人の義兄弟が誕生。
 実はドラゴンの父親はモンガで最大勢力の極道“廟口”のゲタ親分の息子で、学校内で彼に逆らえるやつはいないのだ。

  モンガに散る2.jpg 前半は、「バカ五人衆」。
 そうして仲間たちとともに青春を楽しむモスキートは学校に行かなくなり、ごく自然な成り行きで極道の道に入っていくことに。
 しかし驚いたのは、モスキートが父の遺品と思って大事にしているのが富士と桜の絵ハガキであること、酒飲みながら彼らが遊ぶのはスーパーマリオブラザーズ、「桜の花、見たことあるか?」という問いかけ・・・こんな映画にも、台湾の人の“日本への憧れ”が描かれている! そして大陸者たち(中国から来た者)がでかい顔をしていることへの不満がもともと台湾にいる人々の間に生まれている。
 時代的なものもあるだろうけれど・・・こんなにも日本を愛してくれる国に対して日本はなんてひどいことをしたんだろう、と本筋とは関係ないところで泣きたくなってきた。
 ディスコでエア・サプライの『渚の誓い』がかかっていたり、台湾は西洋の文化も自由に取り入れることができていたんだなぁとわかる。 現地の歌手の方がそのまま英語でカバーしてるバージョンも流れるし(それもなかなかよい出来です。 同じ時期の中国ではそんなことは許されなかっただろうし、今でもどうなのか?)。
 そして1987年になり、映画は第二章に入るかのようにぐっとトーンが変わる。
 ポップなところが影を潜め、「いかにも暗黒街に生きる」という感じに。
 ゲタ親分、どこかで見たことがあると思ったら『海角七号』の議長さんではないか!
 最初は人のよさ丸出しで登場したが、さすが親分なだけあって残酷かつ冷酷な顔をすぐに見せるのでひょえーっとなる。 いい人っぽい人が実は怖い、っていうのがいちばん怖いよなぁ。
 とはいえ、“壮絶な青春映画”という主旨は変わらず・・・ボスの息子ながら実は人の上に立つ器なのか疑問なドラゴン、誰よりもリーダー気質で頭も切れるのにドラゴンを子供の頃から慕っているためにサポート役に徹することに疑問を持たないモンク、という二人の関係がモスキートというあとから入ってきた者の目から描かれることでそのあやうさが浮き彫りになる。 結局、そのあやうさが悲劇を生んでしまうわけだけど・・・。

  モンガに散る1.jpg 結局、「血は水よりも濃い」のか・・・本意ではないはずなのに、親や親戚同士の確執に巻き込まれていく。
 で、モンク役の方が大変かっこいいので(演技もなんかうまいし)、彼が主役なのかと錯覚する場面もあり。 いや、むしろ彼を主役にドラゴンとの関係を掘り下げて映画にしても、それはそれで面白かったんじゃないかと思うなぁ(義兄弟的モチーフからはちょっとはずれてしまうけど。 そしてモスキートの苦悩も薄らいでしまうのだけれど)。

  モンガに散る4.jpg ドラゴンとモンク。
    同性愛的空気がそれほど強く感じなかったのもよかった。 でもそれも彼らの若さというか幼さ故であるという気もするし・・・せつない。
 ちょっと予定調和というか、おさまることろにおさまってしまった感のあるラストだけれど、それもまた“極道”という道を選んでしまった彼らの人生そのものを覆う閉塞感だったようにも思えるし。
 義兄弟ってなんなんだろう・・・と考え込んでしまうモスキートの最後の選択。

  モンガに散る3.jpg 友情でもなく、仲間でもなく、そんな表現では追いつかない関係とは?
 結局、家族ということなのだろうか・・・それとも家族以上のものなのだろうか。
 が、彼らにはほかによりどころになるものがなかったのだから、他の選択肢はなかった。 だからモスキートは幻覚の中で、一瞬のためらいを見せながらもやはり5人で壁を越えることを選んだのだろう。 なのでひどい話ではあれど、奇妙な爽快感はある・・・そこがまさに“青春映画”。
 この映画からほのかにたちのぼる“日本への思い”がなければここまで心えぐられたか?、といわれると即答できないんだけれど、けれどそのモチーフなしではこの映画は成り立たないわけだし、なのであたしは「台湾映画を応援しよう」の立場をこれからも取るつもりです。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 01:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする