2011年02月04日

エリックを探して/LOOKING FOR ERIC

 ケン・ローチ監督といえばあたしにとっては『麦の穂をゆらす風』
 泣くことも許されないほど重くて痛々しい作品でそのイメージが強いが、なんかこれはコメディっぽいじゃないか、希望に満ちてそうじゃないか、ということで見ようと思った。
 郵便局員エリック(スティーヴ・エヴェッツ)は何をやってもうまくいかない日々に絶望していた。 若いころはあんなに輝いていたのに。 別れた最初の妻を今も愛し続けているのに何もできず、再婚したけどまた失敗し、息子たちにはバカにされ、なのに盗み見たかつての妻は今も変わらず美しい。
 自棄になって事故を起こしたエリックを元気づけようとサッカー仲間でもある職場の友人たちは努力するが効果はない。 が、ある日突然、マンチェスター・ユナイテッドの伝説の選手エリック・カントナがエリックの前に現れてアドバイスをくれるのだった。

  エリックを探して2.jpg 多分事故の後遺症とマリファナのせい。
 エリックのダメダメ加減、半端じゃないです。 リアル悲惨というよりも、笑ってしまうほどの情けなさというか。 背中に「悲哀」という文字が書いてあるかのようで、でもなんだかにくめない。
 本来、サッカーではなくフットボールなのかもしれないですが・・・字幕監修にサッカー解説者の方の名前があったので「そんなに専門的?」と思ったけどそうでもなかった。 マンチェスター人の生活の中にはサッカーが息づいているということでした、日本でもある年代以上の人々が人生を野球用語で語るのと同じように。
 で、相変わらずサッカーにも疎いあたし、“マンチェスター・ユナイテッド”を“マンU”と略すのか、ということに驚く始末。 エリック・カントナ選手も多分すごい人なんでしょうが知りませんでした。 だからご本人出演なのは本国ではものすごいことなのでしょう。 ぼそぼそ話すフランス語がお洒落〜、と思っていたらフランス人だったんですね・・・しかし、イギリスサッカー界で外国人選手なのにそこまでファンに愛されてるってことは、やはりすごい人なんだろう。

  エリックを探して5.jpg 技とともに、キャラクターもね。
 カントナ選手も独特の雰囲気でいい味出し過ぎなのだが、実はエリックの職場の仲間たちが、楽しすぎる。 落ち込んでいるエリックをとにかく笑わせようと、みんなでいれかわりたちかわり自分のとっておきの小話を披露してみたり。 エリックがパニック障害になったと知るや、常に本から実践を心がけるリーダー格の人物の呼びかけでみんなでセラピーしたり(別に他の人たちはする必要ないのに!、しかも素人同士でやってどうする!)。
 おいおい、こんな楽しい仲間たちがいるなら落ち込んでる場合じゃないだろ!、と当人だったら余計なお世話とわかってはいるものの、そう思ってしまいたくなるような仲間たちの「援護射撃」に、微笑ましさを禁じえないのだ。 話してることは実のないバカ話だったりしますが、それが大事なのよね(そんな彼らのやりとり、かなり笑える)。
 で、ちょっとずつ上向いてきたかに見えたある日、とんでもない出来事が起こってエリックはまたもどん底に。 そこでカントナはささやく。
 「大事なのはシュートよりもパス」・「仲間を信じろ」と。
 こんなにベタでストレートでいいんですか!?、な助言(そして映画のテーマ的にも)ですが、ここからエリックの再生が始まることに。 息子たちの反抗の理由はわかったし、仲間たちの協力を仰ぎ、オペレーション・カントナ、実行!

  エリックを探して6.jpg そんな秘密の話をパブでするなよ・・・と思いつつ、きっとそれもマンチェスターのルール。
 あっさり実行されますが、これが大変ばかばかしくて、でも妙に爽快だったり。
 ダメ押しの「どこへ逃げても無駄だぜ! 何故なら、おれたちは郵便局員だから!」のリーダー格さんの台詞には大爆笑とともにちょっと涙もにじんだ。
 無茶苦茶なのだが、とてもハッピー。

  エリックを探して4.jpg 希望よりももっと強いものが。
 「こんなことはあり得ない、おとぎ話だ」、とまたも言われそうな話ですが、見た側がしあわせな気分になるんだからそれでいいじゃないのさ、という気になるのです。
 ケン・ローチの映画でこんなに笑えてハッピーになれるなんて・・・うれしい驚き。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 01:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする