2011年02月13日

ドキュメンタリー、つづき

『イルカと泳ぎ、イルカを食べる』/川端裕人
 イルカ・クジラ類は好きだし一緒に泳ぎたい夢もあるが、食べることにも抵抗がないという筆者が、人間と野生動物であるイルカとのかかわりを様々な土地を例にとりまとめてみた一冊。 まぁ、平均的な日本人のスタンスに近い立場ではないかと思います(まぁ、筆者のイルカ好きは平均以上ではありますが)。
  イルカと泳ぎ、イルカを食べる.jpg もうちょっと鮮明な写真がよかったけど。
 イルカは人と感情を通い合わせる特別な存在、と認識されたのが西洋でも比較的最近、というのが興味深かったです(そして一度交流しちゃったら相手に人格を与えてしまうことも)。 結局、ヒーリングやらスピリチュアルの象徴としてイルカが扱われているから、攻撃的な保護派はあんなにも過激なんだなぁ、と。
 ちょっと前までそういうあなたたちの国でもイルカやクジラはバンバン殺されていたということをちゃんと知っているのかしら?
 少なくとも日本人としては知っているつもりでしたが・・・日本の漁業の歴史においてかなりグレーなイルカ漁もあったと知り、イヤな気持ちに。
 以前読んだ『イルカを食べちゃダメですか?』では太地町の漁師さんだけが取材対象だったし筆者は漁師さんたちが大好きになっていたのでそういうことは書かれてなかったのですが(まぁ、グレーな漁港は東北だったので太地は違うみたいですが)。
 うーむ、あたしの住んでいた北東北ではイルカ肉は身近に流通してなかったけど(サメやエイはあったけど、それとも気付かないだけだったのかなぁ。 クジラ肉として売られていたのか? でもクジラもそんなに多くなかったけどなぁ)・・・同じ北東北でもイルカを常食にしている地域があるんだなぁ。 日本の食文化はほんとに狭い範囲で変わるものですね。
 「御蔵島、がんばれ!」と読んだ人がみんな思うであろう章では、ドルフィンスイムの案内をする島の漁師さんが「なんでイルカだけが特別なのか?」という根本的な疑問を持ち続けているというのも興味深かった。 御蔵島はカツオドリの数少ない繁殖地で、カツオドリが特別だというならばわかるが普段から島のまわりにいっぱいいるイルカが特別なのが納得いかないご様子なのです。 気持ち、わかります(あたしもねぶた祭りがすごいというのがわからないから)。 ただこの取材はかなり前のものなので、今も御蔵島では三宅島からの妨害に負けずにドルフィンスイムツアーを続けられているのだろうか・・・と心配になってます。
 かなりニュートラルな立ち位置で書かれた本書、文庫版では『ザ・コーヴ』への反論というか、むこうの主張から取り入れるところは取り入れるけど事実誤認な部分にははっきり反対する、という長めのあとがきが収録。
 あくまでニュートラルな立場を貫くのに対して解説の森達也が「私は絶対イルカを食べない」と断言して微妙に台無しに(なんでこの人に解説頼んだのかなぁ)。
 まぁ、これ読んでどう考えるのかは読んだ人次第ですよ、という本なので森氏の感想は間違いではないが、“解説”ではないという根本的なことに気づいてほしいものです。
 あたしはイルカ好きですが・・・シャチのほうが好きだし、品川のアクアスタジアムのイルカショー見て泣いちゃうけど、それはイルカたちのけなげさが胸を打つからであって同じことをシャチがしたらもっと大泣きであろう。
 ガラパゴスウミイグアナが海中で藻をはむはむしている姿に癒されるし、近所をとことこ歩くネコを見てもニンマリする。 身近でも身近じゃなくても、生き物の姿は何かを与えてくれると思うんだけど・・・何故、イルカだけが特別なんでしょうね。 人間が生きていくうえで他の動物の命をもらうことは必然なのに(そういう意味で「ベジタリアンだから」も体調やらご病気などが理由以外の人は信用しません。 植物だって命じゃ!)。
 ところで“生物多様性”という言葉、最近やたら使われますが・・・“生態系”で別に問題ないと思うのですが、用語も一歩踏み込まないと人々に伝わらないということなんですかね。 日本近海にいるイルカを“海産資源”と考え、“資源の保全・管理”という視点での今後の漁業の意味を訴えるのはよいと思います。 でも外国人にその考え方が伝わるだろうか・・・本人たちが好きな“種”への保護熱の偏りをIWCなどで指摘できるのか、水産庁の方々の努力と見識が問われます。


『切除されて』/キャディ
 もともと存在は知っていたのだけれど、詳細を知るのが恐ろしくて、でもずっと心に引っかかっていた。 『デザート・フラワー』に触発されて、やっと手に取る。
  切除されて.jpg 切除手術を受けさせられた後の写真だそうです。
 筆者はセネガルのソニンケ族出身で、7歳のときに女性器を切除されている。 
 こういうのはなんだが、クリトリス切除だけで同じく“女性器切除”と呼ばれる種類の中では比較的ましなほうではある(こんなことで“まし”と表現するのもはばかられるが・・・切除するのが女性だったり、カミソリが新品だったり、それなりに消毒やら傷跡の手当てをするだけソマリアなどでされている方法よりましはましである。 だからといって許されることではないが)。
 13歳のとき親族に決められた見たこともない相手と結婚させられフランスに渡り、暴力的な夫の家族手当ほしさのために次々子供を産ませられる。 セネガルはかつてフランス支配だったこともあり、フランスにはアフリカ人移民コミュニティがあるのだ(フランスの移民問題ってそういうところから端を発しているのか・・・)。
 FGM問題の話なのだが・・・あたしはこの“家族手当”に引っかかりを感じた。 子供のためのお金なのに、妻に一銭も渡さずすべて自分の懐に入れる夫(しかもこの夫はフランス語を理解することもなく、コミュニティの中の男同士の世界の中で完結している)・・・これが今の日本の“子ども手当”の行く末じゃないと誰が言える? というわけで“子ども手当”には断固反対です。
 筆者は学校にも通い、フランス語を話せるようになり他の人々と話す機会が持てたから問題意識を認識できたけれどあくまで特例。 多くのアフリカ人女性は因習と親族からの重圧で自分の意志を自由に発言することもできない。 暴力をふるわれても黙って耐えしのぶ。 筆者自身ですらも「おかしい」と思いながら親族の説得に従って一度飛び出した家に戻ってしまったこともある。 ある意味、洗脳なのだ。 自分が切除されたことに恨みや抵抗感を持ち続けているにもかかわらず、自分の娘たちにも同じように切除させてしまったぐらいなのだから(はっきりと問題に目覚めてからはとても後悔し、自分を責めているようだ)。
 FGM推進・擁護派は「宗教上の決まりだから」と言い張っているようであるが、イスラム教の経典コーランにはそのような記述はないそうだし、そもそも国や部族でその切除手法が異なっているということ自体「土着の慣習である」という証拠ではないだろうか(そんなことをしない部族もあるのだから)。
 結局、男が女を都合良く利用するための方法。
 はっきり言おう、今の日本は恵まれている。 日本での男女差別・女性蔑視など一部のアフリカ諸国に比べたら申し訳ない程度である(だからといって肯定するわけじゃないが)。 夫婦別姓がどうのと叫んでる日本のフェミのみなさん、まずはアフリカ女性のために全世界が手を組んでこんな習慣を一掃させましょうよ! 日本国内の問題はそれが片付いてからでも遅くないですよ、日本ではある程度意識問題は浸透してるんだから、法的な効力をつくるよりも個人の良識を強化するほうが大事でしょう。 真に女性の自立を願うなら、今も自分の意志とは関係なく性器を切除されてしまう女性・それを許可してしまう親・強制的な結婚は間違いであるという教育をイスラム教指導者たちに働き掛けるべきで(外圧だけでは意地になられるので)、それが広まることは日本にもいいリターンになると思う。
 また本書では「性的なよろこびを知る前から奪われた」みたいな感じのことが再三出てきますが・・・問題はそこじゃなくて(だったらどこの国でも生涯処女である女性は人間として欠陥ありということになるじゃないか)、たとえどの部分であろうとも勝手に傷つけるのは犯罪であり人権侵害であり、医学的な安全も保障されていない以上殺人につながる傷害事件だということです。
 ・・・女性の中でも意思統一が難しいなら、男性側を変えることはもっと難しい。
 いつまでも既得権益にぶら下がるのはやめて、自国の文化を守りたいのなら明らかな犯罪からは手を引く努力をしなければ。
 エジプトでムバラク大統領が辞任し、国外逃亡したことで「民衆の勝利!」と盛り上がっているようですが・・・国の実権を握るのがムバラク氏が後継を指名した副大統領と軍だというのでは民主主義には程遠いと思うのですが。
 ほんとうに民主主義を実践したいなら即・選挙でしょうよ。
 ムバラクを追い出したことだけで満足してるなら、遠からずエジプトは混乱の渦に巻き込まれるもしくは混乱を引き起こすことになるでしょう。
 一体、それを誰が助けるというのでしょう?
 「中国が沖縄を占領するのを世界が黙って見てるわけないんだから、尖閣ぐらい明け渡したって問題ないでしょう」などと発言するバカは侵略されたチベットを結果として誰も助けられていない、ということを知らないのか?
 それとも自分に目先の金があれば満足な、国家観のないただのバカか中国側に買収されているのかどっちなのか白状しておいた方がいいと思う。

posted by かしこん at 17:15| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする